不動産投資
2021.06.17
この記事の目次
「減価償却」とは、建物や設備に対して一定の期間で価値を減少させていく手続きであり、減価償却によって計上される費用が「減価償却費」と呼ばれます。
なお、土地に対しての減価償却は行われません。
混同されることが多いのが、減価償却とは税務・会計上のルールであって実際の躯体・設備の劣化や減耗とは別物であるということです。
建物は「定額法」という計算方法によって、毎期均等に減価償却費として耐用年数が終了するまで計上されます。
減価償却が終了しても中古で売却すれば、新しい買主は新たに築年数に応じた減価償却期間が設定されます。
次に、新築と中古の耐用年数の違いを解説していきます。
建物の耐用年数は、「鉄筋コンクリート造」「軽量鉄骨造」「重量鉄骨造」「木造」などの主要骨格の構造及びその細目の区分によって変わります。
例えば、鉄筋コンクリート造の住宅用の耐用年数は47年、木造の住宅用は22年です。なお、用途によっても耐用年数が変わります。
中古の建物の場合、耐用年数は以下の計算式によって求められます。
冒頭でお伝えした通り、減価償却は課税が繰り延べされるだけです。減価償却で繰り延べた税金は、売却時にまとめて課税されます。
課税は、以下の計算式で算出できます。
(不動産の売却金額-不動産の購入価格-購入時の諸費用-売却時の諸費用+建物減価償却費-特別控除)
×所得税・住民税の税率
経費になって利益が減ったと思っていた減価償却費は、売却時の利益計算に全て繰り延べされるので、注意してください。
不動産を購入して減価償却費を計上すれば、一時的な節税は可能です。
ただし、売却するという出口戦略まで考えると、減価償却を利用した節税を目的にするのは、給与所得が5,000万円以上あるような資産家や、法人でないと大きな効果は生まれません。
個人・法人それぞれの売却時の税金について考えてみましょう。
不動産は譲渡利益と減価償却費が加算されたものに対して、譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超えるか否かで税金が変わります。
5年以上:譲渡所得×(所得税15%+住民税5%)
5年以下:譲渡所得×(所得税30%+住民税9%)
この譲渡所得での減価償却費にかかる税率に対して、毎期経費にしている不動産所得が赤字であれば給与所得と損益通算できますので、その税差が節税になります。元々の給与所得が高く、かつ毎期の不動産所得が減価償却によって赤字となっている場合にしか適用できません。適用させるにはかなりハードルが高いと言えるでしょう。
法人はいつ不動産を売却しても、一定の法人税がかかります。毎期の経費計上したものが、売却時の譲渡益に加算されることから、純粋な税の繰り延べと言えます。 売却時の特例もありません。そのため、売却した同じ期に不動産を購入して経費を使う、設備投資を行う、赤字の期に売却益を出すなど、工夫することが大切です。つまり、減価償却だけでは節税効果が生まれることはありません。
そもそも、不動産という価格が乱高下しやすい不安定なもので節税効果を狙うのはハイリスクです。
大事なのは「不動産投資を減価償却による節税の目的にしないこと」です。
それが分かれば、減価償却を取り終えたからこの不動産をどうしようという考えではなく、「最も出口戦略に有効な時期かどうか」を基準にして売却するという考えをもつことができます。それこそが、不動産投資の成功の秘訣です。
不動産投資は、大きな相場の流れで安値圏を掴み、また少し高くても好立地を抑えること、そして景気の良い波が来た時に売却するという、基本に忠実であることが大切です。
例えば、渋谷1丁目あたりを例にとると、2008年のリーマン・ショック直前で坪3,000万円だったのが、2013年頃に坪2,200万円ほどになり、2021年では坪4,000万円となったように、相場が大きく変動しています。その流れをつかめなければどれだけ優秀な投資家でも成功しません。
※[参考] 土地代データ「渋谷区の公示時価・基準時価・土地価格相場・坪単価」
ただ、こういった値動きは好立地であるからこそであり、バブル崩壊前は田舎や不便な立地でも値段が上がりましたが、現在は値動きが起こる土地と、全く動かない土地に二極化しています。
利回りや節税だけに焦点を当てることなく、出口戦略まで含めての不動産投資を心がけましょう。
※ここまで説明した計算方法や考え方は一般的なものであり、それぞれの個人や法人によって条件が変わってきます。必ず、税理士または税務署などで確認をしながら行ってください。