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2021.02.10

【2021年最新】確定申告で慌てない! 暗号資産(仮想通貨)の税務

【2021年最新】確定申告で慌てない! 暗号資産(仮想通貨)の税務

暗号資産(仮想通貨)再度注目を浴び始めてます。ビットコインの値上がりもすごいことになってますね。

暗号資産(仮想通貨)の取引といえど、利益が出れば当然税金がかかってしまいます。今回は暗号資産(仮想通貨)の取引で不安になりがちな税務について、主に個人所得税に焦点を当てて説明していきます。

暗号資産(仮想通貨)の取引で利益が出たら?

個人が労働の対価として給与を得たり、不動産や有価証券などの投資資産を売買して利益を出したりした場合には、所得税・住民税がかかります。これは、暗号資産(仮想通貨)の取引でも同様で、暗号資産(仮想通貨)の取引で利益が出た場合は利益の金額によって確定申告の義務があります。

個人の所得税に関する税務といえば、源泉徴収と年末調整だけで済ませている方も多くおられると思います。定期預金の利息や投資信託の利益については確定申告をしたことがないのに、暗号資産(仮想通貨)の取引に関わる所得は確定申告の義務があることについて不思議に思う方も多いかもしれません。

そこで、まずは個人の確定申告についてご説明します。

個人の確定申告手続の概要

「確定申告」とは、1年間(毎年1月1日から12月31日まで)の所得とそれにかかる所得税を一定のルールに従って計算し、税務署に申告して納税する一連の手続きをいいます。

原則として、3月15日が所得税の申告期限とされており、申告期限が土日祝日の場合には、休み明けの月曜日が申告期限です。

確定申告しなければならない人とは

  1. 個人の所得がある人すべてが確定申告を行っているのではないということはご自身の経験からもお気づきかと思います。確定申告が必要となる要件はいくつかありますが、特に重要なものは以下の要件です。
  2. 給与の収入金額が2,000万円を超える人
  3. 給与を1か所から受け取っていて、給与所得ならびに退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
  4. 給与を2か所以上から受け取っていて、かつ年末調整をされなかった給与の収入金額と、給与所得ならびに退職所得以外の所得金額との合計額が20万円を超える人
  5. 個人事業主で基礎控除額(38万円)以上の事業所得がある人
  6. 上場株式等に係る譲渡損失と配当所得等との損益通算及び繰越控除の特例を適用する人

ここで、「収入」と「所得」という言葉が出てきましたが、「収入」とは売上や売却価額などの受け取った金額の総額をいい、「所得」とは収入から取得費用や経費などを引いた残額のことをいいます。

暗号資産(仮想通貨)の取引で注目したい点は、2.の要件です。2.の要件は暗号資産(仮想通貨)の取引で20万円を超える利益が出た場合は、申告義務があることを意味しています。

また、暗号資産(仮想通貨)の取引で20万円以上の利益が出なかった場合でも、株取引や為替証拠金取引(FX)などでの損失繰越を適用したい場合や、ほかの事業収入等があるために確定申告の必要がある場合は、暗号資産(仮想通貨)取引で出た利益を所得として計上する必要がある点に注意しましょう。

総合課税と分離課税

個人所得税の確定申告において重要な概念は「総合課税」と「分離課税」です。

個人の所得は給与所得、不動産所得、事業所得などの10種類に分けられます。10種類の所得に分けた後、いくつかの所得グループの所得金額を合わせてして税金を計算する方法を総合課税といいます。合算せずに特殊な税率を掛けて計算しなければならないものを分離課税といいます。

このうち、皆さんになじみのある税金の計算方法は「総合課税」でしょう。総合課税に分類された所得は、累進課税による税率を乗じて所得税が算出されます。最高税率は、住民税と合わせて55%です。

分離課税の代表的なものとしては、株式の譲渡益があります。株式の譲渡益については、総合課税の所得とは分けて申告します。税率は20.315%(復興特別所得税を含む)です。

暗号資産(仮想通貨)の取引における税務のポイント

さて、暗号資産(仮想通貨)の取引において、所得税をどのように申告するかを考えるときのポイントとなるのは、①いつ利益が出たか(所得が認識されたタイミング)、②暗号資産(仮想通貨)の取引はどの所得区分に分類されるのか、という点です。

暗号資産(仮想通貨)の取引における所得の計算方法と認識時期

暗号資産(仮想通貨)は取引所で売買される場合だけでなく、商品を購入するための決済手段として使われたり、マイニング(暗号資産の取引をブロックに記録する工程に参加すること。一定のルールに従って暗号資産が新規発行され、協力者に報酬として支払われる)によって取得したりと、いろいろな場合があるため、「所得として認識される時期」は複雑です。

そのため、各場合に分けて検討する必要があります。例と計算式も合わせてご紹介します。

暗号資産(仮想通貨)を売買した場合

取引所で暗号資産(仮想通貨)を売買した場合、取引所での取得価格を譲渡原価とし、売却価格が譲渡価格となり、その差額が所得金額になります。先ほどご紹介した①の所得の認識は、この「売却時」とされます。

【例】11月1日に1BTC(ビットコイン)を100万円で購入。11月15日に0.5BTCを55万円で売却。

【計算式】55万円-100万円×0.5BTC=5万円

この場合、11月15日に5万円の所得があったと計上することになります。

暗号資産(仮想通貨)によって商品を購入した場合

暗号資産(仮想通貨)で商品を購入した場合、商品の購入金額が譲渡価格にあたります。取得時の交換レートで計算した暗号資産(仮想通貨)の価額が譲渡原価となります。そしてその差額が所得金額になります。

