不動産投資
2021.07.05
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かつて、鉄筋コンクリート造の建物は40~50年で寿命がくると言われていました。しかし、定期的なメンテナンスや設備の更新を行っていれば、70~100年以上もつという見解もあります。
マンションの寿命を延ばす上で大切な「管理」のポイントについて見ていきましょう。
管理会社がきちんと建物を管理するか否かは、適切な管理費が非常に重要です。必要以上にコストを削減すると、共用部の維持・管理が疎かになり、建物の荒廃が進んでしまいます。
また高すぎても入居者にとって重荷になってしまうため、建物に合った管理費かどうかの見極めが大切です。
加えて、修繕維持費を適切に積み立てることも重要になります。修繕計画を作成し、定期的な修繕を早めに行うことが必要です。
コンクリートの調査及びクラックなどの補修、屋上等の防水シートの交換、結合部のシール打ち替え、配管などの設備の定期的な交換などを一定の周期で行っていきます。これらをきちんと行うことで、建物の寿命は延びます。
1社で所有しているテナントビルなどでは問題になりませんが、分譲マンションなど多くの所有者がいる建物では、所有者で構成される管理組合が機能することが重要です。管理組合は、大規模修繕をはじめとする修繕計画から、軽微な補修までの決定権を有します。
また、想定外の災害への対策や補修なども管理組合で決定します。そのため、管理組合が適切に機能していれば、建物の寿命を延ばし、価値を高めることになるのです。
さらに、管理組合が建物と入居者のために機能していれば、建物が寿命を迎えたときの建て替え決議も住民の賛同を得て決定しやすくなります。これが機能していない管理組合だと、決議条件である区分所有者数の5分の4以上の賛成と議決権の5分の4以上の賛成を得ることが非常に難しくなるでしょう。
適切な管理がマンションの寿命を延ばすことができますが、地震大国日本ならではの大きな問題があります。
それは、建物の耐震性能です。
内閣府によると、1996年から2005年のマグニチュード6.0以上の地震回数は、世界で912回起きており、なんと日本はそのうち20.8%(190回)を占めています。
出典:図1−1−1 世界の災害に比較する日本の災害│内閣府 防災情報のページ
これは、阪神・淡路大震災や東日本大震災が起きていない時期の数値です。日本で大きな地震が起こるたびに、建物に要求される耐震基準が上がってきています。
最も重要な基準が1981年に施行された「新耐震基準」です。それ以前の「旧耐震基準」の建物では、震度5強程度の地震に耐えられることが基準でした。
一方で、新耐震基準の建物には、震度6強~7程度の大きな地震でも崩壊・倒壊しない耐震性が求められます。
2021年時点、住宅用の鉄筋コンクリート造の建物で耐用年数47年を超えているものは全て旧耐震基準で建てられています。しかし旧耐震の建物であったとしても、耐震改修工事をすることで、新耐震と同様の耐震力があることを証明できます。すなわち「耐震基準適合証明書」を取得できるのです。
耐震基準適合証明書があることで、以下の利点を享受できます。
ほかにも、純粋に入居者の安心感を生むという利点があります。
耐震改修工事を行うことは、マンションの価値を上げることにつながるのです。
近年話題となっている住宅ローンの不正融資問題などを受け、今後、旧耐震の建物に対してのローン条件が厳しくなっていく可能性があります。
しかし、耐震基準適合証明書が発行されたマンションであれば、旧耐震のマンションであっても長期のローンを組める可能性が高いでしょう。
耐震改修工事にはいくつか方法があります。マンションの規模や建築状況によって適切な工法が変わってくるため、マンションごとに合った工法を選びましょう。
梁や柱で構成された建物に、筋交いと言われる斜めに支える構造体や柱と梁の結合部を補強する金具を設置することで、耐震性能を強化する工法です。既存の建物には、建物の内側または外側から補強するために、鋼製などの筋交いを設置することで耐震性能が強化できます。
建物の躯体に特殊高減衰ゴム、制震ダンパーなどを仕込み、地震の揺れを吸収する補強工法です。免震補強よりは揺れを感じますが、高い耐震性能があり建物を守ります。
建物の基礎部分に免震装置を仕込み、地震の揺れ自体を建物に伝えないようにする補強工法です。最も地震に効果があると言われています。
長周期振動による共振(遠くの地震であっても反応してかすかに揺れているように感じる現象)が起きやすいことがデメリットです。
建物の寿命を延ばして収益を生むためには、管理会社に放任せず、修繕計画・耐震改修工事・管理について、単独所有なら所有者自身が、区分所有であれば管理組合がしっかりと考えることが重要です。