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資産運用

2026.09.07

年金はいくらもらえる?平均受給額と2026年4月の制度改正を年収別に解説

年金はいくらもらえる?平均受給額と2026年4月の制度改正を年収別に解説

2026年度の年金額は、国民年金(老齢基礎年金)の満額が月7万608円、夫婦2人のモデル世帯で月23万7,279円です。国民年金の満額が月7万円台になったのは、制度が始まって以来初めてのことです。

ただし、この金額をそのまま自分に当てはめると受給額を高く見積もることになります。満額は40年間ずっと保険料を納めた人の額であり、モデル世帯の額も「平均的な収入で40年間就業した場合」という特定の条件を置いた試算だからです。実際には、国民年金だけを受け取っている人の平均は月5万8,360円にとどまります。

この記事では、次の3つを順に整理します。

  1. 自分の年金額を調べる3つの方法(平均値ではなく、自分の見込額を出す)
  2. 生活費との差額はいくらか(家計調査のデータから、月々の赤字額と必要な資産額を逆算する)
  3. 差額をどう埋めるか(60代からの選択肢を、利回りではなく資金の拘束期間で比べる)

2026年度の年金はいくらもらえる?

公的年金には、20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金」と、会社員や公務員が国民年金に上乗せして加入する「厚生年金」があります。まず、2026年度に改定された金額と、実際の平均受給額を確認します。

国民年金の満額は月7万608円(初の7万円台)

2026年度の国民年金は、40年間(480ヵ月)すべての保険料を納めた場合、満額で月7万608円です。前年度の月6万9,308円から1,300円、率にして1.9%のプラス改定となりました。プラス改定は2023年度以降4年連続です。

国民年金の受給額は保険料を納めた月数に比例するため、納付期間が40年に届かない場合は、次の式で概算できます。

国民年金の受給額(月額)= 70,608円 × 保険料の納付月数 ÷ 480ヵ月

たとえば納付期間が30年(360ヵ月)なら、月5万2,956円が目安です。

上記は昭和31年4月2日以降に生まれた方の金額です。それ以前に生まれた方は満額が異なります。また、保険料の免除を受けていた期間は納付期間とは別の計算になるため、正確な額は後述の「ねんきん定期便」で確認してください。

厚生年金の平均は月15万289円|男女差は約5万8千円

会社員や公務員として働いた期間がある人は、国民年金に厚生年金が上乗せされます。厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金(国民年金を含む)の平均受給額は月15万289円です。

実際の平均受給額(月額)
区分 全体 男性 女性
厚生年金(国民年金を含む) 15万289円 16万9,967円 11万1,413円
国民年金のみ(老齢給付) 5万8,360円

厚生年金の数値は厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」、国民年金の数値は日本年金機構「主要統計(令和6年度版)」の令和6年度末現在の老齢給付の平均年金月額です。両者は集計の対象が異なる別の統計です。

男女で約5万8千円の差があるのは、厚生年金の額が現役時代の収入と加入期間で決まるためです。女性の就業期間が男性より短い傾向や、収入水準の差がそのまま受給額に反映されます。共働き世帯とそうでない世帯で、世帯の年金額は大きく変わります。

「モデル年金 月23万7,279円」を自分に当てはめてはいけない理由

ニュースなどで見かける「夫婦2人で月23万7,279円」という金額は、厚生労働省が示すモデル世帯の年金額です。厚生労働省の資料では「男性の平均的な収入(平均標準報酬45.5万円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準」と定義されており、平均値でも中央値でもありません。

実際の分布を見ると、厚生年金の受給者のうち月15万円以上を受け取っている人は約半数にとどまります。つまり、モデル年金や平均額を前提に老後の計画を立てると、受給額を高く見積もる可能性があります。

この記事で最も伝えたいこと。老後の資金計画で使うべきなのは、平均値やモデル世帯の金額ではなく、自分の見込額です。次の章で、その調べ方を3つ紹介します。

自分の年金額を調べる3つの方法

正確さの高い順に、①ねんきん定期便、②ねんきんネット、③年収と加入年数からの概算という3つの方法があります。

①ねんきん定期便で確認する(最も正確)

ねんきん定期便は、毎年の誕生月に日本年金機構から送付されるハガキ(または封書)です。実際の加入記録にもとづいて計算されているため、最も信頼できます。

ただし、年齢によって書かれている内容が違う点に注意してください。

年齢 記載されている金額 見るときの注意
50歳未満 これまでの加入実績に応じた年金額 今後の加入分は含まれないため、実際の受給額より少なく見える
50歳以上 65歳から受け取れる年金の見込額 現在の条件で60歳まで働き続けた場合の試算。転職や退職で変わる

