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2021.03.08

【連載:内藤忍の超実践投資相談①】おまかせでプロが運用してくれる「ラップ口座」。利用すべき?

【連載:内藤忍の超実践投資相談①】おまかせでプロが運用してくれる「ラップ口座」。利用すべき?

【ラップ口座とは】
証券会社や信託銀行が投資家から資金を預かり「投資一任契約」を結び、投資判断から実際の売買、資産全体のアドバイスなど、運用から管理までを一任するサービスのこと。

具体的には、こんなサービスを提供しています。

まず、投資家のリスク許容度に基づく資産配分(アセットアロケーション)を提案するため、リスクや投資目的に関する質問を行い、複数のパターンの中からもっとも適切なアセットアロケーションを選択します。
その上で運用を開始し、定期的に資産配分の調整や見直しを行い運用報告をします。

メリット

ラップ口座を使えば、完全におまかせで資産形成を任せられますから、手間はかかりません。
また、専門家がアセットアロケーションや個別銘柄を選ぶので、投資の知識がない人が自分自身で運用することに比べると、洗練された投資手法で運用できる可能性もあります。

対面でアドバイスしてくれるのも、投資初心者や高齢者にとっては安心かもしれません。

デメリット

では、コストという視点で考えてみましょう。

ラップ口座では多くの場合、投資信託を組み入れて運用を行います。
ラップ口座自体の管理コストに加え、それぞれの投資信託にかかる信託報酬もコストとしてプラスされます。

組み入れ商品によってコストは変わりますが、大まかなコストとして、ラップ口座自体のコスト(年間2%前後)に加え、投資信託の信託報酬(年間1%~1.5%)がかかります。
残高や金融機関によって手数料に違いがありますが、トータルだと概ね年間3%以上のコストがかかる可能性があります。

例えば、ラップ口座で1億円の運用を委託すると、年間コストが3%なら年間300万円になります。つまり年間300万円以上の利益が出ないと、運用成績はマイナスということです。


年間6%で運用できても、半分が手数料に消えてしまうというのでは、割に合いません。

自分で低コストの投資信託やETF(上場投資信託)を組み合わせれば、年間コスト0.5%以下でラップ口座と同じような運用成果を得ることは可能です。
そうなると年間2%以上のコスト削減が可能になります。

最近は、ラップ口座と同じように資産配分や商品選択を自動でアドバイスしてくれるロボアドバイザーと呼ばれるサービスも広がっています。
こちらは対面ではなく、パソコンや携帯を使って利用することになりますが、年間の管理コストはアドバイス・フィー(報酬)を入れても1%程度とラップ口座の半分以下になります。

残高1000万円でコストが年間1%節約できれば、10万円のメリットがあります。
これが10年続けば、何と100万円の差になってきます。
運用金額が大きくなり、運用期間が長くなれば、1%のコスト削減が大きな違いになってくるのです。

まとめ

ラップ口座は確かに便利ですが、利便性の裏にあるコストについてもしっかりと理解するようにしましょう。
私は敢えて利用する必要のないサービスだと考えます。

内藤 忍
terahira_profile

株式会社資産デザイン研究所 代表取締役。
1964年生まれ。東京大学経済学部卒、マサチューセッツ工科大学(MIT)経営大学院修士課程卒(MBA)。
金融機関勤務を経て、1999年にマネックス証券株式会社の創業に参加。マネックス・ユニバーシティなどグループ会社の代表取締役を歴任後、株式会社資産デザイン研究所代表取締役就任。
著作は40冊を超え、「初めての人のための資産運用ガイド」はシリーズ30万部のベストセラーに。 早稲田大学、明治大学などで、資産運用に関する講座を開講。
毎週金曜日配信の資産デザイン研究所メールは、配信数49000通を超える人気。
ブログ「SHINOBY’S WORLD」も毎日更新中。

この記事を書いたスタッフ

OWNERS.COM編集部