クラウドファンディング
2024.01.30
不動産クラウドファンディングで確定申告が必要になるのは、どのような人でしょうか? 宮路幸人税理士が「匿名組合型」不動産クラウドファンディングを例に解説します。
この記事の目次
“不動産に投資する方法”の中でも、少額かつ簡単に取り組める新しい手法として近年注目されている「不動産クラウドファンディング」。一口1万円から投資できる案件が多いうえに、すべての手続きをインターネット上で完結させられることや、管理や運用をプロに任せられることなどから、投資経験者はもちろんのこと、投資未経験の方からも人気です。
とりわけ「気軽さ」で注目されている不動産クラウドファンディングですが、「場合によっては所得税の確定申告が必要である」ということをご存じでしょうか?
確定申告を忘れると損をしてしまうこともあります。
近年の資産形成意識の高まりを受けて、「不動産クラウドファンディングで投資家デビューを果たした」「副収入を得るために始めた」という方もいるでしょう。
不動産クラウドファンディングで所得税の確定申告が必要になるのは、どのような場合か。また、所得税の確定申告はどのように行うのか。さらに「確定申告をしたら会社にバレる?」という不安にもお応えします。
さっそく見ていきましょう。
不動産クラウドファンティングは、一般的に「匿名組合型」と「任意組合型」の2つに分かれます(⇒詳しくは『不動産クラウドファンディング:「匿名組合型」と「任意組合型」って何が違うの?契約類型ごとの特徴を解説』で解説)。
よく採用されているのは「匿名組合型」で、「一口1万円から」と少額で始められるのもこの匿名組合型の特徴です(最低投資金額は案件ごとに異なります。任意組合型ではほとんどの案件で「一口10万円以上」)。
所得税法上、「匿名組合型」の分配金は雑所得という扱いになり、課税対象です。投資家に支給されるのは源泉徴収後の金額ですが、場合によっては確定申告が必要になります(「任意組合型」の分配金は不動産所得となり、源泉徴収されません。金額にかかわらず確定申告が必要です)。
主流は「匿名組合型」ですので、以降では不動産クラウドファンディング=匿名型として説明を進めていきます。
不動産クラウドファンディングで確定申告が必要になるのは、雑所得などの「給与所得以外の所得」の合計が20万円を超えた場合です。
不動産クラウドファンディングの分配金が20万円以下であっても、他に「給与所得以外の所得」があれば、合算したうえで「20万円を超えるかどうか」を判定することになります。
雑所得には次のようなものが該当します。
不動産クラウドファンティングの分配金は20.42%が源泉徴収されています。分配金が25万円ある場合、51,050円が事業者に徴収され、受け取る分配金は198,950円となります。ボーダーラインとなる「合計20万円を超えるかどうか」は、手取り額ではなく総額で判断されますのでご注意ください。
不動産クラウドファンティングを含めた給与所得以外の所得が20万円以下であれば申告不要です。
給与・年金の源泉徴収票、社会保険料の支払額や控除証明書、医療費の領収書、その他保険料控除等の証明書などです。なお、年末調整を行っている場合などは不要な書類もありますのでご確認ください。
確定申告書は税務署に行って用紙を入手するか、国税庁のホームページよりダウンロードすることができます。また、e-taxを利用して電子申告することもできますので、こちらを利用されてみるのもよいでしょう。ただし、間違って入力した場合や、入力すべきところを空欄にしたり、入力ミスがあったりした場合などは、必要な控除を受けられなくなることもありますのでご注意ください。
確定申告の時期は、国税庁が電話相談センターを設けています。わからない点があればそちらに電話して確認するとよいでしょう。
確定申告書の内容に沿って、納税が足りていなければ納付を行い、源泉徴収されている額が多い場合などは所得税が還付されることとなります。
副業OKの会社に勤めていても、「会社には知られたくない」「副業の所得を把握されるのは避けたい」と考える方もいるでしょう。
会社員の場合は通常、確定申告をすると、副業の所得と合わせた住民税額が給料から天引きされることとなり、副業の所得が把握されてしまいます。
副業の所得を会社に知られたくない場合には、確定申告書第二表にある「住民税に関する事項」の欄、「給与、公的年金等以外の所得に係わる住民税の徴収方法」で「自分で納付」に〇をつけてください。
こうすることで、副業による収入に関する住民税の通知は自宅に届き、その分の住民税は自分で納付することになるので、会社に副業の存在がバレる心配はありません。
「課税所得金額が695万円以下の人」は、申告すると税金が還付される可能性があります。不動産クラウドファンディングの分配金で源泉徴収される「20.42%」は、本来適用される税率より高く、税金を払い過ぎていることになるためです。
例えば給与の課税所得が300万円(=所得税率10%)で、不動産クラウドファンティングで分配金20万円を得た人の場合、
源泉徴収額 200,000円×20.42%=40,840円
総合課税額 200,000円×10.00%=20,000円
と源泉徴収税額が多く徴収されているため、確定申告することにより40,840円-20,000円=20,840円の所得税の還付を受けることができます。
申告義務がない人(給与所得以外の所得が20万円以下)でも、確定申告を行えば還付金を受け取れる可能性がありますので、税金を払い過ぎていないかチェックするとよいでしょう。
以上、今回は不動産クラウドファンディングで確定申告が必要になるケースについて解説しました。申告対象であるにもかかわらず申告が漏れますと、加算税や延滞税がつき、余分な税金を納めることになってしまいます。損する羽目にならないように、ご自身に確定申告が必要かどうかを確認することをおすすめします。
多賀谷会計事務所 税理士、CFP
会計事務所における長い勤務経験・豊富な実務経験により、会計処理・税務処理及び経営や税務の相談など、様々な問題に対応。強みのある領域は不動産と相続関連。特に相続問題では、税金面だけでなく、家族が幸せになれるトータルな提案を重視している。宅地建物取引士、マンション管理士等の資格も保有。常にフットワークを軽く、お客様のニーズに応えるのがモットー。離島支援活動も積極的に行っている。