不動産投資
2021.02.22
まずは、先に覚えていただきたいポイントをご紹介します。
これだけ押さえていれば、これからの説明も理解しやすくなるはずです!
なんだろう?と意味が分からないかもしれませんが、これから解説で肉付けしていきます!
それでは、これらを踏まえて細かくみていきましょう。
所有している土地に建物を建設する場合、建設会社からの資料や契約書により「建物」の金額を認識します。
しかし、建築請負契約書などから「電気設備工事」や「給排水設備」「冷房暖房設備」などが区分され金額が記載されている場合は、それぞれに分けて考えましょう。
細かく分けることにより、建物と設備それぞれの『法定耐用年数』を適用します。
経費化の速度は、それぞれの法定耐用年数によって決まるため、法定耐用年数の設定を間違えてしまうと必要経費の金額も間違えてしまうということになります。
法人の場合は任意償却(減価償却費を経費として処理するかどうかを選択すること)が認められていますが、個人事業の減価償却は強制償却(必ず減価償却をしなければならない)しか選択肢がありません。
そのため、毎年減価償却費を意識していかなくてはなりません。
一度、耐用年数を設定した後、変更は行いません。
それでは、建物と設備を分けた時の法定耐用年数の違いを見ていきましょう。
【例】建築請負契約書で請負金額が5,500万円の場合
内 ・建設工事代 3,500万円
訳 ・電気設備 700万円
・給排水設備 500万円
・冷暖房設備 300万円
・諸経費 500万円
まず、「諸経費 500万円」を属性ごとに按分計算します。
【按分前】 【諸経費】 【按分後】
・建設工事代 3,500万円 350万円(500÷5,000×3,500) 3,850万円
・電気設備 700万円 70万円(500÷5,000×700) 770万円
・給排水設備 500万円 50万円(500÷5,000×500) 550万円
・冷暖房設備 300万円 30万円(500÷5,000×300) 330万円
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合計 5,000万円 500万円 5,500万円
上記の結果、費用それぞれの「属性」と「法定耐用年数」は下記の通りとなります。
【属性】 【法定耐用年数】
・建設工事代 3,850万円 → 「建物」 47年
・電気設備 770万円 → 「建物付属設備」 15年
・給排水設備 550万円 → 「建物付属設備」 15年
・冷暖房設備 330万円 → 「建物付属設備」 15年
上記の場合、建物については47年、建物付属設備は15年かけて必要経費にします。
※耐用年数は建物の構造や設備の内容によって異なります。
詳細は国税庁の(HP【確定申告書等作成コーナー】-耐用年数表 (nta.go.jp))などをご参考ください。
ここでの建物の法定耐用年数は、鉄骨鉄筋造りで、住宅用のものとなります。
このことにより全額を建物として計上する場合との違いは、以下の通りです。
✓ 区分したことにより耐用年数を短く、つまり償却を早くすることができる。
✓ 区分したものが壊れてしまった場合、その時点での未償却残高を必要経費に算入できる。
そして、新規取得分はそこから新たに減価償却できる。
法定耐用年数って何?
「法定耐用年数」とは、国が定めた資産ごとの耐用年数です。
例えば、車の法定耐用年数は一般的に6年とされております。しかし、人によっては3年使う人も10年使う人もいらっしゃると思います。
そこで、3年使うつもりの人は3年で、10年使うつもりの人は10年の耐用年数を当てはめて計算したら不公平ですよね(あくまでも購入した時点では「つもり」でしかありませんし、将来の一定時点で売却を保証するものではない)。
償却できる限度額を定めて、『課税の公平性』を保っているのです。
土地と建物を一緒に購入する場合、土地と建物の金額をそれぞれ分けて考えなくてはなりません。
なぜなら、土地は減るものではなく会計上も減価償却しません。
土地代として計上すべき金額を建物代として計上してしまっては、土地も減価償却されることになってしまいます。
不動産会社との売買契約書の表記はさまざまで、土地と建物の金額が明確に区分されていればいいのですが、中にはやっかいな契約書も存在します。
3つのパターンを例示しますので、これから契約をしようと思う際には参考になるかと思います。
①「売買代金〇〇〇円 うち土地代金〇〇円 建物代金〇〇円」と記載されているもの
この場合は、記載された金額をもって建物の金額及び土地の金額を認識します。簡単ですね。
②「売買代金〇〇〇円(消費税等相当額〇〇円含む)」と記載されていて内訳の記載がないもの
この場合は、消費税の金額から建物の金額を算出します。
