その他
2020.09.01
「相続を開始する」ということは大切なご家族を亡くされたタイミングになるので、ご遺族は深い悲しみや喪失感に陥っている状態が多いかと思います。
そのような中、膨大で煩雑な手続きを行わなければなりません。
これは、とても大変な作業であり大きなストレスを感じるかもしれません。
また、本人としても「まだ先のこと」「いつまでも元気でいたいから別れのことは意識したくない」という思いがあり、準備が中々進まない方も多いと思います。
しかし、残された方たちの負担を少しでも軽くできるよう、元気なうちに準備を進めることをおすすめします。
まずは財産を把握するため一覧にしてみましょう。
「預貯金(金融機関名・口座番号)」「生命保険」「保有されている不動産」「ゴルフ会員権」など、ご自身の財産(資産)をメモに残すなど分かりやすい状態にしておくことが望ましいです。
「生命保険」については請求しなければ受け取ることができません。
保険内容が分かっていればご自身の急な入院・手術にもご家族がスムーズに対応することができます。
保険に加入した際に発行される「証券」をご家族の分かる場所に保管しておきましょう。
「不動産」については、相続登記が必要となります。
相続開始後、期限が決まっているわけではありませんが、長期間放置すると必要な書類も増え手続きが煩雑になってしまいます。
また、数世代に渡って放置すると、相続人が増えて不動産の取得者についての話し合いが当事者間でまとまらなくなる可能性もあります。
放置すると煩雑さが増していきますので、お早めに手続きすることをおすすめします。
さまざまな財産についてのポイントを説明していきましたが、相続されるのはプラスとなる財産だけではありません。
借金などの「負債」も相続人が引き継ぐことになります。
しかし、いきなり借金を抱えるのは相続人側はたまったものではありません。
そこで、このようにプラスの財産よりマイナスの財産が多い場合、相続人は相続放棄の手続きをとることが可能です。
ただし、これには「3ヵ月」という申述期限があります。
期限内に申請しなければ原則として財産放棄することができなくなります。
全負債の調査が間に合わない場合は、裁判所に期限の延長を申し立てることができますが、申し立て自体を「3ヵ月」以内に行う必要があるため心理的な負担になります。
よって、負債の内容も資産と同様に分かりやすい状態で残しておくことをおすすめします。
ちなみに「相続放棄」ですが、マイナスの財産に限らずプラスの財産でも相続放棄を行うことができます。
例えば、生前亡くなられた方の面倒はご兄弟がみてくれていたので「遺産はご兄弟に全て渡したい」という時でも相続放棄の手続きが必要です。
そうすることで、遺族間での相続トラブルを事前に避けることができます。
「相続」が発生すると、遺産は相続人全員で共有している状態になります。
もちろん、法律で定められた相続分はありますが「どの財産をどのように分けるか」までは定められていないのです。
そのため、原則として具体的に財産を分割するには遺産分割協議を行います。
「遺産分割協議」は相続人全員が参加し全員が合意しなければなりません。
遺産分割協議が整わずに遺産の承継が滞ってしまうケースがあります。
このような事態を未然に防ぐため、非常に有効な手段として遺言書の作成があります。
遺言書を作成することで「誰がどの財産を承継するか」を予め定めることができるので、相続人間での争いを防止しスムーズな遺産の承継が可能になります。
遺言書については、2020年7月より新たな制度がスタートしました。
詳しくは前回の記事「遺言書制度」に詳細を記載していますので、ぜひご覧ください。
相続は煩雑な部分もありますので、専門家にも相談しながらご準備することをおすすめします。
相続開始後のご家族の心理的・体力的な負担を少しでも軽減できるといいですよね。