不動産投資
2021.07.12
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耐用年数を経過したビルは、定期的な修繕や耐震補強を施していれば長く使用できるのですが、メンテナンスが悪く劣化が著しい場合、浸水や耐震性の懸念もありそのままでは使用することが難しくなります。
また、躯体のコンクリートに割れや鉄筋に錆が入ってしまうと強度が低下していきます。躯体に劣化が生じた建物は、維持修繕に費用が掛かるうえ、テナント付けも難しくなります。
何とかテナント付けをしようと安い金額でテナントを埋めてしまうと、建て替えをするときに立ち退き交渉で苦労します。さらに、古いテナントが入った状態のビルは低い賃料から収益還元法で売値が下がってしまいます。
減価償却による効果を得られなくなった上に、老朽化により満足な賃料を得られなかったり、良い値段での売却が見込めなかったりする場合は、建物を解体し再建築をするか、更地にした状態で売却をすることを検討すべきでしょう。
建物の解体業者の選定は重要です。解体をするときに地表面から何メートルまでの杭を撤去するか、地下1階部分の基礎コンクリートは全て撤去するなど、明確に範囲を決めて契約をしておくことが重要です。
解体業者によっては、想定以上の地中障害物が出てきた場合に、一定の範囲で撤去を終了し土を埋め戻してしまう場合があります。そのような状態ですと、次に計画している建物の杭打ちや基礎工事ができず、工期の遅延による損害が生じてしまい、最悪の場合、損害賠償訴訟になってしまいます。解体範囲を明確にしてもらい、施工の確認をすることが重要です。
また、地中の解体工事は事前に正確な量がわからないため、当初の見積金額に追加で増えることがあります。そうした変更の際も考慮して、金額基準を明記するように解体業者に依頼しておきましょう。
入居テナントが全て退出してからも、「建物を解体→建築プランの提案→決定→基礎設計→詳細設計」と建物を建築するまでには時間がかかります。比較的小さいテナントビルであっても1年以上、大規模なテナントビルであれば3年以上要することがあります。しかし、その期間中も固定資産税がかかるので、経費を無駄にしないためにも土地の有効利用が望まれます。
効果的な方法の一つが時間貸しのコインパーキングです。個人や企業に土地を貸すと、賃貸借契約が発生してしまい建築時に退去してもらうことが困難になります。また、短い定期賃貸借契約だと満足できる条件では借りてもらえません。
しかしコインパーキングであれば、短い解約期間で確実に解約することができますし、都心であれば高い賃料も魅力です。
新しいテナントビルを建設するときに何を重視するかは施主それぞれのコンセプトによって変わります。ただし、お金を生み出す対象の資産としては、重視すべきことが2つあります。
1つは高い賃料がとれる場所の専有面積をふやすこと。もう1つはメンテナンスがしやすい構造にすることです。
一般的に商業用の建物は1Fが最も賃料が高くなります。銀座や表参道などの好立地では、2F賃料の2倍以上になることもあります。しかし、1Fはエントランスがあり、共用スペースが多くなりやすいうえに、デザインにこだわると大きなピロティや吹き抜けを作ることが多くなります。そうしたデザインは素敵ですが、収益という面では大きくマイナスとなってしまい、将来の売却金額にも影響を及ぼしてしまいます。
設計会社は建物のデザインをするだけでなく、施主のイメージを具現化できることが大切です。有名な建築家に依頼すると、その建築家の芸術の一つとなってしまい、施主の要望通りにならないことがあります。
あくまでも自らの要望に合った設計会社を選ぶようにしましょう。また、設計会社は建設会社の見積内容の精査や、施主と建設会社の間にたって調整する役割も担っているため、設計会社の担当者が施主側に立って交渉内容を議事録に残し丁寧に説明してくれるかどうかで選ぶことが大事です。
施主と建設会社現場監督、設計会社監理技術者の3者が密に連絡を取れることが建築プロジェクト成功の肝となります。施主からのプラン変更、設計会社からの施工費を抑えるための代替プラン、建設会社からの品質確認など細かな変更は施工中に随時発生します。そのためにも、3者が顔を合わせる定例会を行い良好な関係を築けることがポイントです。
テナントビル竣工後、テナント募集及びビルの運営に関しては施主の意向をきっちりと組めるプロパティマネジメント会社と組むことが大切です。
ポイントは、プロパティマネジメント会社がテナント募集に際して多くの仲介会社に声がけができる体制をもっていることです。自社で仲介をすることにこだわりすぎるプロパティマネジメント会社は避けたほうが良いでしょう。
ビルメンテナンス会社に関しては、定期清掃や日常清掃を得意とする会社がおすすめです。設備や消防の定期メンテナンスはもちろん大事ですが、建物をキレイに保とうという意識の強い会社は信頼できることが多いでしょう。
「解体~設計~その間の土地の有効利用~建築~テナントビル運営」まで、何が投資家にとっての利益なのかを常に考えることが重要です。
不動産は活用次第では大きな利益を産みますが、手をかけないと不良資産になってしまいます。不動産の一貫した有効活用を理解しているプロに相談することも大切なことです。