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クラウドファンディング

2020.12.30

不動産投資型クラウドファンディングとJ-REITの違い|流動性の違いに注目

不動産投資型クラウドファンディングとJ-REITの違い|流動性の違いに注目

最近、クラウドファンディングで資金調達をしている事業者が増えてきましたね。お店を開いたり、新商品を開発したりする資金を調達して、ユニークな商品やサービスを提供しているようです。

なかには、クラウドファンディングで調達した資金で不動産運用を行い、収益を配当するようなファンドもあるようです。

不動産投資といえばJ-REITが有名ですよね?銘柄もたくさんあるし、ほかの投資信託と同様にネットで購入できますよね。不動産投資型クラウドファンディングと何が違うのでしょうか?

今回は、不動産投資型クラウドファンディングとJ-REITの違いや投資のメリットについて説明していきましょう。

不動産投資型クラウドファンディングの概要

不動産投資型クラウドファンディングとは、プロジェクト実施者がWebサイト上で投資家を募集し、集まった資金で不動産物件を購入・運用し、賃貸収益および運用終了時の売却収益で配当金の支払いを行う投資商品です。

契約形態と関連する法律

投資家とプロジェクト実施者は匿名組合契約を締結します。匿名組合契約とは、投資家がプロジェクト実施者の営業のために出資を行い、その営業から生じる利益を分配することを約束する契約のことをいいます。

プロジェクト実施者が不動産投資型クラウドファンディングを利用し「不動産の売買・交換・賃貸借」する場合には「不動産共同特定事業」の許可を受ける必要があります。また、「不動産共同特定事業」の許可を受けるには「宅地建物取引業」の許可を得ていなければいけません。

クラウドファンディング業者が運営するプラットフォームでプロジェクトの募集や出資を募ることは勧誘行為に当たります。そのため金融商品取引法に基づく「第二種金融商品取引業の登録」が必要となります。

このようにそれぞれの法律の管轄である国土交通省に登録の届け出を行い、許可を得たプロジェクト実施者とクラウドファンディング業者しか事業を行うことはできません。

J-REIT(ジェイ・リート/不動産投資信託)の概要

REITとは、Real Estate Investment Trust(不動産投資信託)の略で、投資家から資金を集めて不動産を運用して得た家賃収入等を元に投資家に分配する金融商品です。

もともとはアメリカで生まれたもので1990年代に急速に成長しました。日本では、2001年9月に市場が創設され、アメリカと仕組みが異なる点もあるため頭文字にJ(ジャパン)を付けてJ- REIT(ジェイ・リート)と言われています。

投資スキームと関連する法律

投資法人という特別な法人が発行する投資証券を購入することによって投資します。投資家から集めた資金をもとに不動産へ投資・運用を行い、賃貸収益および運用終了時の売却収益を投資家へ分配します。

投資者から資金を集め、特定の資産に対する投資として運用し、その成果を投資者に分配する制度を定める法律として「投資信託及び投資法人に関する法律(投信法)」が定められています。J-REITはこの法律によって不動産を対象に投資運用することが成り立っています。

不動産投資型クラウドファンディングとJ-REITの違い

不動産投資型クラウドファンディングとJ-REITは、不動産を購入・運用して得られた収益が投資家に分配されるということ、また元本の保証がないことは共通しています。しかし、両者の投資商品としての性格は全く異なります。具体的には以下のような違いがあります。

運用規模の違い

不動産投資型クラウドファンディングは、1万円から投資可能である場合が多く、募集金額も数千万円から多くても数億円ほどです。1つの募集で1つの不動産に投資する場合がほとんどです。そのため、不動産の規模としては小型のものが多くなっています。

対して、J-REITも不動産を証券化しており、銘柄によって異なりますが1万円~100万円程度から投資をすることが可能です。対象不動産の価格は少なくとも数億円、大きいファンドだと数千億円を運用しています。運用する不動産は、皆さんが見たことのあるような都心のビルやホテルなどがあります。

投資条件の違い

不動産投資型クラウドファンディングの場合、分配の方法・投資金総額および投資期間は予め決まっており、契約時の重要事項説明書に記載されています。また予想利回りもWeb上で公開されていることが多いです。途中で資金回収したい場合には解約をして回収することになりますが、場合によっては解約手数料が生じることがあります。

一方J-REITの場合、予め配当の方法は決まっていますが、売却したいときにいつでも証券市場で売却できます。投資信託の売却と同様です。また投資口価格が常に変動するために、現在の投資口価格を基に算出された予想利回りも日々変動します。

購入方法の違い

不動産投資型クラウドファンディングの場合、クラウドファンディング業者が運営するプラットフォームを利用して入金・購入します。募集される案件はクラウドファンディング業者独自のものであり、ほかのクラウドファンディング業者の口座から購入することはできません。ほかのクラウドファンディング業者の案件を購入する場合には、その会社に改めて預託金口座の開設及び入金が必要です。

J-REITは、以下の3つの購入方法から自分に合ったものを選ぶことができます。

【1】個別銘柄

証券会社から購入でき、J-REITの個別銘柄を選んで購入する方法です。自分の知っている物件を保有しているJ-REITを選べるなど自由度の高い購入法ですが、それだけに投資の知識も必要となります。

