資産運用
2024.07.19
「年金があるから老後資金には困らない」と考えている方も多くいますが、年金だけを頼りにしていると老後の生活が苦しくなってしまう可能性があります。老後に旅行や趣味を楽しみながら生活をするためには、もらえる年金額を把握して、不足分を補うための行動を起こすことが大切です。そこで本記事では、老後にもらえる年金額や、60代から始められる資産形成方法を紹介します。老後資金の不安を感じている方は、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の目次
老後にもらえる年金の種類は、大きく分けて国からもらえる「公的年金」と、企業や個人が老後の生活に備えて用意している「私的年金」の2種類です。私的年金は勤務先や雇用形態によって金額が大きく異なるので、ここでは国からもらえる公的年金額について解説します。
公的年金には、20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金」と、会社員や公務員が国民年金に上乗せして加入する「厚生年金」があります。
厚生労働省『令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、国民年金の平均受給額は「月額5万6,428円」、厚生年金と合計した平均受給額は「月額14万4,982円」です。
国民年金の受給額は、保険料の納付月数によって異なります。20歳~60歳までの40年間に毎月保険料を納めていた場合、令和5年度の年金受給額は月額6万6,250円です。自身がもらえる国民年金の受給額を確認したい方は、以下の式に保険料の納付月数をあてはめて計算してみましょう。
◆国民年金の受給額(月額)=66,250円×保険料の納付月数÷480ヵ月
厚生年金の受給額は、厚生年金に加入していた時期の収入額と保険料の納付月数によって異なり、以下の計算式で算出できます。
◆厚生年金の受給額=A+B
A:平成15年3月以前
平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月までの加入月数
B:平成15年4月以後
平均標準報酬額×5.481/1000×平成15年4月以降の加入月数
平均標準報酬月額とは、平成15年3月以前の加入期間における標準報酬月額の合計を、平成15年3月以前の加入期間の月数で割った額です。一方、平均標準報酬額は、平成15年4月以降の加入期間における標準報酬月額と標準賞与額の合計を、平成15年4月以降の加入期間の月数で割って算出します。
なお、老後にもらえる年金の見込額は、誕生月に日本年金機構から送付される「ねんきん定期便」で確認できます。
年金は、原則65歳から受給開始となりますが、受給開始時期を60歳から65歳までの間に繰り上げたり、66歳から75歳までの間に繰り下げたりすることができます。
60歳から65歳までの間に受給すると「繰り上げた月数×0.4%」で減額される年金額が算出され、66歳から75歳までの間に受給すると「繰り下げた月数×0.7%」で増額される年金額が算出されます。減額や増額された年金額は、生涯変わりません。
たとえば、60歳から受給を開始した場合は24%減額され、70歳から受給を開始した場合は42%増額されます。
総務省『家計調査報告(家計収支編)2023年(令和5年)平均結果の概要』によると、65歳以上の無職世帯が1ヵ月あたりに必要な生活費は、夫婦のみの場合で「約25万円」、単身世帯の場合で「約15万円」と公表されています。
国民年金と厚生年金を合計した1人あたりの平均受給額は月額約14万円であるため、年金だけでは老後の生活が苦しくなってしまう可能性があります。
また、旅行やレジャー、趣味、友人や孫との交流を楽しみながら暮らしたい場合は、さらに数十万円の費用が必要となるため、早いうちから備えておかなければ老後を楽しむ余裕がなくなってしまうでしょう。
60代からでも資産形成を始めるのに遅くはありません。60代からの資産形成では、大きなリターンを積極的に狙うのではなく、リスクを抑えながら堅実に運用していくことが大切です。
ここからは、60代から始められるおすすめの資産形成方法を紹介します。
投資信託とは、運用の専門家(投信会社)が複数の投資家から資金を集めて、株式や債券などに投資して運用する金融商品です。運用成果は投資額に応じて投資家に分配されます。
投資信託は、複数の投資対象に分散投資する商品が多いため、リスクを軽減できるのが特長です。1万円程度から始められ、専門家が運用を代行してくれるので、投資初心者にも適しています。
ただし、元本が保証されているわけではないので、運用成果によっては損をする可能性がある点には注意しましょう。
不動産クラウドファンディングとは、運営事業者がインターネットを通じて投資家から資金を集め、不動産を購入して運用する不動産投資です。
投資家は、運営事業者から家賃収入や売却益の分配金を受け取れます。不動産の運用業務をクラウドファンディング事業者に任せられるため、手間がかからないのが特長です(⇒詳しくは『【初心者入門】不動産クラウドファンディングの仕組みと始め方を分かりやすく解説』で解説)。
運営事業者が損失を負担してくれる「優先劣後方式」を採用している商品を選べば、利回りが下がったり、元本割れしたりするリスクを軽減できる可能性があります。
債券投資とは、国や地方公共団体、企業などが投資家からお金を借りるときの証書として発行する債券を購入し、定期的に利子を受け取る投資方法です。
債券の満期日を迎えれば「額面金額」を受け取れますが、発行者が倒産などで元本の返済および利払いができなくなる場合もあります。そのため、債券を購入する際は、債券の信用度を表す格付けを確認することが大切です。なお、信用度の高いものほど金利は低くなる傾向があります。
急にお金が必要になったときは、満期まで待たずに途中で売って現金化することもできますが、債券価格が下落していると売却損が出る場合があるので注意しましょう。
退職金定期預金とは、銀行が提供する定期預金のひとつで、一定金額以上の退職金を預けると、通常の定期預金より金利が高くなる預金プランです。
普通預金の年利が0.001%、定期預金の年利が0.002%ほどであるのに対し、退職金定期預金では、1%程度の金利を適用している金融機関もあります。
円定期預金と投資信託やファンドラップを組み合わせたコースもあり、余裕のある資金を投資に回すことも可能です。ただし、退職金定期預金の預入期間は数ヵ月や1年など短いため、継続的に利益を得たい方にはあまり適していません。
国からもらえる年金の一人当たりの平均受給額は、国民年金と厚生年金をあわせて月額約14万円です。65歳以上の単身無職世帯の生活費は、約15万円とされているため、国からの年金だけを頼りにしていると、老後の生活が苦しくなってしまう可能性があります。
ゆとりのある老後の生活を送るためには、60代からでも資産形成に取り組むことが大切です。投資信託や不動産クラウドファンディングなど、さまざまな資産形成方法があるので、特徴を理解したうえで資産運用を始めてみましょう。