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不動産投資

2021.06.07

【連載:不動産投資と税】④不動産売却時の税務処理 ― ポイントを税理士が解説

【連載:不動産投資と税】④不動産売却時の税務処理 ― ポイントを税理士が解説

譲渡価額(収入金額)

譲渡価額は、売買契約書に基づいて受領する金額となります。買手から受領する、未経過期間に対する固定資産税・都市計画税の精算金も含む場合が一般的です。

もちろん家賃の精算も行いますが、引き渡しまでの賃料は不動産所得計算上の収入金額になります(譲渡価額にはなりません)。

取得費

投資用不動産であれば、土地の取得費は購入した時の土地代で算出された金額となります。

建物の取得費は、購入時の価格から売却時までの減価償却費の累計を差し引いた額、すなわち所得税青色申告決算書もしくは収支内訳書(不動産所得用)の実際の未償却残高になります。
資料は、購入した時点での売買契約書などを準備します。

また、概算取得費(譲渡収入金額の5%を取得費にする)という制度がありますが、実際の取得価額が不明の場合に適用できるものです。

この建物の取得費について2種類算出することができます。

  • 売却までの期間の減価償却をしない状態の未償却残高
  • 売却までの期間の減価償却を行った状態の未償却残高

年の途中で売却した場合、減価償却しないことを原則としつつも、減価償却をしても構わないという扱いになっているからです(所得税法基本通達49-54)。
不動産の譲渡に伴う分離課税の税率が高いか、総合課税される税率が高いかの状況により、期中における減価償却を行うかどうか選択することができます。

譲渡費用

投資用不動産を売却する際にかかった費用のことです。
具体的には、土地や建物を売却するために支払った仲介手数料や、譲渡する際に正式な土地の面積を求めるために支払った測量費などです。
維持管理のために支払った費用は、不動産所得の必要経費に計上するので譲渡費用にはなりません。

特別控除

特別控除という制度は、ある条件をクリアしたら「譲渡益相当額から●●万円控除しますよ」という規定方法です。有名なものとして、居住用財産の譲渡があります(特例―措置法第35条)。
投資用不動産については、自分で売りたいと動いて売るのでなく「売ってくれないか」と言われて応じた場合に、もしかしたら何らかの特別控除が使えるかもしれません。

これから投資用不動産を購入する予定の方は、基本的には該当しないでしょう。

税率

まず、課税短期譲渡所得金額になるか、課税長期譲渡所得金額になるかの判定について解説します。

【短期譲渡所得】
譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下の場合
・税率…39.63%
・内訳…所得税30%、復興特別所得税0.63%、住民税9%

【長期譲渡所得】
譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超える場合
・税率…20.315%
・内訳…所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%

※基本的に所有期間によっていずれかを適用します。

所得税法はある条件をクリアしたら「税率は低くなりますよ」という規定方法です。
有名なのは、所有期間10年超の居住用財産の長期譲渡所得(措置法第31条の3)でしょうか。

そもそも、自宅を売るのと違って投資用不動産を売るというのは、経済的に余裕がある人が行う行為という考えに基づく課税なので、軽減税率が適用されるケースは「まれ」だと思います。
先程説明した特別控除と同様に、投資用不動産については、自分で売りたいと動いて売るのでなく、売ってくれないかという風に言われ、それに応じた際に軽減された税率が使えるかもしれません。

ちなみに、譲渡所得金額がプラスの場合に課税されるものなので、計算した結果マイナスとなった場合には課税されず、他の給与所得などと通算(控除)することはできません。
しかし、同年中に他の不動産を譲渡して譲渡益が発生した場合は、その譲渡益との通算は可能です。

ポイントとしては、

  • あくまでも譲渡した年の1月1日における所有期間で5年超かどうかを判定する
  • 譲渡所得が発生した場合、100万円でも1000万円でも所有期間に基づく税率が適用される(給与などの場合は、100万円と1000万円では適用される税率が異なる)

監修:丸山卓
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税理士法人新みらい会計 税理士・FPS
相続専門の税理士としてお客様により幸せな相続をご提供したいと願っております。
現在では、様々な専門家等とネットワークを構築し、相続にまつわるサービスをワンストップでご提供。
また、資産税や税務調査に関する研究会等に所属し、常に最新情報を得ております。

この記事を書いたスタッフ

OWNERS.COM編集部