不動産投資
2020.05.28
この記事の目次
全米の中でコロナの感染者が一番多いニューヨーク州においては、特に不動産業者への規則がとても厳しくなっています。
元々、「エッセンシャルワーカー(必要不可欠な労働者)」ではないといわれていましたが、ロビー活動(国・政府への働きかけ)によって必要不可欠であるという判断を得ることができました。
しかし、実際にはエッセンシャルとして働くには厳しい規則が強いられています。
例えば、他の州ではマスク着用で他人との距離をあければ、一緒に家の中にはいっての案内は許可されていますが、ニューヨーク州では禁じられています。
物件の案内は、たとえ空き家でもお客さまと一緒に見に行くことは禁止されている訳です。
たとえ少人数・ソーシャルディスタンスを保っていたとしても内覧(内見)は許可されていません。
現地での複数人の内覧は許可されていませんが、不動産仲介業者が現地で家の中をテレビ電話・写真・動画などで買い主に見せることは許可されています。
そこで、新たな方法として「バーチャルショーイング」と呼ばれるZOOMなどのテレビ電話機能を利用して内覧を行う方法を取っています。
尚、買い主がどうしても現地を見たい場合、仲介業者は関わることができません。
その場合は、買い主と売り主の間で直接連絡を取り、内覧して頂きます。
もし内覧によって誰かがコロナに感染・亡くなった場合でも、自分の意思で内覧をした、という趣旨の用紙にサインをして内覧しに行くという事もしています。
買い主は、内覧後に気に入った物件の調査(インスペクション)を行いますが、これにもかなり時間がかかっています。
テナントが入ってる物件では、テナント側が調査を拒否するケースなどもあります。
中にはテナントの家族の一人がコロナに感染し、ドクターに2週間は家で隔離するように言われて調査がキャンセル、2週間後また他のファミリーメンバーがかかってキャンセル、と延々に入れなくなったこともあります。
調査に関して特別な規則はありませんが、特に高齢者のテナントではずっと調査に入れない可能性もあり、物件を換えることも考える買い主もいる状況です。
実際に、私の担当しているお客様もシビレをきらせて、別の物件購入にふみきったこともありました。
調査業者(インスペクター)は最近エッセンシャルワーカーとして認められたので、家の中に入ることができるようになりました。
しかし、ここでも家の中に入る人間は一人だけとされており、買い主や仲介業者と一緒には入ることは許可されていません。
購入手続きに関しても、さまざまな工夫がされています。
今までは、弁護士事務所に関係者が10人ほど集まって契約を行っていたので、数時間で終わっていました。
現在は、集まることができないため、
など、時間はかかりますが弁護士だけで対面でやらないように工夫されています。
尚、仲介業者は原則として参加できません。
売り主と買い主、それぞれの弁護士も在宅で出来ることは済ませ、なるべくオンライン決済を利用し、従来の小切手を書いて渡すという作業も減らしています。
特にニューヨークは、西海岸に比べてなかなかオンライン上での契約ができず、弁護士にも歓迎されていませんでした。
しかし、この状況下でやらざるを得なくなり、最近ではスムーズになってきたので、今後も継続した方が良いという話になっています。
今までのように、エージェント・売り主・買い主などたくさんの人が集まる必要な全くないということが分かりました。
去年あたりから「マイクロアパート」と呼ばれる小さめのワンルームまたはルームシェアで、ジムやパーティールームなどの施設が充実していて、通勤は徒歩10分圏内の市内中心部を好む若いミレニアム世代が増えていました。
大学の寮の延長のような気分で、結婚はしない、車や家も所有しない、そのかわり友達とたのしく毎日をすごす、という生活を好んでいました。
しかし、ここに来てコロナの影響で全く反対の方向に動いています。
孤独を感じる人が多くなったのか、結婚をしたいという人が増えており、子供も増えていくだろうと予測されています。
そのような傾向により「郊外の庭付きの家に家族で住みたい」という若者が増えているようです。
オフィスも社員の通勤頻度が減り、大きな事務所を構える必要性がなくなるでしょう。
