クラウドファンディング
2021.09.06
この記事の目次
新型コロナ禍で厳しい経営を迫られている飲食業や宿泊業への救いの手として、クラウドファンディングによる「共助」がスポットを浴びています。
クラウドファンディングとは、Crowd(群衆)とFunding(資金調達)を組み合わせた言葉で、「インターネットを介して不特定多数の出資者から資金を集める仕組みを指します。
不特定多数からの資金調達は、人数が多くなれば多くなるほど管理工数が増えるため、これまでは実現が難しいものでした。それをフィンテック(金融サービスと情報技術を結びつけた革新的な技術)により可能にしたのがクラウドファンディングです。
集めた資金を何に使うかによって、クラウドファンディングは「寄付型」「購入型」「融資型」などいくつかの種類に分かれます。そんなクラウドファンディングの1つ、不動産投資の新たな選択肢として今回紹介する「不動産投資型クラウドファンディング」です。
不動産投資型クラウドファンディング(以下、不動産投資型CF)とはどのような投資なのか概略を説明します。
不動産投資型CFの性質は、おおよそ「不動産へ小口で短期の投資をする」と言い換えることができます。
(実際には不動産を直接所有しないなど細かい点で違いはあります。この後の「不動産投資等との違い」で説明します)
不動産投資型CFは、ファンドを募集する各営業者のWebサイトから直接応募して投資することができます。投資条件は事業者によって異なりますが、おおむね以下の通りです(例外もあります)。
不動産投資型CFでは、不特法事業者がインターネット上で出資者(投資家)から資金を募集し、集まった資金で不動産投資を行います。投資家にとって不動産投資型CFへの投資は、対象となる不動産に対しての「出資」となるため、投資家は不動産の所有権をもちません。この点は、不動産の直接所有や不動産小口投資商品と大きく異なるところです。
投資家が不動産を直接所有しない代わりに、不動産投資型CFでは投資家の出資元本のリスクを低減する仕組みがあります。これについては後で解説します。
不動産投資型CFという投資商品を理解する上で重要な点が、フックツール(主な商材を提案する前に提供される、ハードルの低い商材のこと)としての役割です。
不動産投資型CFを募集する事業者は、ほとんど全てがクラウドファンディング事業の他に本業の不動産事業を営んでいます。そして一部の事業者においては、不動産投資型CFは顧客にアプローチするための道具としても用いられています。
現物の不動産は投資金額が大きく流動性も少ないため、投資のハードルが高いです。そのため小口で比較的短期間の投資となる(=流動性が高い)不動産投資型CFを用いて顧客を集めたい、というのは営業戦略として妥当です。
さらに一般の方に声をかけるよりは、不動産投資型CFに集まった投資家に声をかける方が、成約する可能性として高いのは言うまでもないでしょう。
しかし、フックツールとして利用するからには、不動産投資型CFの案件は成功することが絶対条件です。万が一失敗したら投資家の信頼を失うのはもちろん、本業にも影響が出かねないからです。
したがって、フックツールとして用いられる不動産投資型CFは、比較的安全と考えられるわけです。
不動産投資型CFにおける出資元本のリスクを低減する仕組みについて紹介します。
多くの不動産投資型CF案件では「優先劣後方式」という仕組みが採用されています。これは、投資家と事業者が同じ案件に出資し、物件から生じた利益を優先的に投資家に配当します。また、損失が出た場合は事業社の出資金から優先的に負担する仕組みです。
これにより、当初想定されている利回りを下回る場合や、元本割れを起こしてしまうリスクを軽減することができます。
一方で多くの優先劣後方式においては、不動産投資の配当が予想を上回った場合、その利益は事業者が受け取り投資家には配当されません。
損が出れば真っ先に事業者が損を被る一方で、上振れ利益は事業者が受け取るという、とても分かりやすくフェアな仕組みです。
出資額全体に占める事業者の出資額の割合を「劣後出資比率」と呼びます。
