その他
2021.08.12
まず購入時の扱いについてです。ポイントは帳簿上の不動産価格をいくらで計上するかということですが、個人の場合が参考になりますので、こちらの記事をご覧ください。
保有・運用における収入の扱いについて、法人の場合は、貸付期間の経過によって計上するのが原則です。
例えば12月末までに翌年1月分の家賃を支払う契約となっていた場合、12月に入金された家賃は当期の収入に計上せず、来期の収入として計上できます。ちなみに当期に計上することも可能です。
経費の扱いについて、個人でも法人でも、同じ物件であれば不動産にかかる経費は表面的には同じはずです。あくまでも「表面的」ということでご理解頂きたいのですが、その意味で唯一変わるのが「減価償却費」になるかと思います。
減価償却費について、個人の場合は「強制償却」となります。「強制償却」とは文字通り、必ず行わなければならないということですが、そもそもなぜ「強制」とまで頑なな制度になってしまったのでしょうか?
それは、国が個人の経理体制をあまり信用していないことによると思われます。
文字通り「強制償却」の反対は「任意償却」ですが、もし仮に「任意償却」にしてしまうと、減価償却費を償却限度額以内の任意の金額を償却費とすることができてしまうことになります。複式簿記を前提としていない個人の方が任意に行った減価償却費をきちんとご自身で管理しているとは限りません。
結論、管理ができないと所得税等の税額も確定しないので、税務行政が滞ることになってしまいます。そうならないように「強制償却」にすれば、個人の場合原則「定額法」となるので、基本的に毎年同じ減価償却費になり税務行政上管理がしやすいのです。(※購入初年度と売却年度の金額は異なります)
一方法人の場合、減価償却費は「任意償却」となります。極論、償却限度額以内であれば償却費を0円としても構わないわけです。そうすると個人よりも経費の認識について「融通」が利くことになります。
例えば中古物件を借入によって購入した場合、
●「減価償却費(※)>元本返済」利益を少なく、キャッシュフローを多くする
または、「減価償却費(※)<元本返済」利益を多く、キャッシュフローを少なくする
●返済期間と同じ年数の耐用年数を当てはめると法人の所得を均一化できる
●「残債<売却予想価格<簿価」または、「残債>売却予想価格>簿価」
といったことを作りだすことができます。
(※想定する減価償却費や簿価から逆算して耐用年数を算出しています。ただしその耐用年数は法定耐用年数以上の年数であることが前提となります)
このことから、減価償却費の取扱いについて法人の場合は個人と比べて柔軟な扱いとなっていることがお分かりいただけたと思います。
売却時について、個人の場合は所有期間(譲渡する年の1月1日における所有期間が5年超か否か)に応じて税率が変わりました。
しかし、法人の場合はそのような扱いは「現在」行われておりません。あえて「現在」と書いたのは、過去に土地を短期間保有し売却する行為を制限するため、「土地重課制度」という土地の譲渡益について本来の法人税等の他に追加で課税する制度がありましたが現在停止されているからです。
このことから、現在は通常の事業取引と区別することなく、通常の法人税等が課税されることになっています。
消費税について、プライベートでも負担しているイメージはあるかと思いますが、消費税とは「預り金」です。
どういうことかと言うと、お店で110円(うち消費税10円)の商品を購入したとしましょう。お店は55円でその商品をメーカーから仕入れ、50円の儲けと消費税の預かり金5円が手元に残り、消費税分の5円は税務署に納税します。
ここで消費税法の理念について誤解を恐れずに書くと「例外を除いて基本的にすべての取引に課税します」という考え方です。中には消費税がかからない取引も存在します。なので「例外」がいったい何なのか抑える必要があります。
上記を念頭に置きつつ、投資用不動産の収入について考えたいと思います。
投資用不動産の収入に関しては、概ね家賃(居住用・事業用)と駐車場収入がほとんどだと思います。
収入の種類ごとに課税となるか否かの答えになりますが、以下で具体的な数字も交えて計算例をご紹介します。
【不動産収入】
物件 | 課税 | 収益 |
---|---|---|
家賃(居住用) | 非課税売上 | 300万円 |
家賃(事業用) | 課税売上 | 220万円 |
駐車場収入 | 課税売上 | 44万円 |
【不動産経費】
税 | 消費税 | 経費 |
---|---|---|
固定資産税 | 不課税取引 | 30万円 |
損害保険料 | 非課税取引 | 15万円 |
減価償却費 | 不課税取引 | 400万円 |
修繕費 | 課税仕入 | 22万円 |
上記、不動産収入と不動産経費に関して、消費税の課税取引を集めて差し引きをします。
不動産収入は課税売上が【220万+44万=264万円】
経費は課税仕入が22万円なので【(264万円-22万円)×10%÷110%=22万円】の消費税を預かっているという計算式になります。
ちなみに、所得は消費税として納付すべき金額を差し引いたところで確定し、そこに所得税率もしくは法人税率を掛けてそれぞれの税額を算出していきます。
下記、国税庁のHP内に該当する場合は、申告及び納税が免除されております。
参考:国税庁タックスアンサー:No.6501 納税義務の免除
要するに、売上が1,000万円を超えるかどうかが分かれ目です。
不動産収入が1,000万円を超える場合は、納税義務者になってしまう可能性があるので注意してください。特に不動産収入の内訳について、事業用不動産が多い方は要注意です。逆に、居住用不動産を中心に投資されている方については、非課税売上となるのであまり気にしなくてもよいでしょう。
申告・納税する場合の方法としては、原則課税と簡易課税のいずれかになります。
原則課税とは計算例で示したように課税取引をすべて集めて差し引きをします。
一方、簡易課税とは業種ごとに予め決められている「みなし仕入率」を用いて課税仕入を計算することです。
簡易課税は原則課税と異なり、課税仕入について集計する必要がありません。一般的に投資用不動産の保有・運用時点においては、簡易課税を選択した方が消費税として納付する金額は少なくなるものと思われます。不動産収入は簡易課税制度における第6種事業ということになり、みなし仕入率40%として取り扱われるからです(家賃など消費税の対象となる収入の40%以上の修理代が毎年かかるとは考えずらい)。
計算例で当てはめると、実際の課税仕入が修繕費のみの22万円だったとしても、課税売上264万円の40%である105.6万円の課税仕入があったとみなして計算できます。
簡易課税を選択しなければ原則課税の扱いとなりますので、簡易課税で申告を行いたい場合は事前に届出が必要となります。