【2】J-REIT ETF

東京証券取引所に上場している金融商品「J-REIT ETF(上場投資信託)」を証券会社から購入する方法です。基本的には複数のJ-REIT銘柄をまとめて間接的に購入する形になり、一口買うだけで分散投資ができます。日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などの指数に連動する運用成果を目指しています。J-REIT全体の値動きに連動しているため、平均の配当利回りを得られます。

【3】投資信託

投資信託運用会社が取り扱っているJ-REITのファンドを購入する方法です。運用会社は投資家が出資した資金を使ってJ-REITの運用を行います。投資のプロに運用を任せられるため、手軽にJ-REIT投資を行うことができます。しかしその分手数料が高く、年1%を超えるファンドもあります。

ETFと同じく全銘柄の平均に連動する「インデックスファンド」と、プロが銘柄選択を行う「アクティブファンド」があり、前者のほうが手数料は比較的安い傾向にあります。

また、【1】個別銘柄【2】ETFは証券会社からしか購入できませんが、投資信託は証券会社に加えて、銀行や信用金庫でも購入可能です。

上場の有無による価格相場の変動

最も大きな違いは、不動産投資型クラウドファンディングは当初の投資価額が変動するとことはありません(もちろん運用成績によっては元本が戻らない場合はあります)が、J-REITの投資口は上場しているため、日々市場で価格が決定されるということです。

日々証券会社のホームページで株価をチェックするように投資口価格をチェックすることができ、リーマンショックなどの大きな出来事があったときには、株式相場と同じように投資口価格も下落します。

不動産投資型クラウドファンディングのメリット

不動産投資型クラウドファンディングでは、クラウドファンディング業者と不動産を実際に運営する業者が協力して一つの商品を作り上げていくことができるため、証券投資にはない投資の楽しみを味わうことができます。

主な投資メリットは次の通りです。

地域の特色のある不動産に投資できる

不動産投資型クラウドファンディングの最も際立った特徴は、案件ごとにストーリー性があることです。

クラウドファンディングは、もともと資金を預けて「新しい試みを行う個人や事業者を応援する」という目的で始まった投資手法です。

そのため、投資対象は一般の不動産のほか、京都の町屋をリノベーションして趣のあるホテルに改装したり、コワーキングプレイスを開業するためのリノベーション費用にするなどバラエティ豊富なものになっています。

小口の出資による分散投資が可能

一口1万円からの出資が可能な案件が多いので、いろいろな案件に分散投資することでリスクを軽減することが可能となります。J-REITの場合も分散投資は可能ですが、平均的な一口の金額は数十万円程度になります。

優先劣後出資の仕組みを採用している

不動産投資型クラウドファンディングの案件の中には、優先劣後出資の方式を採用しているものがあります。

これは、仮に賃料が想定の満額に満たない場合、投資家が配当を優先的に受け取ることによりリスクの低い投資ができるようにしたものです。

また売却時の価格が当初想定に満たない結果、全額償還できない場合には、まず劣後出資のほうから償還額を削ります。したがって、優先出資をする一般投資家はリスクが相対的に低くなるのです。

特典が用意されていることもある

不動産投資型クラウドファンディングの案件は特色があるものが多くなっています。そのため、案件独自の特典が用意されているものもあります。

投資対象が旅館やホテルであれば宿泊券、地方創生に関わるものならばその地方への航空券や旅行券などが付与される場合もあります。いずれも一定以上の出資額を出資した投資家に限定されています。

J-REITのメリット

J-REITの運用資産は、都心の大型ビルや有名ホテル、大型マンションなどしっかりした建物が多いために、風水害、地震などの災害についてはほぼ心配無用の建物が多いです。また構造、耐震、管理、設備の更新などについても、不動産の専門家が厳重にチェックしているために、物件に関する問題は少ないです。そのほか、以下のような投資メリットがあります。

運用資産規模が大きい

1つのファンドの運用規模が数億円~数千億円に上るため、複数の大規模不動産に同時に投資することができます。ある意味では、これによってリスク分散が図られています。

投資口価格の変動が毎日確認できる

投資口価格の変動は、株価を確認するかのように毎日確認できます。

また、東京証券取引所の主要指数として「東証J-REIT指数」も日々公表されていますので、今のREIT相場が高いのか安いのか、あるいは上昇基調にあるのか下落基調にあるのかを判断する目安となります。

投資信託における税制上のメリットが活用できる

投資信託にはNISAや確定拠出年金などいろいろな税制メリットがあります。NISAの枠内では非課税ですし、確定拠出年金ならば所得控除及び運用益の非課税優遇が受けられます。これはJ-REITの場合も同様です。

一方、不動産クラウドファンディングの場合の利益は所得税上「雑所得」となり、20万円以内かつ確定申告義務がなければ申告の必要はありませんが、20万円を超えるか、他の所得について申告義務が生じる場合には確定申告の必要があります。税率は累進課税による税率です。

まとめ

以前は、不動産投資というと一部の富裕層や地主、資産家向けの投資商品でした。しかし、不動産クラウドファンディングやJ-REITの仕組みが整備されたことで誰でも気軽に不動産に投資できる時代になりました。

一口の金額が少額から始められることから、場所的・時間的に分散投資が簡単にできます。不動産クラウドファンディングやJ-REITの仕組みを理解して、投資物件を探してみてはいかがでしょうか。

この記事を書いたスタッフ

OWNERS.COM編集部