不動産投資
2020.01.30
中古資産の耐用年数の説明の前に、まずは「減価償却」と「法定耐用年数」について説明していきますね。
賃貸物件のオーナーになったとしましょう。
まずは家賃収入を得るために、貸し出すための物件を購入します。
さて、この購入した建物の費用。
物件を購入した費用は、経費として計上することができます。
しかし、購入時一括で経費になるのかといえば、そうではありません。
「減価償却」といわれる方法で計上します。
一般的な建物は何十年と住み続けることができるので、建物の購入費用は住んでいる期間に応じて少しずつ経費化されます。
例えば、1,000万円の建物に10年住む場合、1年に100万円ずつ10年間で経費にするというイメージです。
期間 | 1年目 | 2年目 | 3年目 | ・・・ | 10年目 |
経費 | 100万円 | 100万円 | 100万円 | ・・・ | 100万円 |
残りの経費 | 900万円 | 800万円 | 700万円 | ・・・ | 0円 |
このように一括して払った大金を、その利用の実態に応じて少しずつ経費化することを「減価償却」といい、その経費を「減価償却費」と呼びます。
しかし、ここで一つ疑問が。
どんな建物に何年住むのか、そもそも何年住めるのか、というのはまさに購入者・居住者次第です。
また、子供と一緒に住むのか、修繕に力をいれるのか等々、物件の寿命は変わってきます。
物件購入者が主観的にエイヤ!と耐用年数を決めていては、経費計算の公平性を保てません。
経費の計上する期間はどうやって決めればいいの??
安心してください。
もちろん耐用年数にはちゃんとした規定がありますよ。
税法では、【構造・用途】に対する【耐用年数】を規定しているのです。
法律で定めた耐用年数なので「法定耐用年数」といいます。
例えば新築住宅の建物の場合の法定耐用年数は、
と決まっています。
2,200万円で木造新築物件を購入した場合、年間100万円を22年間にわたって経費計上します。
さて、今までのお話は新築建物についてでした。
では、中古建物はどうでしょう?新築建物と同じなのでしょうか??
当然、築何年かどうかで耐用年数は違ってきますし、前オーナーの使用方法によっても物件の状態は変わってきます。
新オーナーはどうやって耐用年数を決めればいいのでしょうか。
原則的には、残りの耐用年数を用いることになりますが、その見積もりが難しいときは、簡便的な方法で算出できるよう規定されています。
中古資産が法定耐用年数を経過しているかどうかで計算方法が変わりますが、中古資産が法定耐用年数を経過しているケースで簡便法を説明すると、
中古資産の耐用年数=法定耐用年数×20%(端数切捨て)
となります。
先ほどの法定耐用年数と見比べてみてください。
2200万円で築22年経過の木造物件を購入した場合、年間550万円を4年にわたって経費計上します。
新築の場合、年間の減価償却費は100万円でしたね。
耐用年数が短ければ短いほど、早期に経費計上されることになるのです。
耐用年数の違いで長期的に計上される減価償却費の総額は変わりませんので、税率が一定であれば純粋な節税にはなりませんが、早期に減価償却費を計上することで短期的な視点では節税にはなります。
いわゆる「課税の繰り延べ」というやつです。
日本の税制は累進課税制度と言って、高所得者ほど税率が高くなるようになっています。現在の最高税率は55%です。
所得が4000万円を超えると55%(所得税45%+住民税10% 以下、復興特別所得税は本稿では便宜上考慮しないものとします)の税率が掛かります
※ちなみに昭和61年の最高税率は88%でした。隔世の感でしょうか。。。
さて、ここからが重要です。
この累進税率が適用される所得とされない所得があるのです。
なん…ですと?
まず、所得税法では、個人が獲得する所得はその性質から10種類の「〇〇所得」に分類されています。
そして、不動産を貸し付けることによって得られる所得(賃貸収入)である「不動産所得」は、その他の累進課税される所得と合算して累進税率が課されます(「総合課税」といいます)。
不動産所得が赤字の時は、他の所得と相殺OKです。
一方、不動産を売却することで得られる所得「譲渡所得」は、累進課税されず(「分離課税」といいます)、一律39%(所得税30%+住民税9%)となっています。
さらに、この譲渡所得のうち、保有期間が売却する年の1月1日時点で5年を超える不動産を売却して得られる譲渡所得(「長期譲渡所得」といいます)の税率は、一律20%(所得税15%+住民税5%)となっています。
たった1000円の譲渡所得にも税率20%、1億円の譲渡所得にも税率20%なのです。
不動産投資において賃貸中に発生する減価償却費は「不動産所得」上の必要経費に該当します。
累進課税される他の所得から差し引くことで、減価償却費の55%分の税金が安くなります。
一方、5年超保有した物件を売却する時の長期譲渡所得には20%の税金を支払います。
仮に購入時価格から価値が下がらなかったとすると、この35%の税率差分が純粋な節税になるのです。
つまり、この節税スキームが使えるのは、累進税率の高い超高所得者に限られます。
国外不動産の節税スキームの大前提といってもいいのが、不動産の購入価格時から時の経過によって価値が下がらない不動産を運用することです。
いくら①と②を使って節税できたところで、買った不動産価値が売却時に半分になっていたのでは話になりません。
その点、国外不動産でなくても、国内不動産で値下がりしない物件を購入できるのであれば、同様の節税スキームが使えるでしょう。
とはいえ日本の不動産は時の経過とともにどんどん値下がりするのが常識ですよね。そこで登場するのが、海外不動産なのです。
もちろん国によるでしょうし、物件ごとに状況は違うでしょうけども、一般的に海外不動産は、値下がりしづらい傾向にあります。
なぜかと言えば、建物に対する日本と海外(特に欧米諸国)の考え方の違いがあるのかと思います。
日本では、ある意味、超長期の消耗品として建物をとらえているのではないでしょうか。
一戸建て好きの方からよく聞くセリフとして、「土地は残るから」というのもその表れでしょう。
日本が古来より世界でも有数の地震国であることに由来するのかもしれません。
長い過去に遡ぼり日本全土で見れば、幾度となく建物を失う経験を重ね、次第にそういった価値観が形成されたのかもしれません。
また政策的に見れば、建物の総量規制をせず、空き家問題が騒がれても、それでもどんどん新しく戸建て・マンションが建つ、そんな供給過剰状態も建物価値の低下要因かもしれません。
これからさらに人口が減るというのに。
丸山先生コメント
次回は、以上の考え方を踏まえて、数字を使って具体的にどれくらい節税になるのか見ていきましょう。
そして、どのような改正がされたのか解説していきます。