【例】11月15日に30万円の商品を0.4BTCで購入。暗号資産(仮想通貨)購入時の交換レートは50万円/BTC。商品購入時の取引所での交換レートは80万円/BTC。

【計算式】30万円-(50万円×0.4BTC)=10万円

この場合、商品購入時の交換レートが80万円であったとしても、0.4BTCを30万円で譲渡したと認められるのです。したがって、11月15日に10万円の所得があったと計上することになります。

暗号資産(仮想通貨)で別の暗号資産(仮想通貨)を購入した場合

暗号資産(仮想通貨)で別の暗号資産(仮想通貨)を購入した場合、現在の交換レートで換算した「新たに取得した暗号資産(仮想通貨)」の金額を譲渡金額とします。そして「決済手段として使用した暗号資産(仮想通貨)」を取得したときの交換レートで計算した当該暗号資産(仮想通貨)の価額が譲渡原価とされ、その差額が所得金額になります。

【例】11月15日に40XRP(リップル)を2BTCで購入。BTC購入時の交換レートは50万円/BTC。商品購入時の取引所での交換レートは4万円/XRP。

【計算式】40XRP×4万円-(50万円×2BTC)=60万円

この場合、11月15日に60万円の所得があったと計上することになります。この際に、リップルを売却して円に換金しているかどうかに関わらず所得金額として計上しなければならないという点に注意しましょう。

マイニングで暗号資産(仮想通貨)を取得した場合

マイニングで暗号資産(仮想通貨)を取得した場合、取得時点の交換レートで換算した金額を収入金額として計算します。この場合も、マイニングした暗号資産(仮想通貨)を売却して円に換金しているかどうかに関わらず、収入金額として計算されます。

分岐により暗号資産(仮想通貨)を取得した場合

暗号資産(仮想通貨)によっては分岐によって取得する場合があります。この分岐によって暗号資産(仮想通貨)を取得した時点では所得とは認められません。

分岐により暗号資産(仮想通貨)を取得した場合は、分岐時には取引相場が存在しないため、取得時に価値があるとは認められないという解釈になるため、マイニングの場合とは異なります。

この場合は、暗号資産(仮想通貨)の売却時などに所得に算入することになります。

暗号資産(仮想通貨)の取引における必要経費の考え方

マイニングで暗号資産(仮想通貨)を取得する場合は、パソコン、サーバーなどのコンピューター機器、光熱費、人件費などがかかることがあります。これらの必要経費については、マイニング時に計上する収入金額からこれらの必要経費を控除した金額が所得となります。

また、取引所で暗号資産(仮想通貨)を購入する場合には、取引手数料が生じる場合があります。その場合には取引手数料は、所得を計算する際の譲渡原価に加算して考慮します。

暗号資産(仮想通貨)の取引における所得区分と税率

暗号資産(仮想通貨)の取引によって生じた所得は「雑所得」という所得に区分されます。太陽光発電設備から生じた売電収入などと同じ所得区分です。雑所得に区分された所得は総合課税の各所得に合算され、累進課税の税率が適用されることになります。

つまり、給与所得で900万円を超える所得がある場合、所得税の税率は住民税と合わせて43%になりますが、暗号資産(仮想通貨)の雑所得にはそのまま43%の所得税・住民税がかかります。

給与所得などほかの収入がある場合には、思わぬ税額になる可能性がありますので、取引の際には税金のことを念頭に置いて取引をする必要があります。

暗号資産(仮想通貨)の取引における税務の注意点

暗号資産(仮想通貨)の取引における所得の区分が「雑所得」になるということは、ほかの所得の場合に認められるようなルールが認められないことを意味します。

ほかの所得との損益通算ができない

まず、最も注意すべき点は、ほかの所得との損益通算ができないという点です。

事業所得や不動産所得で、減価償却費の計上や業務委託費などの必要経費が収入を上回った場合、その赤字分は給与所得などほかの所得と通算することができ、全体として課税所得は減少します。

しかし、暗号資産(仮想通貨)の取引は雑所得にあたるため、もし暗号資産(仮想通貨)の取引で損失が出た場合でも、ほかの所得と通算することはできません。

損失を翌年以降に繰り越すことができない

もう一つの注意すべき点は、損失を翌年以降に繰り越すことができない点です。

株式やFXなどの金融商品の場合、取引で生じた損失は翌年以降3年間繰り越すことができます。しかし、暗号資産(仮想通貨)の取引にはこのような特例がないため、例えば12月15日に暗号資産(仮想通貨)取引で50万円の損失が発生し、12月30日に80万円の利益が出た場合には、課税所得は30万円ですが、翌年1月3日に80万円の利益を出した場合には、課税所得は80万円になります。

このように、税制面ではほかの事業や金融取引よりも不利な点が多くなっています。

まとめ

暗号資産(仮想通貨)の取引で利益が出た場合には、まずは確定申告の義務が生じるのではないかと疑ってみると安心です。

特に20万円を超える利益が生じているのであれば、多くの場合確定申告をしなければならないと考えたほうが良いでしょう。

その場合には、生じた利益については全額を次の取引につぎ込むのではなく、納税資金を次年度に取っておくことが必要になります。安心して暗号資産(仮想通貨)の取引をするために、税金についても詳細を確認しておきましょう。

この記事を書いたスタッフ

OWNERS.COM編集部