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2021.02.18
今回は、ソーシャルレンディングに特定口座は使えるか、また確定申告が不要になる条件や、確定申告のポイントもご紹介します。
この記事の目次
投資信託や株式投資など金融商品取引を行う際は、証券会社で口座を開設する際に一般口座と特定口座を選ぶことができます。
金融商品取引で損益が出た際、一般口座の場合はご自身で所得を計算して確定申告を行い税金を納めます。
一方、特定口座では取引で生じた損益を「特定口座年間取引報告書」として作成・交付してくれるため、確定申告が容易になります。
さらに、特定口座の中でも「源泉徴収あり」の方式を選んだ場合は、証券会社や銀行が投資家の代わりに売買損益や税金の計算を行い、売却代から税金差し引いて税金を納付してくます。
そのため、確定申告が不要になります。
ソーシャルレンディングを行う際にも、投資信託や株式投資と同じく確定申告を行う必要があります。
その際、特定口座の制度を利用して、確定申告を簡易化もしくは不要にすることはできるのでしょうか。
残念ながら、現時点ではソーシャルレンディングに利用できる特定口座は設けられていません。一部の確定申告をしなくて良いケースを除いて、基本的には確定申告をご自身で行う必要があります。
ソーシャルレンディングでは事業者が「支払調書(年間取引報告書)」を作成するため、それを利用して確定申告を行います。
確定申告の方法については、後ほど詳しくご紹介します。
ご自身で確定申告を行うに当たり、ソーシャルレンディングで得た分配金はどういった所得に分類され、またどのように課税されるかといった基礎知識を押さえておきましょう。
国税庁では、所得はそれぞれの性質に合わせて10種類に分類され、収入や必要経費の範囲、所得の計算方法が決まっています。
ソーシャルレンディングの分配金は「雑所得」 に分類されます。
雑所得は他の9種類のいずれにも該当しない所得で、他には年金や暗号資産の利益、ネットオークションでの継続的な販売活動で得た利益などが雑所得に当たります。
所得税の課税方式には、「総合課税」と「分離課税(申告分離課税・源泉分離課税)」があります。ソーシャルレンディングの分配金は総合課税方式で課税されます。
総合課税方式では、年間所得を全て合算し、その額に対して課税します。
累進課税が適用され、所得によって5~45%(7段階)の所得税がかかります。
なお、同じ投資でも株式やFXは申告分離課税方式で課税され、ほかの所得とは独立して、一定の税率(所得税及び復興特別所得税15.315%+住民税5%)がかかります。
また、株の利益や配当金は総合課税と申告分離課税から選択することが可能です。
ソーシャルレンディングの分配金は、源泉徴収された状態(税金が引かれた状態)で入金されています。
割合は所得税20%に復興特別所得税0.42%を加えた20.42%です。
先ほどご紹介した通りソーシャルレンディングの分配金は総合課税方式が適用されるため、総所得額によっては確定申告を行うことで還付金を受け取れる場合があります。
株式や投資信託、先物取引、FXなどは繰越損失に関する取り決めがあるため、所定の条件を満たせば、確定申告を行うことによりその年の損失を翌年から最長3年間の所得に計上することが可能です。
しかし、ソーシャルレンディングには繰越損失に関する取り決めがありません。
現時点では損失が発生しても、当該損失を翌年以降まで繰り越すことはできません。
先ほどご紹介した通り、ソーシャルレンディングは特定口座を利用することができないため、ご自身で確定申告をする必要があります。ソーシャルレンディングにおける確定申告に関して注意すべき点をいくつかご紹介します。
国税庁では確定申告が必要なケースが定められおり、分かりやすく一部抜粋してご紹介すると下記のようなケースがあります。
※年末調整により所得税等が清算されている方は不要です。
・給与の収入金額が2,000万円を超える
・給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、
各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)の合計額が20万円を超える
・給与を2か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、
年末調整をされなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)
との合計額が20万円を超える
・公的年金等に係る雑所得の金額から所得控除を差し引くと、残額がある
・外国企業から受け取った退職金など、源泉徴収されてないものがある
・各種の所得の合計額(譲渡所得や山林所得を含む)から所得控除を差し引き、
その金額(課税される所得金額)に所得税の税率を乗じて計算した所得税額から
配当控除額を差し引いた結果、残額がある
年末調整により所得税等が清算されていない所得金額の合計が20万円を超える場合は基本的に確定申告が必要ということになりますね。
以下の4つのケースでは確定申告は不要です。
1. 給与を1か所から受けていて、給与の収入金額が2,000万円以下、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)の合計額が20万円以下
2. 給与を2か所から受けていて、給与の収入金額が2,000万円以下、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整をされなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)との合計額が20万円以下