50歳未満の方が「思っていたより少ない」と感じるのは、多くの場合この記載内容の違いによるものです。これから加入する期間の分は含まれていません。

②ねんきんネットで試算する(条件を変えて計算できる)

日本年金機構の「ねんきんネット」に登録すると、加入記録をもとに受給額を試算できます。ねんきん定期便との違いは、条件を自分で変えて計算できる点です。

  1. 今の年収のまま何歳まで働くかを変えて試算する
  2. 受給開始を60〜75歳のどこにするかを変えて比較する
  3. 退職後に国民年金へ切り替えた場合の額を確認する

マイナポータルと連携すれば、ねんきんネットのユーザIDを取得しなくても利用できます。ただし基礎年金番号をお持ちでない方などは、利用できない場合があります。

③年収と加入年数から概算する(早見表)

手元に定期便がない場合は、年収と厚生年金の加入年数からおおまかな金額を出せます。厚生年金の受給額は、次の式で計算されます。

厚生年金の受給額(年額)= A + B

A(平成15年3月以前の加入期間)
= 平均標準報酬月額 × 7.125/1000 × 平成15年3月までの加入月数

B(平成15年4月以降の加入期間)
= 平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 平成15年4月以降の加入月数

この式(平成15年4月以降のB部分)を使って計算したのが次の早見表です。上段が厚生年金部分、下段の「合計」が国民年金の満額7万608円を加えた月額です。

年収・加入年数別の年金額の目安(月額)
平均年収 加入20年 加入30年 加入40年
300万円 2万7,400円
合計 9万8,000円
4万1,100円
合計 11万1,700円
5万4,800円
合計 12万5,400円
400万円 3万6,500円
合計 10万7,100円
5万4,800円
合計 12万5,400円
7万3,100円
合計 14万3,700円
500万円 4万5,700円
合計 11万6,300円
6万8,500円
合計 13万9,100円
9万1,400円
合計 16万2,000円
600万円 5万4,800円
合計 12万5,400円
8万2,200円
合計 15万2,800円
10万9,600円
合計 18万200円
700万円 6万3,900円
合計 13万4,600円
9万5,900円
合計 16万6,500円
12万7,900円
合計 19万8,500円

この表の計算条件/①平均標準報酬額を「年収÷12」として概算しています。②平成15年4月以降の加入期間のみを対象とした簡易計算です。③国民年金を40年間満額納付した場合の合計額です。④加給年金、経過的加算、繰上げ・繰下げによる増減は含んでいません。⑤年収800万円以上の方は標準報酬月額の上限(現行65万円)を超えるため、この式では実際より多く算出されます。⑥実際の年金額は、この「本来水準」の計算と「従前額保障」の計算のうち高い方が適用されます。あくまで目安として、正確な額はねんきん定期便で確認してください。

受給開始を早める・遅らせると年金額はどう変わる

年金は原則65歳から受け取りますが、60歳から75歳までの間で開始時期を選べます。早めれば減り、遅らせれば増え、いったん決めた増減率は生涯変わりません

  • 繰上げ受給(60〜64歳):繰り上げた月数 × 0.4% 減額
  • 繰下げ受給(66〜75歳):繰り下げた月数 × 0.7% 増額

国民年金の満額(月7万608円)を受け取る場合の金額は次のようになります。

受給開始 増減率 月額 年額
60歳 −24.0% 5万3,662円 64万3,945円
62歳 −14.4% 6万440円 72万5,285円
65歳(原則) ±0% 7万608円 84万7,296円
68歳 +25.2% 8万8,401円 106万815円
70歳 +42.0% 10万263円 120万3,160円
75歳 +84.0% 12万9,919円 155万9,025円

繰上げの減額率0.4%は昭和37年4月2日以降に生まれた方に適用されます。それ以前に生まれた方は0.5%です。また75歳までの繰下げが選べるのは昭和27年4月2日以降に生まれた方で、それ以前に生まれた方は70歳(最大42%増)までです。また繰下げをすると、受け取り始めるまでの期間は年金収入がありません。増額された年金が繰下げ前の総額に追いつくまでには10年以上かかるため、健康状態や他の収入とあわせて判断する必要があります。

