記事

その他

2021.07.07

ビットコインに「適正な価格」はあるのか?

ビットコインに「適正な価格」はあるのか?

急騰と急落の背景

ビットコインは2021年4月中旬に6万2,700ドルを超え 、最高値を付けた後に大きく下落しました。上昇した原因は、新型コロナウイルスによる各国の財政出動によるマネーが投資に流入し、値上がりが値上がりを生む状況になったからです。
その後の下落については、テスラ社のイーロン・マスク氏による「ビットコインは環境に悪影響」といった一連の発言や、中国が暗号資産の規制を強化したことが背景にあります。

暗号資産とは

まずは、ビットコインなどの暗号資産の大枠を理解してみましょう。
暗号資産を誰にでも分かるように表現するなら、いったい何にあたるのでしょうか?

暗号資産を一言で説明すると?

ビットコインなどの暗号資産を一言で説明すると「ネット上に存在する独自ポイント」です。

今の世の中には、たくさんのポイントサービスがあります。
アンケートへの回答やサービスの利用、ネットや店舗で買い物、クレジットカードを利用することなどで様々なポイントがもらえます。これらのポイントは、相互あるいは通貨との交換ができるものもあり、その交換レートは固定されている場合が多いです。

それに対して暗号資産は、独自ポイントであることに代わりありませんが、2つの特徴を持ちます。
1つはブロックチェーン技術により、所有者や所有量の改ざんや書き換えが極めて困難なこと。
そしてもう1つは、法定通貨や他のポイントとの交換レートは日々変わるということです。

暗号資産が変えたお金のあり方

ビットコインなどの暗号資産が基盤にしているインフラは、ブロックチェーン技術により国家や中央銀行が管理することなく統治されています。
円や米ドルなどの法定通貨は国が発行し管理しているものであるのに対し、暗号資産は国が介入しなくても存在できる上に、ハッキングで不正な操作が行われても情報の改ざんが極めて難しいという特徴を持ちます。

このように国などの管理から自由にしたものが暗号資産の存在であり、お金のあり方を大きく変えるものになりました。それにより、国境に関係無くお金を移動することができるので、合法違法を問わず価値をやりとりすることが可能になりました。

肯定派、否定派、様々な動き

国の管理や監視を受けない暗号資産は、利用者にとって便利であると同時に、統制したい国家にとっては目の上のたんこぶでもあります。そのため、お金のあり方を大きく変えた暗号資産には、肯定派、否定派の両面で様々な意見や動きがあります。

肯定派の動きとしては、米国のいくつかの企業がビットコインなどの暗号資産を資産の一部として保有していること。一方で否定派の動きは、中国の規制やトルコの規制方針、インドの暗号資産取引を禁止する法律の提案などがあります。

デジタルゴールドとしてのビットコイン

ビットコインなど暗号資産は、現物の金と対比して「デジタルゴールド」と呼ばれることがあります。
双方にはどのような類似点や相違点があるのでしょうか。

金とビットコインの類似性

金とビットコインの類似性は、大きく分けて3つあります。

1つめは希少性です。金は埋蔵量が決まっていると言われており、ビットコインにも発行上限量があります(アルトコインの中には、発行上限量がないものもあります)。また、金を採掘することも、ビットコインを採掘することも「マイニング」と呼ばれています。

2つめは偽造困難性です。金もビットコインも偽物を作るということは非常に困難です。

3つめは保管や移動が容易(可能)であること。金はほとんどの薬剤に耐え保管が容易であり、少し重いですが移動は可能です。ビットコインは保管も移動も容易にできます。

金とビットコインの相違点

一方で、相違点もあります。
1つめは、金の市場規模はおおよそ5兆ドルと言われているのに対し、暗号資産の市場規模(時価総額)はその1/5程度です。しかし、市場規模については、ビットコインなどの暗号資産の値動きの大きさを考えれば、いずれ追い越す可能性がないとは言えません。

もう1つの相違点は、資金流入による価格上昇への影響の程度です。
バンク・オブ・アメリカによれば、ビットコインの価格を1%上げるための資金流入は1億ドル程度であるのに対し、金の価格を1%上げるためには20億ドルが必要です。ビットコインは資金流入/流出に対して敏感な資産であることが分かります。

価値はどうやって決まるのか

暗号資産について、金との類似点・相違点を見たところで、いよいよ本題です。
ビットコインの適正価格や上昇の余地を考えるためには、それ以外のモノ、サービス、株価などの価値がどのようにして決まるかを考える必要があります。

