不動産投資
2023.06.09
不動産投資を始める際、自分自身の年収や属性について気にする方は多いです。たとえば、30代の医師で年収が1,500万円であれば、一般的には高属性・高年収といえますが、そのような高収入でも不動産投資に失敗することがあります。この記事では事例を通して、失敗を回避するポイントを解説しています。
この記事の目次
医師として働いていたAさん(仮名)は、老後を見据えて不動産投資を始めることにしました。将来のリタイアに備え、若いうちから資産形成をしておこうと考えたのです。
医師という職業柄、Aさんは1,500万円という高年収であり、経済的に余裕があります。そのため初めての不動産投資であったものの、思い切って1億5,000万円の一棟マンションを購入しました。
投資経験のある知人から「ワンルームよりも一棟所有の方が、投資効率がよい」と聞いていたことも、一棟マンションを選んだ理由のひとつです。
1億5,000万円の一棟マンションを購入し、不動産投資をスタートしたAさん。多くの部屋があるため、安定した収入を期待していました。
しかし5年ほど経った頃、Aさんの状況は思わぬ方向へと向かいます。
想定していたよりも家賃収入が下がり、その一方で修繕費や税金はかさんでいきました。
「あれ? お金が減っていく……」
維持費とローン返済を合わせると、年間200万円もの持ち出しが発生していたのです。高収入であるため、ローン返済だけは何とか続けていましたが、貯蓄は減り続けていきます。
このままでは老後安泰どころか、赤字が大きくなる一方だと判断し、Aさんはマンションの売却を決意しました。しかしその際、売却益ではローンを完済できず、貯蓄をすべてつぎ込んで返済することとなったのです。
事例で紹介したAさんは、一般的には高年収といわれる属性であり、経済的にも安定していました。そのような状況でありながら失敗した要因は、主に2つあります。
詳しく見ていきましょう。
Aさんが失敗した原因の1つは、相場よりも割高な金額で物件を購入してしまったことです。
購入から年数が経ち、売却額でローン完済が困難となったことに加え、もともと割高な金額で買っていたため、差額がさらに大きくなってしまいました。
高年収であり資金に余裕があったため、購入金額と物件の価値が見合っているかどうかを厳しく見ていなかった点も影響したといえます。
不動産会社から提示された想定家賃にもとづいて計画を立ててしまったことも、失敗の要因です。
一般的には、年数が経つほど家賃は下がる傾向にありますが、中には、家賃の下落を考慮していないシミュレーションが提示されることもあります。
また空室リスクが見込まれておらず、満室の想定で利回りが計算されているケースも見られます。
このように見込みの甘いシミュレーションをもとに考えてしまうと、実際に運用を開始した際に大きな赤字が発生しかねません。
前項では、事例のAさんが失敗した要因を解説しました。Aさんのように割高な物件を買わないためには、セールストークに気をつける必要があります。
たとえば売ることを第一に考えている不動産会社は、顧客である投資家にリスクを伝えず、メリットしか説明しません。具体的には、以下のようなセールストークが用いられるケースがあります。詳しく見ていきましょう。
投資家が高年収である場合、「収入を貯蓄するのではなく、投資で資産形成をするべき」と、すすめられるケースが少なくありません。預金よりも投資の方が高金利となることは、たしかに多いでしょう。
しかし不動産会社がこの営業トークをする背景は、他にもあります。それはローンを組む本人の職業や年収によって、融資の受けやすさが異なる点です。
通常、融資の審査では顧客の属性だけではなく、対象となる不動産の価値も見られます。そのため相場よりも高い金額で購入する場合、本来の物件価値が融資の上限金額となり、希望通りの金額を借りられないケースもあります。
しかし事例のAさんは本人の属性が良いことによって、物件価値よりも高いローンを組んでしまっているのです。
属性が良い投資家は融資を受けやすい傾向があるため、不動産会社も積極的に営業を行います。ただし、すべてが営業トークというわけではなく、高属性を活かして資産形成できる物件も、実際にはあるでしょう。
単なる営業トークでないか否かを見極め、信頼できる不動産会社に依頼することが大切です。
今回は失敗事例を通し、不動産投資のポイントを解説しました。購入金額が妥当であるかを見極め、リスクを見込んだ収支計画を立てることによって、失敗を回避することは十分に可能です。
また、最初から大きな金額を投資するのではなく、少額投資から始めてみるのもおすすめです。たとえば一口1万円から出資できる不動産クラウドファンディングを活用し、リスクを抑えながら投資経験を積んでいくのもよいでしょう。