土地代に消費税はかからないので、そのことを利用すれば建物代を逆算することができます。
【例】「売買金額5,500万円(消費税等相当額100万円含む)」と記載があった場合(消費税10%の場合) [建物代金]100万円÷10%×1.1倍=1,100万円 [土地代金]5,500万円-1,100万円=4,400万円 |
③「売買代金〇〇〇円」と記載されていて内訳の記載がなく、かつ消費税等相当額の記載がないもの
一番やっかいな契約書です。租税特別措置法第35条の2-9に規定されているのですが、この場合は自分で土地代と建物代に分ける必要があります。
理論的には下記のような方法で分けることが可能です。
今回は、「固定資産税評価額で按分する方法 」を具体的に解説します。
【例】「売買代金2,100万円」とだけ記載があった場合 令和2年度 土地 固定資産税評価額2,000万円、令和2年度 建物 固定資産税評価額1,500万円の場合 [土地の評価額]2,100万円×2,000万円÷(2,000万円+1,500万円)=1,200万円 [建物の評価額]2,100万円×1,500万円÷(2,000万円+1,500万円)=900万円 |
ちなみに、その他の計算方法については、国税庁や一般財団法人日本不動産研究所によって公表されている指数から建物価額を試算したり、土地の価額を合理的に近隣売買事例から推定する方法などです。
不動産価格に比べると小さい金額ではありますが、よく登場する支出についてもみていきましょう。今回は2つの支出を取り上げます。
不動産を購入する際に支払う仲介手数料は、支払ったタイミングでは全額が必要経費になりません。
取得価格に算入します。つまり、建物と土地の取得価格に算入するものに分けます。
その後、建物に算入された仲介手数料については減価償却を通じて必要経費にされます。
土地に算入された仲介手数料については、減価償却(経費化)の対象外です。
ご存じの通り、仲介手数料とは、売主と買主の間に入って権利調整や契約事務などを行ってくれる不動産会社に対して支払う手数料のことです。
直接、不動産を所有している不動産会社から購入しない限り、支払うケースがほとんどです。
つまり、仲介手数料を支払わなければ不動産は購入できなかったため、取得価格に加算すべきなのです。
この仲介手数料は、先ほどご紹介した按分計算により建物と土地の取得代金に振り分けます。
【例】売買金額5,000万円(建物代2000万円、土地代3000万円)、仲介手数料150万円の場合 [建物代に加算する金額]150万円×2,000万円÷5,000万円=60万円 [土地代に加算する金額]150万円×3,000万円÷5,000万円=90万円 よって、下記のようになります。 [建物代]2,060万円 [土地代]3,090万円 建物は2,060万円をベースに減価償却を行います。土地の減価償却は行えません。 |
固定資産税とは、1月1日現在、「土地」「家屋」及び「償却資産」の所有者として、固定資産課税台帳に登録されている方に課税されるものです。
固定資産税と聞くと不動産所得における必要経費とイメージされる方が多いかもしれません。
しかし、慣行として、不動産の引き渡しが行われた日以降の12月末までの固定資産税相当額は新オーナーが負担すべきという考えから、売買に伴って金銭のやり取りが行われます。
売買に伴って発生する固定資産税精算金は仲介手数料と同様に土地あるいは建物の取得価格に加算されます。
この固定資産税精算金は、相手先不動産会社もしくは仲介会社が細かく管理しているケースだと内訳を明示してくれています。
【例】売買金額5,000万円(建物代2000万円、土地代3000万円)、固定資産税が年額12万円の場合 7月1日に売買契約を行い、不動産を引き渡しました。 売買契約前に旧オーナーが固定資産税を全額支払っていました。 この場合、年末まであと6ヶ月ありますので新オーナーは旧オーナーに6万円(12万円×6ヶ月÷12ヵ月) を支払うということになります。 こうすることにより、どちらも所有している期間分の固定資産税を負担したことになります。 固定資産税は6万円となるので減価償却費の算出は下記のようなになります。 [建物代に加算する金額]6万円×2,000万円÷5,000万円=2.4万円 [土地代に加算する金額]6万円×3,000万円÷5,000万円=3.6万円 |
購入時の税務処理によって、購入した不動産に関する売却時までの必要経費が決まります。
購入時の税務処理は、確定申告を行う上でとても重要なことです。
さらに、税務処理を正確に理解することで、税負担の予測をすることも可能になるでしょう。
不動産投資の判断において、近隣の家賃相場や空室率、固定資産税など様々な要素を検討されると思いますが、正確な税負担も織り込むことができれば、より確度の高い投資判断ができるはずです!