モノやサービスの適正価値

私たちの身の回りにあるモノやサービスの適正価値は、一般的に需要と供給によって決まるとされています。
独占や寡占がない状態においては、モノやサービスの適正価格はおおむね「みんなが妥当だと思える金額に収束していく」と言って差し支えないでしょう。

このような価格決定は、急激には変化しないという前提があります。ある人の収入が2倍になっても、暮らしている家が変わらない以上、突然エアコンや洗濯機などを買い足したりしないという理屈です。
この「需要と供給が急激に変化しない」という点は、以下で紹介する投資商品とは異なります。

株価や通貨の適正価値

モノやサービスとは異なり、株や為替の投資商品の場合、市場に供給されるマネーが増えればそれだけ需要が増えるという特徴があります。

こういった投資商品の場合でも、株価であればPERやPBRといった様々な指標、通貨であれば国力や周囲の国の関係、国の財政出動の方針など、様々な状況や制約の下で流動性を担保されることで、適正な価格に落ち着いていきます。

投資商品の価格が決まるメカニズムは、モノやサービスよりも複雑なことや、同じデータを見ても人によって解釈の幅が広いために、適正価値は大きく動くこともありますが、それでもある程度妥当な価格を決定することができます。

ビットコインの適正価値と上昇余地

モノやサービス、投資商品でも適正価値は決まります。
では、ビットコイン等の暗号資産ではどうでしょうか。

ビットコインの適正価値

ビットコインはネット上に存在している独自ポイントで、何物にも結びつかず、株価で言うようなPERやPBRといった指標もありません。
そのため平たく言えば、「価値が上がる」と思う人が多ければ価値は上がり、「下がる」と思う人が多ければ価値は下がります。

現状は、新型コロナウイルスへの対処として各国の財政緩和により、余ったマネーが流れ込み上昇傾向が高まっているように思われます。

ビットコインの上昇余地

ビットコインには本質的価値がありません。
同様に金にも円にも本質的価値はないのですが、金や円は多くの人が長年にわたり価値があると信じ、また国家は自国通貨に信頼を得られるよう振る舞っている結果として、強固な価値を持つに至っています。

しかし強固な価値を持っているということは、価値が縛られることにも通じます。例えば円やドルのレートが一日で20%も変わるようなことは、そうそう起こりえません。
「そうはならない」と多くの人が信じているし、大きな変動は多くの取引を生むため、異常な値はすぐに是正される傾向にあるからです。

一方でビットコインは歴史が浅く指標もないため、多くの人がビットコインに価値があると信じれば、いくら実態からかけ離れていても値上がりすることはあり得ます。そしてもちろん、その逆もです。

今後の予想

以上が、ビットコインなどの暗号資産の適正価値と上昇余地に関する考察でした。
結論としては「暗号資産の適正価値は【ない】」「暗号資産の上昇余地は【ある】」ということになります。

暗号資産は国家の管理を受けず、これまでのお金のあり方を変えます。
新しいものが世の中に受け入れられるためには、何度も大きなニュースが飛び交い、あるいは不祥事を起こし、楽観と悲観を繰り返しながら広まっていく必要があります。

おそらく暗号資産も、こういった過去の歴史を繰り返すのでしょう。
その中で値動きが大きな状況が続くのか、それとも値動きは落ち着いてくるのか、最後に私の考えを書いてみます。

それは通貨なのか、資産なのか?

「暗号資産」は、2019年の法改正まで「仮想通貨」と呼ばれ、法定通貨に対する言葉として生まれました。
暗号資産はインターネット上でやり取りできる、財産的価値を持つ全てのものを指します。

現在、暗号資産と仮想通貨は同じものを指していますが、今後は価値保存手段としての「資産」と、決済手段としての「通貨」は別々の道を歩むのではないかと思います。おそらくビットコインは、前者の「資産」になるでしょう。
そして「資産」は値動きが大きなまま、ハイリスクハイリターンな投資商品としての立場を築き、「通貨」は決済手段であるがために値動きが小さくなる(あるいは、法定通貨に紐付く)のではないかと思います。

いずれは目の前のスマホから、自分の保有する資産の一部を暗号資産に変え、法定通貨と同じような決済手段として使うことが日常になるのかもしれないですね。

SALLOW
profile

クラウドファンディング(融資型、不動産投資型、株式投資型、ファンド型)への投資経験9年。
運用資産1億円。投資経験は15年以上。

ZUU Online、クラウドポートに寄稿実績があり、マネー現代、SPA!、ハーバービジネスオンラインなどのメディア実績あり。ソーシャルレンディング紹介書籍の出版経験もある。

この記事を書いたスタッフ

OWNERS.COM編集部