今後は、フレキシブルに大きさや時間も変えられる「シェアオフィス」の需要がますます増えるだろうと予測されます。
マンハッタンでは、既に昨年から動きが鈍化している高級物件・新築物件が一番ダメージを受けており、2020年4月の新規物件は80%マイナス(前年比)となっています。
ニューヨーク州知事による行政命令(2020年3月20日発効)で、全ての家主(支払い猶予申請の有無を問わない)に、2020年3月27日から120日間、家賃やその他の費用の滞納を理由にテナントを強制退去させることは禁止されています。
期間経過後も、居住用・商業用問わず退去させるには30日前に通知する必要があります。
また、2020年6月20日までだった期間が8月20日までに延長となりました。
家賃を払うテナントでも遅れているのがほとんどですが延滞料は請求できず、分割払いも了解しなくてはいけないという状況です。
不動産売買においてはコロナの影響で顕著に出ており、成約件数が今年の3月に入ってから下がっていることが下記のグラフから分かります。
これは、先ほどお話しした通り、内覧などが難しく成約がスムーズに進まない、また売り主が物件を一旦市場から降ろして様子を見ているということが影響していると考えられます。
実際に、下記のグラフから市場の新規物件数が大幅に減少していることが下記のグラフからも分かります。
不動産売買の市場とは逆に、現在は郊外の賃貸マーケットが活発です。
家賃相場が最低でも家賃$3,000、上は$10,000近い家賃でも活発に動いています。
活発な理由としては、人口密度の高いニューヨーク市内から郊外へ移動する人が多いためです。
また、売却は内覧などが難しく一旦市場から降ろして様子を見ている売り主が多い中、賃貸は簡単な内覧・ビデオだけでもいいという方も多いので、契約が早くまとまる傾向にあります。
一番被害の多いニューヨーク市内を出て、ロングアイランドやコネチカットへで、まずは賃貸に住んで様子をみたいという方も多いです。
マンハッタンにコンドミニアムを持っている富裕層には、ハンプトンやコネチカット州のグリニッチ、日本人駐在員に昔から人気のあったウエストチェスターなどが人気のあるエリアです。
在宅勤務をしながらZOOM会議で自分の家を披露するのに、郊外の庭付きの大きな家が人気なようですね。
今後、新型コロナが落ち着いても、以前のような高い家賃かつルームシェアで狭い部屋をニューヨーク市内に借りるより、郊外で在宅勤務しながらたまに市内のオフィスへ出かけるというスタイルに変わるだろうと言われています。
ニューヨーク市内の商業物件の売買は、現在ほとんど動かない状態で、もう少し様子を見るという感じではあります。
一方、投資家の中には、こういう時期だからこそ「掘り出し物の物件が見つかるのではないか」と動いてる人もいるようです。
まさにプロ級のプロでないとこの時期には動けないと思いますが、それだけに数字などの情報を徹底的に調べています。
実際に物件を内覧できるようになるまで(夏以降?)の準備段階が今であり、購入資金等の準備ができるようにローン等も調べています。
実際に内覧などができるようになると、一気に動く感じがあります。
郊外戸建てやアパートの購入を考えている小~中規模の投資家は、今でも動いていますが、先行きが不安なだけに予算も低めにして小ぶりな物件に切り替えています。
これらの投資家は、コロナがおさまって安定してきたら買い足すという方針の方が多いです。
借り入れもまずは少額にしておいて、後に所有している物件からキャッシュアウトして購入する計画のようです。
しかし、新型コロナでダメージを受けたニューヨークですが、元々ニューヨークを好んで投資していたお客様は、今でも投資物件をもつならニューヨークと言っています。
「世界のニューヨーク」というイメージ、ブランド価値の高い地域であることは変わらないようです。
「世界の交差点」といわれるタイムズスクエアは今は閑散としており、ブロードウェイのミュージカルも9月まで閉鎖となっています。
しかし、必ず世界からの観光客がまた戻ってくるとほとんどの投資家が思っており、そこにホテルやコンドミニアムのビルをもつことは投資家の夢であることには変わらないようです。
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