クラウドファンディング
2021.04.15
編集部:
前回、不動産ファンドの概要についてご説明頂きました。
概要についてよく分かりました!
不動産ファンドといっても、さまざまな商品があるようですが、どれを選んだら良いのでしょうか?
くるみ先生:
たしかに不動産ファンドには、さまざまな種類がありますよね。
この連載企画では、不動産ファンドのうち「不動産特定共同事業法(不特法)」の商品に連載していますが、不特法の商品の中でも、さらに複数のタイプがあるんですよ。
商品選びのポイントは各投資家の皆さんの「ニーズに合った商品を選ぶこと」です。
まずは自分の投資・運用目的を明らかにすることが大切です。
編集部:
ニーズというと、やはり利回りの高さでしょうか?
くるみ先生:
実は、運用ニーズは利回りだけではないんです。
不特法商品の運用ニーズは大きく分けると、
①相続対策
②お金を増やす資産形成
2つになります。
編集部:
え!?相続対策として不動産ファンドを購入する人がいるんですか?
くるみ先生:
はい。
不特法に基づく商品の契約形態には、「任意組合」と「匿名組合」の2つが存在します。
(法令上「賃貸型」と呼ばれる類型も存在しますが、ほとんど使われていないので説明を省略します)
その内「任意組合」として作られた商品は、相続対策に効果があると言われています。
今回は「任意組合」について解説していきたいと思います。
編集部:
具体的には、どんな効果があるのでしょうか?
くるみ先生:
任意組合型のファンドでは、投資家が不動産を共同で所有する形になります。
そのため、相続や贈与が生じた時に、ファンドへの投資を「不動産」として評価して、相続税や贈与税を計算することが一般的に行われています。
編集部:
“「不動産」として評価”とはどういう意味でしょうか?
くるみ先生:
まず相続税や贈与税を計算する上で、不動産は「土地」と「建物」の2つに分解されますが、一般的に「土地」は路線価、「建物」は固定資産税評価額で評価を行います。
この路線価や固定資産税評価額は、実際の不動産購入価格や相場価格より低くなるんです。
不動産の評価額が下がれば、そこにかかる相続税や贈与税も下がるので“節税”が可能です。
編集部:
具体的にどれくらい節税することができるのでしょうか?
くるみ先生:
例えば、Aさんが1億円の預金を持っているとします。
Aさんが亡くなって相続が発生した場合、この預金1億円に対して相続税がかかります。相続税率を50%と仮定すると、1億円×50%=5,000万円の相続税が発生します。
しかし、Aさんが1億円分の不動産を所有している場合、路線価や固定資産税評価額に基づく評価のため、2,000万円に対して相続税がかかります。相続税の対象額は2,000万円×50%=1,000万円にまで減額されます。
編集部:
4,000万円も節約になるんですね!
富裕層が不動産を買う理由が良く分かりました。
でも富裕層だったら小口化されたファンドではなく、普通に現物不動産を買えばいいのではないでしょうか?
くるみ先生:
はい。たしかに現物不動産を買うことでも相続税の節税は可能です。
しかし、任意組合型のファンドには「遺産分割」や「生前贈与」に関してメリットがあるといわれており、富裕層から人気を集めています。
編集部:
「遺産分割」や「生前贈与」のメリットとはなんでしょうか?
くるみ先生:
「遺産分割」とは、子供や孫に財産を分割して残してあげることです。
現物不動産で遺産相続を行うと、遺産分割の際にトラブルが発生し、親戚や家族関係が悪化してしまうことがあります。
編集部:
遺産分割でトラブルですか…。ドラマでよくあるシーンですね。
どのようなトラブルが発生してしまうのでしょうか?
くるみ先生:
さまざまなトラブルがありますが、一番よく見られるのは不動産の「共有化」です。
先ほどのAさんに、3人の子供がいたとします。
できるだけ公平に遺産分割をしようとして、1つの不動産を3人の子供全員に相続させると、不動産が3人の「共有」となってしまい、管理や売却が大変になります。
編集部:
なぜ大変になるのでしょうか?
くるみ先生:
共有されている不動産は、共有者全員の同意がなければ売却することができません。
兄弟のうち1人が「不動産を売りたい」と主張しても、残りの2人の同意がなければ、不動産を売ることはできません。
編集部:
兄弟なら仲良く話し合いで解決すればよいのに…。
くるみ先生:
相続が起きる年齢は、子供が40代、50代以上になっていることが多く、それぞれの家庭の事情も異なります。
もしかしたら、別の兄弟は、親から受け継いだ不動産の賃貸収入を老後資金の当てにしているかもしれません。
すると不動産の売却を巡って、兄弟間で争いが起こってしまいます。
編集部:
兄弟といってもそれぞれ事情があるんですね。
任意組合型のファンドを使うと、どう変わるのでしょうか?
くるみ先生:
例えば、Aさんは一口500万円のファンド持分を21口買って、3人の子供に7口(3,500万円)ずつ相続させることができます。
すると、兄弟3人が現物不動産を「共有」で相続した場合と違って、兄弟それぞれの家庭の事情に応じ、ファンド持分を売ったり持ち続けたりすることができます。
編集部:
なるほど。いわゆる“争族”対策ということですね。
2つ目の「生前贈与」のメリットとは何でしょうか?
くるみ先生:
「生前贈与」は、自分が生きているうちに家族・親族に対して、財産を贈与する方法です。
任意組合型のファンドを活用する場合、ファンド持分を毎年少しずつ贈与することができます。
例えば、Aさんが購入した1口500万円の任意組合型のファンドの「不動産」としての評価が1口100万円だったとします。
贈与税は年間110万円まで課税されないので、1年に1口ずつで子供たちに贈与すれば贈与税はかかりません。
7年間にわたって子供3人に、毎年1口ずつ贈与を行うことで、相続税や贈与税の負担なしで、約1億円の生前贈与を行うことができます。
編集部:
預金で1億円持っていたら、相続税が5,000万円くらいかかるところを、生前贈与を使えばゼロになるんですね。
くるみ先生:
相続税・贈与税の計算上、任意組合型のファンドを「不動産」として評価できるのであれば、そのとおりです。
ただし、相続税や贈与税の計算における不動産ファンドの評価は、複雑な解釈を伴う論点です。
投資後にトラブルにならないよう、相続対策として任意組合型のファンドを購入する場合は、税務上の取扱いを税務署や顧問税理士と事前に確認しましょう。
編集部:
なるほど、あくまでも自己責任でということですね。
専門家にしっかり確認するようにします。
でも、正直なところ相続の話は、私はまだピンときません。
どちらかというと、相続対策よりも資産形成に興味がありますね!
くるみ先生:
若年世代では資産形成目的で、不動産ファンドを検討される方が多いと思います。
次回は、資産形成に役立つ、匿名組合型の不動産ファンドについて解説します。