3. 公的年金等の収入金額が400万円以下であり、かつ、公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる場合において、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額の合計が20万円以下
4. 給与、公的年金、その他収入の合計額が基礎控除や社会保険料控除(健康保険料や年金保険料の支払い額)などの控除額の合計以下
※これまで基礎控除の金額は本人の所得金額に係わらず一律38万円でしたが、2020年4月以降の基礎控除は納税者本人の所得金額に応じて決められています。
ここで押さえておきたいのは、ソーシャルレンディングの配当金のほかに暗号資産の投資などを行って収入を得ている場合です。
ソーシャルレンディングでの収入が20万円以下でも、所得の総額が20万円を超える場合は確定申告が必要になるので注意しましょう。
また先ほどご紹介した通り、ソーシャルレンディングの分配金からはすでに一定の税金が引かれています。所得によっては払い過ぎている場合がありますので、確定申告(還付申告)を行い、還付金を受け取るようにしましょう。
確定申告をすると、所得税から住民税額も決定され、住民税の手続きも同時に完了します。
しかし、確定申告をしなくてよいケースのいずれかに該当した場合でも、収入の金額にかかわらず別途住民税の申告手続きが必要になります。
確定申告後、条件によっては税金を納付することになります。
その際、住民税の納付方法は2種類から選べます。
1つはご自身で納税する、もう1つは給与からの天引きする方法です。
給与から天引きをすれば納税に行く手間が省けて便利ですが、副業禁止の会社に勤めている場合は注意が必要です。
住民税が高いことに気づかれると、副業を疑われることがあるからです。
投資を副業と定義づけるか否かは意見が分かれるところですが、企業の体質によっては良く思われないこともあります。
副業が禁止されている場合は、確定申告後の住民税の納付はご自身でしたほうが無難でしょう。
最後にご紹介するのは、確定申告を行う際に必要な書類と確定申告の方法です。
税務署で確定申告書を入手して手書きで書くこともできますが、現在ではインターネットで手軽に確定申告書を作成することができます。
今回はそちらの方法をご紹介します。
確定申告書は以下の資料を参照して作成します。
また、参照した資料は確定申告を提出する際に添付が必要となりますので、忘れずに準備しておきましょう。
【1】支払調書(年間取引報告書)
先ほどご紹介した通り、ソーシャルレンディングの分配金は事業者によって源泉徴収されています。
1年分の支払金額と源泉徴収税額をまとめた資料が支払調書です。
支払調書がない場合は、年間取引報告書を利用します。
支払調書(年間取引報告書)はソーシャルレンディングサービスサイトのマイページからダウンロードできます。
【2】給与所得の源泉徴収票
会社員・公務員の場合は、給与所得の源泉徴収票が必要です。
また、個人事業主の場合は、各種収入に対する支払調書や源泉徴収票を準備しておきましょう。
【3】所得控除に関わる資料
年末調整に提出していない所得控除に関わる資料がある場合は、確定申告時に提出することで控除を受けられます。
社会保険料や生命保険料の控除証明書などが該当します。
また、医療費控除を適用する場合は、医療費の明細書や病院などの領収書も必要です。
確定申告書コーナーを利用した確定申告書作成の手順を簡単に紹介します。
国税庁の確定申告書コーナーにアクセスします。
画面に表示される指示に従って必要事項を選択・入力し、申告書を作成します。
作成できたら選択した提出方法で提出を行えば完了です。
不明な点があれば、国税庁の「ご利用ガイド」で確認することができます。
e-Taxなど以下の3通りから提出方法を選択します。
e-Tax(イータックス)とは、国税庁が運営する、国税に関する各種手続きをインターネットから行うことができるサービスです。
所得税や消費税、贈与税、印紙税、酒税などの申告をはじめ、法定調書の申告・申請・納税などの各種手続も行うことができます。
【1】e-Tax(マイナンバーカード方式)
パソコンで入力した確定申告書を、マイナンバーカードを使って送信する方式です。
マイナンバーカードに加え、ICカードリーダライタ(マイナンバーカードの電子証明書を読み取るためのもので、家電量販店などで購入できます。)が必要になります。
マイナンバーカード読み取り対応のスマートフォンも利用可能です。
【2】e-Tax(ID・パスワード方式)
確定申告書を「ID・パスワード方式の届出完了通知」に記載されたe-Tax用のID・パスワードを利用して送信する方法です。
届出完了通知は自宅からマイナンバーカードとICカードリーダライタを使って発行する方法と、税務署に出向いて発行してもらう方法があります。
ただし、この方法では確定申告ソフトで作成した確定申告e-Tax用データを使用することができません。
また、マイナンバーカードとICカードリーダライタが普及するまでの暫定措置であり、いずれ廃止される可能性があります。
毎年確定申告を行うのであれば、マイナンバーカード方式のほうが望ましいでしょう。
【3】印刷して提出
印刷した書類を郵送などで税務署に提出します。
印刷代や郵送代はかかりますが、税務署に出向いたり、ICカードリーダライタを準備したりする手間は省けます。
ソーシャルレンディングにおける特定口座の利用と確定申告の方法をご紹介しました。
ソーシャルレンディングでは特定口座を利用することはできませんが、配当金から税金が引かれた状態で入金されており、条件によっては確定申告が不要な場合もあります。
ソーシャルレンディングを行う際には、配当金にかかる税金の種類や課税方式、確定申告の方法もしっかり確認しましょう。