2026年4月からの年金制度改正で変わったこと

2025年に成立した年金制度改正法により、2026年4月から順次、制度が変わっています。60代で働きながら年金を受け取る方に直接関わるものがあります。

働きながら年金を受け取れる上限が月65万円に

厚生年金に加入して働きながら老齢厚生年金を受け取る場合、給与と年金の合計額が一定額を超えると年金の一部または全部が支給停止になります(在職老齢年金)。この基準額が、2026年4月から月51万円から月65万円に引き上げられました。引き上げは2026年4月分の年金から適用され、実際に振り込まれるのは2026年6月15日の支払日からです。

これにより、これまで年金が減っていた人のうち、給与と年金の合計が月65万円以下に収まる人は、支給停止が解消または縮小されます。「働くと年金が減るから就業時間を抑える」という判断の前提が変わった点は押さえておきたいところです。

このあと予定されている改正

  • 標準報酬月額の上限引き上げ(2027年9月から段階的):現行の65万円が、2027年9月に68万円、2028年9月に71万円、2029年9月に75万円と3段階で引き上げられます。高所得の方は保険料が増える一方、将来の受給額も増えます。
  • iDeCoの拡充(2026年12月1日):掛金の上限が引き上げられ(自営業者等は月6.8万円から7.5万円、会社員・公務員等は企業年金等と合計して月6.2万円)、加入できる年齢が70歳未満まで広がります。国民年金第3号被保険者の上限は月2.3万円のまま変わりません。詳しくはiDeCoの仕組みと掛金上限の引き上げで解説しています。

年金だけで生活費は足りる?月々の不足額

ここまでで自分の年金額の目安が出たら、次は生活費との差額を見ます。総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均」による、65歳以上の無職世帯の家計は次のとおりです。

65歳以上の無職世帯の1ヵ月の家計収支(2025年平均)
世帯 実収入 可処分所得 消費支出 毎月の赤字
夫婦のみ無職世帯 25万4,395円 22万1,544円 26万3,979円 −4万2,434円
単身無職世帯 13万1,456円 11万8,465円 14万8,445円 −2万9,980円

ここで注目したいのは、赤字が生まれている理由です。単身無職世帯の実収入は13万1,456円で、消費支出14万8,445円との差は1万7千円ほどしかありません。しかし税金と社会保険料を差し引いた可処分所得は11万8,465円まで下がるため、実際の赤字は月2万9,980円に広がります。

年金額と生活費を単純に比べるだけでは足りません。年金からも所得税・住民税・森林環境税・介護保険料・国民健康保険料(または後期高齢者医療保険料)が差し引かれます。手取りベースで考える必要があります。

不足額から必要な資産額を逆算する

毎月の赤字額が分かれば、必要な資産額は「赤字額 × 12ヵ月 × 年数」で計算できます。65歳から何歳まで生きるかで金額は変わります。

65歳時点で用意しておきたい資産額の目安
世帯 毎月の赤字 90歳まで
(25年)
95歳まで
(30年)
100歳まで
(35年)
夫婦のみ無職世帯 4万2,434円 約1,273万円 約1,528万円 約1,782万円
単身無職世帯 2万9,980円 約899万円 約1,079万円 約1,259万円

この金額には含まれていないものがあります。介護費用、住宅のリフォームや修繕費、車の買い替え、子や孫への支援、まとまった医療費、そして物価上昇による支出の増加は、いずれもこの試算の外にあります。実際にはこの金額に一定の余裕を加えて考える必要があります。

物価が上がると、同じ年金額でも買えるものが減ります。年金にはマクロ経済スライドという調整の仕組みがあり、物価や賃金の上昇率どおりには増えない場合があります。詳しくはインフレが家計と年金の実質価値に与える影響で解説しています。

なお、かつて話題になった「老後2,000万円問題」も、こうした試算のひとつです。前提となる家計の数字が変われば必要額も変わるという点で、金額そのものより計算の考え方を押さえることが大切です(→老後資金2,000万円問題は解決できるのか)。

不足額を埋める4つの方法と60代での選び方

60代の判断軸は「利回り」より「資金の拘束期間」

60代からの資産運用で本当の制約になるのは、利回りよりも必要になったときに現金化できるかです。医療費や住宅の修繕など、想定外の支出が発生しやすい年代だからです。資金が長期間拘束される商品は、利回りが高くても選びにくくなります。

