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2020.03.26

相続税の申告は大丈夫?税務調査が入る傾向と対策

相続税の申告は大丈夫?税務調査が入る傾向と対策

KSK(国税総合管理)システムとは

国税庁は様々な資料から納税者のデータを収集しています。
例えば、利子・配当の支払調書、借地権に関する届出書類、土地等の譲渡所得等の確定申告書の申告情報などの資料の収集・保管・活用を行っています。
納税者の所得・財産等の税務データを一元管理するシステムとしてKSK(国税総合管理)システムが存在しております。
そして、このシステムを利用した調査選定を行っています。

国税庁「適正・公平な課税の推進」

税務調査のターゲット

実際に国税庁より発表されている相続税の税務調査に関する資料を見てみましょう。
国税庁が皆様の税金を使ってわざわざ公表しているのには、もちろん意味があります。

平成30事務年度における相続税の調査等の状況
平成30年分相続税の申告事績の概要

それらによると、

①海外資産を有していた人

②無申告の人

③富裕層

に主にターゲットを絞っているのが分かります。
特に①②に該当する方は要注意です。
もちろん③富裕層に関する調査も積極的に行っております。

国税庁は公表資料にて①②③に該当する方々に注意喚起を行っていると言えるかもしれません。

さて海外資産や無申告の意味は読んでその字の通りですが、「富裕層」の定義ってなんでしょうか?

野村総合研究所によると、

「富裕層」とは純金融資産1億円以上5億円未満有している

「超富裕層」とは純金融資産5億円以上有している

としております。
そうなると現金化できる資産が1億円以上の人は、該当するということでしょうか!?

野村総合研究所「日本の富裕層は127万世帯、純金融資産総額は299兆円と推計」

税務調査に来るということは?

タックスペイヤー( 納税者 )として考えれば、税務調査を行ったからにはその調査官の人件費相当額以上の追徴税額は確保してもらいたいところです。。
(自分自身が調査対象となるのは嫌なものですが・・・)

「費用対効果」として考えるのは間違っている考え方かもしれませんが、感覚的には調査が行われたからには「是認」(申告された内容に修正申告するべき点がなかった事)では、その調査に携わった方々の人件費が持ち出しになってしまいます。

だったら行政効率の観点では調査に行かない方が良い訳です。
つまり、調査が行われるからには税収につながらなくてはならないと考えるわけです。

平成30事務年度における相続税の実地調査の状況を見てみると、実地調査の件数は12,463件で、このうち申告漏れ等の非違があった件数は10,684件( 非違割合85.7% )です。
そして、平成30事務年度の実地調査1件当たりでは申告漏れの課税価格は2,838万円となっております。

そこからまとめると、日本の税務署は調査対象の絞り込みの精度が高い状況です。

税務調査になったら、ほぼ修正申告・追徴課税(相続人が当初提出した申告内容の誤りを認めて自主的に提出・納税すること)になるということです。

調査対象者は誰?

相続税の調査は、建前としては、申告内容から漏れている財産の有無や申告された財産の価格が適正か否か検討・確認を行うものです。

つまり被相続人(亡くなった人)の財産の蓄積状況を調べます。
当たり前の話ですが、相続税の調査は亡くなった方に質問できません。
そのことから相続人等に対する調査となります。

調査が行われるのはいつ?

次に幸か不幸か別として(「幸」としては本来相続人が知らなかった財産が見つかることぐらいでしょうが・・・)税務調査が行われる時期についてお伝えしましょう。

国税庁は、原則として年間を通して税務調査を行っているとしています。
しかし、人事異動の時期が毎年7月に行われているため、相続税に関しては7月~12月までに重点を置いて調査を行っていると思われます。
(現在の事務年度は令和元年7月~令和2年6月ですから、相続税の調査がこれから行われるのは令和2年7月~12月末が原則です)

いつ申告した分が調査の対象になるのか興味おありの方も多いでしょう。

例えば、これから始まる事務年度(令和2年7月~令和3年6月)に関しては、原則的に平成30年に発生した相続、つまり平成30年1月1日~平成30年12月31日に相続が発生した分に対する調査が中心と思われます。
(※「中心」でありますから、平成29年に発生した相続の分も若干含まれる可能性があるものと思われます)

ここで整理しますと、平成30年に発生した相続で、かつ、令和2年12月までに税務調査が行われなかった場合は、その後概ね税務調査が行われないということになります。

調査の簡単な流れ

  • 税務署から税務調査を行いたい旨、申告書を提出した税理士宛てに電話連絡があります。
    原則的に税務調査の拒否はできません(国税通則法第74条の3)。
  • 通常は2日間調査をしたい旨の事前通知があります(調査官の希望で調査日数が増えることもあります)
    税理士が主導して調査官と相続人の日程の調整を行います。
    一般的に事前通知の日から10日~2週間後ぐらいの日程を調査官から提案されます。通常、調査官2人で、相続人宅で行います。
    ちなみに弊社では傾向と対策を練るために、調査にいらっしゃる調査官の国税局内の職歴(例えばどのような部門にいらっしゃったか等)を調べることとしています。
  • 2日間とも午前10時から始まります。
    途中、正午あたりから昼休憩をはさみます。
    午後1時位から再開して、特別な事情がない限り午後4時~午後5時位には終わります。
  • 相続人から聞いた話や資料などの情報を税務署に持ち帰り、統括官などの上長に相談の上、財産漏れがあった場合、納税者に修正申告の勧奨を行います。
    調査官の指摘が常に正しいとは限りませんので、申告漏れを指摘されたらそれが申告漏れにあたるのか十分に検討する必要があります。

調査官は事前準備を入念にしており、それを2日間の限られた期間で調査を行うので、基本的に調査官の質問にムダはありません。
また、十分な知識がないと太刀打ちできません。

チェックシートの活用

基本的に弊社で相続税申告したケースで税務調査になるのは「まれ」です。

全くないとは言い切れないのですが当初申告(初めて提出する申告)では数年に1回ぐらいの頻度です(「更正の請求」による相続税の還付申告は除く)。

申告業務では事前に問題になりそうなところを明らかにして、どのように処理を行ったのか説明できるよう、補助的に書類を作成していきます。
その中でも国税庁が公表しているチェックシートを利用することはとても有効ですね。

相続税の申告のためのチェックシート (平成31年4月以降相続開始用)

「調査ではここを確認しますよ、皆さん注意して申告して下さいね」という問題点を事前にチェックシートで確認し、申告書と一緒に提出することは、税務署側に対して税務論点が事前に解決してあるとの印象を与えます。

つまり、調査官の調査に係る手間を実質的に省いていることになり、調査になる確率が減るわけです。

結び

税務調査は相続人にとっては負担になるものです。
まず税務調査にならないように、仮に調査になったとしても慌てないような事前の準備が大切です。

今回は総論をお伝えしました。
また機会があれば今度は個別論点を調査官とのやり取り含めて細かくお伝えしたいと思います。

次回もお楽しみに!

監修:丸山卓
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税理士法人新みらい会計 税理士・FPS
相続専門の税理士としてお客様により幸せな相続をご提供したいと願っております。
現在では、様々な専門家等とネットワークを構築し、相続にまつわるサービスをワンストップでご提供。
また、資産税や税務調査に関する研究会等に所属し、常に最新情報を得ております。

この記事を書いたスタッフ

OWNERS.COM編集部