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2021.05.31
民法改正では、保証人の立場が強く守られるようになりました。
従前の法律では、連帯保証人の責任範囲が広範に及ぶことから社会問題化してきました。
かつては悪質な金融業者が、保証人に根保証による連帯保証契約を結ばせ、知らない間に債務者の借入額が増加し、最終的に保証人が想定しなかった多額の債務を負わされた結果、保証人が自己破産に追い込まれるというトラブルが多発しました。
私も会社を経営していた父親や親族から「絶対に連帯保証人になるな!」と、子供の頃から強く叩きこまれてきたものです。
今回の民法改正ではこうした事態から消費者を保護するために、保証人の立場が強く守られるようになった訳です。
そこで、民法改正が不動産賃貸市場に与えた影響について解説します。
契約の際、保証人が負うべき責任の極度額を定めることが必要になりました。
極度額が定められたことで、賃貸借契約などにおける連帯保証人の債務(入居者の代わりに支払わなければならない額)の、上限が設けられるようになりました。
極度額を定めていない場合、その契約は「無効」となります。
極度額次第では連帯保証人候補の方に不安を与え、保証人を探すのが難しくなり、契約ができないケースが発生します。
敷金の内訳や、原状回復の「範囲」を明確に定めることが必要となりました。
つまり、敷金の返還にも影響する可能性があります。
契約時にあらかじめ約款などに範囲を指定しておけば問題はありません。
しかし、範囲を指定していない場合や範囲規定があいまいな表現の場合、返還時に大家さん(不動産の所有者)が原状回復費を予想以上に負担しなければいけない事態も想定されます。
民法改正では、連帯保証人が負う債務の元本額が死亡時点で確定されるようになりました。
つまり、連帯保証人は「賃借人(=入居者)死亡時点の債務(滞納賃料債務)まで」を保証し、それ以降に賃貸借契約から発生する債務は、保証の範囲外となります。
事業用の不動産賃貸に連帯保証人を立てる場合、事業用として個人が保証人となるときは主たる債務者、つまり賃借人から保証人に対し「財務状況の情報提供」が義務付けられることとなりました。
連帯保証人を引き受ける際十分に検討させる措置ですが、「財務状況の情報提供」が行われても、保証人に会計や簿記の知識がないと保証しているリスク評価を適正に行えません。このため、その専門性の不足から保証人の引き受けを躊躇するケースも発生するでしょう。
結果的に保証人が見当たらないため契約ができず、機会損失の危険性が高くなります。
これらを踏まえ、民法改正の趣旨に沿い、大家さんにとってリスク回避の手段として家賃債務保証会社のサービスに脚光が浴びるようになりました。
当然、不動産管理会社や約款資料の該当しうる部分を注意しながら、契約約款書類の見直しと明確化をはかることも重要ですが、経済的な措置として家賃債務保証会社の起用は有用な方法として注目されるようになりました。