以下では4つの方法を、想定利回り・元本のリスク・資金の拘束期間の3点で比較します。

60代からの資産運用の選択肢(2026年9月時点)
方法 想定利回り
(税引前)
元本のリスク 資金の拘束 最低金額
個人向け国債
(固定5年)
年2.24% 国が元本と利子を支払う。満期まで持てば元本は減らない 発行後1年は換金不可 1万円
定期預金
(1年)
年0.5%
(大手銀行の1年定期)
預金保険により1金融機関・1人あたり元本1,000万円とその利息まで保護 中途解約は可(利率は下がる) 1円〜
投資信託 商品により
変動
元本保証なし。値下がりで損失が出る可能性がある なし(いつでも売却可) 100円〜
(ネット証券の積立)
不動産
クラウドファンディング
ファンドごとに
提示される
元本保証なし。空室や売却価格の下落で分配金の減少・元本割れが起こる可能性がある 運用期間中は原則解約不可 1万円〜

利回りは2026年9月時点の水準です。個人向け国債の利率は毎月の募集ごとに、預金金利は各金融機関の判断で変わります。実際に検討する際は最新の数値を確認してください。

①個人向け国債|金利上昇でもっとも状況が変わった選択肢

個人向け国債は、国が発行する債券を個人が1万円から購入できる商品です。日本銀行の政策金利が1.00%まで引き上げられたことで、2026年9月募集分の利率は変動10年が年1.95%、固定5年が年2.24%、固定3年が年1.96%となっています。2024年頃とは前提がまったく変わりました。

最低保証利率は年0.05%で、金利が下がっても一定の利子は確保されます。中途換金は発行から1年経過後に可能ですが、直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685が差し引かれます。

60代との相性。元本が減らず、1年経過後は換金できる点で、拘束期間を重視する場合に検討しやすい選択肢です。一方、変動10年は半年ごとに利率が見直されるため、金利が下がれば受け取る利子も減ります。

②定期預金・退職金定期預金|「0.001%の時代」は終わった

預金金利はこの2年で大きく変わりました。2026年9月時点で、大手銀行(三菱UFJ・三井住友・みずほ)の普通預金は年0.4%、1年物の定期預金は年0.5%です。いずれも2026年8月3日に引き上げられた水準です。

ネット銀行にはさらに高い金利もあります。あおぞら銀行BANK支店は100万円までを対象に普通預金で年1.0%、東京スター銀行やauじぶん銀行は給与振込などの取引条件付きで年0.7〜0.75%を提示しています。残高上限や条件の有無は銀行ごとに異なるため、適用範囲を確認してください。

退職金定期預金は、一定額以上の退職金を預けると通常より高い金利が適用される商品です。かつては「通常の定期預金が年0.002%のところ、退職金定期なら年1%」という大きな差がありましたが、通常の預金でも近い水準の金利が得られるようになったため、以前ほどの優位性はありません

検討する際は、金利の高さだけでなく次の点を確認してください。

  • 優遇金利が適用される期間(3ヵ月や6ヵ月など短期間に限られることが多い)
  • 優遇期間終了後に適用される金利
  • 投資信託やファンドラップとのセット購入が条件になっていないか

預金金利の水準と使いどころは定期預金の金利水準と使いどころで詳しく解説しています。

③投資信託|NISA・iDeCoの活用も含めて

投資信託は、運用の専門家が複数の投資家から集めた資金を株式や債券などに投資する商品です。1本の商品で複数の投資対象に分散されるものが多く、少額から始められます。

ただし元本は保証されておらず、運用成果によっては購入時より価値が下がります。60代の場合、値下がりしたときに回復を待つ時間が現役世代より短い点を踏まえる必要があります。取り崩しの時期と重なると、下がった価格で売らざるを得なくなることがあります。

NISAを使えば運用益が非課税になります(→新NISAのつみたて投資枠の使い方)。iDeCoは掛金が所得控除の対象になりますが、原則60歳まで引き出せない点に注意が必要です。2026年12月1日からは掛金の上限が引き上げられ、加入できる年齢も70歳未満まで広がります(→iDeCoの仕組みと掛金上限の引き上げ)。

④不動産クラウドファンディング|1万円から、運用は事業者に任せる

不動産クラウドファンディングは、事業者がインターネットを通じて投資家から資金を集め、不動産を取得・運用し、家賃収入や売却益を分配する仕組みです。1万円程度から参加でき、物件の管理や入居者対応は事業者が行うため、現物の不動産投資と比べて手間がかかりません(→不動産クラウドファンディングとは?仕組みと始め方)。

多くのファンドでは「優先劣後方式」が採られており、損失が出た場合にまず事業者側の出資分から負担する仕組みになっています。これにより一定の範囲までは投資家の元本が守られますが、劣後出資の割合を超える損失が出れば元本割れとなります。「元本保証」ではありません

