不動産投資
2020.05.13
2020年1月に始まった新型コロナウィルスによる世界的経済封鎖。
日本では4月7日に緊急事態宣言は発せられてからすでに1カ月が経ち、更なる延長が決定しました。
ハワイでも3月5日に州知事による非常事態宣言が行われ、飲食店や小売店などの経済活動がストップし、4月にはホテルの閉鎖も始まりました。
現地のエージェントにおいては、オープンハウスも禁止され新規の不動産売買は実質ストップしている状態です。
こんな中、
「日本のハワイ不動産投資家は自分の物件の価格がどうなっていくのでだろう?」
「ストップしているホテルコンドやバケーションレンタルの収入はいつ回復するのだろう?」
と悩んでいる方も多いですが、この状況においては打つ手なしの状態です。
さらに、令和2年3月に成立した税制改正に基づき「海外中古不動産を活用した減価償却節税」が今年いっぱいで封じこめられることが決定しています。
近いうちに「所有し続ける」のか「売却するのか」の判断もしなければならないタイミングが訪れるでしょう。
このコロナ禍と税制改正の中、投資家はただ悩んでいるだけでいいのでしょうか?
この記事では、今、投資家達ができることを今後の資産形成の面から考えていきたいと思います。
以前から、海外不動産に中古耐用年数の簡便法(木造4年、コンドミニアム9年、ホテル7年)を適用させるべきかの議論はありましたが、具体的改正内容については専門家の間でも意見が分かれていました。
ほとんどが耐用年数の改正(短縮耐用年数の廃止)と考え、その適用前までに購入すればセーフという見解であったため、2019年年末ギリギリまで節税目的での投資が行われていました。
しかし、ふたを開けてみると耐用年数の改正ではなくて、海外不動産投資の減価償却により生じた赤字を給与と相殺(通算)できないという規制を設ける内容の改正でした。
そのため、購入時点が税制改正前であっても適用日以降(令和3年1月)は減価償却費の一部が損益通算不適用とされてしまったのです。
※くわしくは「税制改正で変わる!海外中古不動産の節税事情」で解説
減価償却により生じた赤字の損益通算はできなくなるのであれば、償却見送りを考えたいところですが、所得税法では減価償却は強制的に計上しなければならないことになっています。
そのため、通常の譲渡所得の計算においては、譲渡原価(譲渡時に経費として認められる金額)は減価償却が進むにつれ、譲渡益が徐々に発生していくことになります。
譲渡原価 = 取得価額 ― 減価償却費
つまり、損益通算はできないうえに譲渡益がどんどん発生していくというダブルパンチの可能性がありました。
しかし、今回の改正ではこの損益通算できなかった減価償却費は不動産売却時に経費化できる事とされ、なんとか最悪の事態は免れました。
今回の確定申告時に、ハワイ不動産所有者から今後の対応について多数相談を受けました。
最終的な投資家の判断として、
に大別されました。
所有している不動産の種類にもよりますが、今までは木造アパートの場合、節税ニーズのある日本人投資家に売却することができました。
しかし、これからは現地の居住者(そこに住みたい人達)に売却するしか選択肢はなくなり、入居者が退去するタイミングでないと売却できないことになります。
また、売却時には売却益の有無にかかわらず、ハワイで売却額の22.25%の非居住者源泉税が徴収(納付する) されます。
ただし、これについては日本での税金計算上「外国税額控除」の適用を受け、二重課税を回避することになります。
しかし、2020年中に譲渡すると減価償却費を計上している関係で、国外所得が低くなり、按分計算を経て控除される外国税額が少なくなってしまうことがあります。
相談者の中にはハワイで2,000万円源泉徴収されたが日本ではそのうち600万円しか控除できなかったケースもあります。
つまり、日本で計算したキャピタルゲインの他に税額控除されなかったハワイでの税金も課税され、二重課税の対象になったというわけです。
このため、譲渡の時期は慎重に決める必要があります(理論上は年初に譲渡したほうが有利)。
次に資産管理会社の活用ですが、個人所有の不動産を日本の資産管理会社へ移行するには、「売買」による資金決済が必要となるので注意が必要です。
この点は、日本で同族会社のオーナーが自らの会社に不動産を譲渡するケースと同様、適正額での譲渡・代金決済・名義変更登記が必要となってきます。
この際、金利の低い日本の銀行に借り換えをすることやコストパフォーマンスの良い管理会社へ変更するのも考えたいところです。
節税できなくなるのでコストは抑えたいところですね。
日本であれば、司法書士で登記を依頼すれば簡単に名義変更を行ってくれますが、ハワイ不動産しかも日本の銀行へ借り換えるとなると煩雑な手続きが必要となってきます。
同族間売買であるため、不動産エージェントに依頼するというよりも連携の取れた日米の専門家に依頼することとなります。
具体的な手順としては次の流れとなります。
法人所有のメリットは何といっても親族役員などへの所得分散と、譲渡益に対する節税(退職金など)、その法人の株式の生前贈与などあげられます。
しかし、法人への移行時であっても現地で非居住者源泉税の対象とはなるため、上記で述べた通り移転のタイミングには注意したいところです。
金利の低い日本の銀行をお探しの方は、下記サイトでも紹介されています。
ご興味のある方は検討してみるのも良いかもしれません。