例えば劣後出資比率が10%と仮定すると、不動産の価値が最大10%まで低減しても、投資家の出資元本のリスクを低減する(※)という仕組みになります。
(※)あくまでも概要であり、実際は案件によって異なります
いくつかの不動産投資型CF案件では、先に紹介した優先劣後方式ではなく「セイムボート方式」と呼ばれる仕組みが採用されているものもあります。
「投資家と事業者が同じ船(セイムボート)に乗る」ということから名付けられ、優先劣後方式と違い損失が出た場合は投資家と事業者が同様に負担することになります。
しかし、不動産投資の成績が想定を上回れば、追加の利益は投資家と事業者の双方が受け取ることができます。
優先劣後方式とセイムボート方式、それぞれ一長一短ありますが、実際には優先劣後方式を採用している事業者の割合が多いです。
不動産投資型CFの事業者は不動産事業者であることがほとんどであり、一部の案件では事業者(もしくはその関係会社)によるマスターリース方式が採用されているものがあります。
事業者が対象となる不動産を一括借り上げすることにより、空き室が出ても一定の賃料が払われることになり、テナント誘致リスクが低減します。
結果として、不動産投資型CFの運用期間における賃料収入が安定化することになり、案件そのもののリスク低減につながります(※)。
(※)ただし賃借人の経営リスクや、物件売却時の価格リスクはあります。
一部の不動産投資型CFでは、保証会社による不動産の買取保証が付いているものがあります(あくまでも「買取保証で、元本保証ではない」ため損失補填の禁止にはあたりません)。
保証会社の経営リスクはありますが、保証があることにより安全性が高められているのは確かです。
また同様に、一部の事業者では一度出資した案件の解約が可能な場合もあります。手数料は有料で、場合によっては元本割れする場合もありますが、やむを得ない理由以外でも解約ができるということは、投資への安心感につながります。
不動産投資型CFが、他の投資とどのように違い、どのようなメリットとデメリットがあるかを簡単にまとめます。
不動産投資型CFへの投資と、不動産の直接所有との大きな違いは、投資金額と投資期間にあります。
不動産投資は不動産を直接購入するので、数百~数千万円あるいはそれ以上の資金が必要になるところ、不動産投資型CFの多くは1~10万円から投資が可能です。
期間についても、多くの不動産は10年以上という単位で投資を行うところ、不動産投資型CFは数カ月~数年の投資期間となります。
不動産投資型CFと不動産小口投資との違いは、上で述べた不動産の直接投資との場合と変わりありません。
不動産小口投資は不動産の直接所有に比べ投資額が少なく、投資期間も同等から短い傾向がありますが、不動産投資型CFではさらに投資額が少なく、投資期間も短くなります。
また、不動産の小口投資は不動産の直接所有と同様、不動産の所有権を得るという点が不動産投資型CFとは異なります。
融資型クラウドファンディングと比べると、事業者自身が不動産の所有権をもっているため、より投資対象に対して強いガバナンス(支配権)を持つという違いがあります。
また一部の融資型クラウドファンディングでは、貸付先や担保物件が匿名化されているのに対し、不動産投資型CFでは物件の情報は全て開示されています。
一方、不動産投資型CFでは当然ながら不動産にしか投資できないため、資産クラスが集中しやすいという特徴があります。
近年多くの営業者が参入している不動産投資型CFの特徴を紹介しました。
これまでの不動産小口投資では、出資者の数を多くすると管理コストが嵩むため、どうしても100万円位など、ある程度の金額でしか投資ができないという問題がありました。
インターネットだけでほぼ全ての処理が完結する不動産投資型CFの登場により、出資者の数を増やしても管理コストが増加しにくい仕組みが作られ、小口・短期の不動産投資が個人投資家の手の届くようになったわけです。
不動産投資の新たな選択肢として、不動産投資型CFを検討されてみてはどうでしょうか。