60代が検討する際に確認すべき点。

  • 運用期間中は原則として解約できません。急に資金が必要になっても現金化できないため、生活費や医療費に充てる予定の資金は入れないでください。
  • 想定利回りは確定した数値ではありません。空室の発生や売却価格の下落により、分配金が想定を下回ることがあります。
  • 劣後出資の割合、対象物件の所在地と用途、運用期間、事業者の実績を、ファンドごとに確認してください。

OWNERS.COMでは複数の事業者のファンド情報を掲載しています。運用期間や想定利回りはファンドごとに異なるため、ファンド一覧で条件を比較してから検討してください。

60代は「積み立て」ではなく「取り崩し」で設計する

資産形成の記事は、多くが現役世代に向けた「積み立て」を前提に書かれています。しかし60代は、資産を増やす局面から取り崩す局面へ移る時期です。同じ商品でも、考え方が変わります。

取り崩しを前提にすると、次のような順序で資産を配置する考え方が取りやすくなります。

  1. すぐ使うお金(1〜2年分の生活費と予備費):普通預金など、いつでも引き出せる形で確保する。運用に回さない
  2. 数年以内に使うお金:定期預金や個人向け国債など、元本が減りにくく期限が読める商品に置く
  3. 10年以上使う予定のないお金:値動きのある商品も選択肢に入る。ただし取り崩し時期が近い資金は減らしていく

この順序で組んでおくと、値動きのある資産が下がっている時期に、それを売って生活費をつくる事態を避けやすくなります。

年金についてよくある質問

年金は何歳から満額もらえますか?
原則65歳からです。国民年金の「満額」は受給開始年齢ではなく納付期間の話で、20歳から60歳までの40年間すべての保険料を納めた場合に月7万608円(2026年度)となります。
国民年金だけの場合、いくらもらえますか?
40年間納めた場合の満額は月7万608円(2026年度)です。実際の受給者の平均は月5万8,360円(日本年金機構「主要統計(令和6年度版)」)で、納付期間が40年に届かない方が多いためです。
働きながら年金を受け取ると減りますか?
厚生年金に加入して働く場合、給与と年金の合計が基準額を超えると老齢厚生年金の一部または全部が支給停止になります。この基準額は2026年4月から月51万円から月65万円に引き上げられました。国民年金(老齢基礎年金)は対象外で、減額されません。
年金から税金や保険料は引かれますか?
引かれます。所得税に加えて、住民税・森林環境税・介護保険料・医療保険料(国民健康保険または後期高齢者医療)が年金から差し引かれます(一定の要件に該当する場合)。手取り額は受給額より少なくなるため、生活費と比べる際は手取りベースで考えてください。
繰下げ受給はしたほうが得ですか?
一概には言えません。70歳まで繰り下げれば42%増えますが、65歳から70歳までの5年間は年金収入がありません。増額分が繰下げ前の受給総額に追いつくまでには10年以上かかります。健康状態、他の収入、働き続けるかどうかを含めて判断する必要があります。

まとめ|まず「ねんきん定期便」で自分の額を確認する

2026年度の年金額は、国民年金の満額が月7万608円、夫婦2人のモデル世帯で月23万7,279円です。ただしこれは特定の条件での金額であり、国民年金のみの方の平均は月5万8,360円、厚生年金を含めた平均は月15万289円です。平均やモデル世帯の数字をそのまま自分に当てはめると、受給額を高く見積もることになります。

65歳以上の無職世帯は、可処分所得に対して単身で月2万9,980円、夫婦で月4万2,434円の赤字が平均です。95歳まで生きる想定なら、単身で約1,079万円、夫婦で約1,528万円を年金以外で用意する計算になります。介護費用や住宅の修繕費、物価上昇はこの金額には含まれていません。

やるべきことは3つです。

  1. ねんきん定期便で自分の見込額を確認する(50歳以上の方は65歳からの見込額が記載されています)
  2. 今の生活費から、年金だけになったときの差額を出す
  3. 差額を埋める方法を、資金の拘束期間を基準に選ぶ(すぐ使うお金は運用に回さない)

金利が上がったことで、個人向け国債や定期預金といった元本が減りにくい選択肢の条件は、数年前より良くなっています。まずは自分の年金額を把握することから始めてください。

本記事は2026年9月時点の情報にもとづいて作成しています。年金額は毎年度改定され、金利や制度は変更される可能性があります。実際の受給額や手続きについては日本年金機構または年金事務所にご確認ください。
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の金融商品の購入を勧めるものではありません。投資判断はご自身の状況にもとづいて行ってください。