不動産投資
2021.09.21
滞納時に発生する費用を個別に概算していきます。
まず、前回の復習として、保証会社がサービスする一般的な業務は、以下の7つです。
そして、賃借人の滞納に伴い大家側に発生し得るコストは上記2~7の6つに起因します。
そこで、独身者が入居するワンルームマンションの一室(賃料:50,000円/月)を例として、その入居者である賃借人が行方不明(いわゆる“夜逃げ”)になったと仮定し、これら6つの業務を念頭に、滞納発生から明け渡し強制執行までの期間で時系列にて費用を概算してみます。
裁判前の3ヶ月分滞納として150,000円の損失が大家に発生します。
もし大家さんが家賃債務保証会社と契約していれば、この金額は代位弁済として立て替えてくれます。一方、契約していない場合、大家さんは滞納している賃借人に督促しなければいけません。
ケースにもよりますが、一般的にはその精神的負担は大家さんにとって無視できません。
裁判申立から強制執行まで通常8ヶ月間を要します。
したがって、この8ヶ月間における家賃滞納額である400,000円の損失が新たに発生し、この期間も賃借人に督促する必要があります。なお、近所付き合いが希薄になる昨今、滞納期間における督促を巡る大家さんと賃借人の間でのトラブルが刑事事件へと発展するケースもあります。
こうした事例に関しては、次回実例を紹介します。
法的手続費用として弁護士費用や印紙代等が発生します。この費用の大半は弁護士費用であり、私が大家さんからの話を聞くと、少なくとも500,000円が必要となるそうです。なお、弁護士費用は依頼する弁護士の経験と専門性により変動するそうです。
日頃から不動産ビジネスに精通した能力の高い弁護士と関係性を構築することが不可欠です。
強制執行費用は残置物がどの程度あるかで費用が異なってきますが、ある程度の残置物がある場合、300,000円程度を覚悟しなければいけないそうです。
なお、賃借人が残した貴重な絵画等の美術品や重要なデータが保存されていたPCといった残置物の処分は後日、その帰属を巡りトラブルとなるケースも散見されます。実際、残置物の処理業者に呼ばれて、業者が引き取った絵画を鑑定したところ、これが日本画の画家による秀作であったという話を画廊の主人から聞いたことがあります。
また、外国人入居者が良かれと思い、使っていた家具を次の入居者のために置きっぱなしにするケースも時々あります。これは残置物という観念ではなく、むしろ引っ越しに関する慣習の違いで生じるトラブルです。
これらのコストを合計すると、上記ケースで135万円程度の負担が大家さんに発生することになります。もし家賃債務保証会社とサービス提供の契約を締結していれば、こうした費用の発生を回避することができます。
当然、滞納を発生させる可能性が低い賃借人と契約することが大家ビジネスにとって重要ですが、その審査(申込者の与信)は金融機関等が情報を共有する信用情報機関のデータベースにアクセスしない限り、決して容易な作業ではありません。
したがって、不動産賃貸ビジネスの裾野が拡がり、大家ビジネスに新規参入する層が増える中、経済的リスクを極小化する上で家賃債務保証会社のサービスを利用することは時代的にも理にかなった選択であると言えます。