不動産投資
2023.03.01
賃貸経営をするにあたり、家賃の下落率が気になる方は多いのではないでしょうか。年数が経つと家賃相場は下がる傾向があるため、不動産投資では長期で収支計画を立てることが重要です。そこで本記事では、築年数ごとの家賃下落率の調査結果や、下落を抑える対策を紹介します。将来の家賃相場を踏まえた上で、安定した運用をしたい方はぜひ参考にしてください。
この記事の目次
一般的に、家賃の下落率は年率で平均1%といわれています。しかし実際には、築浅と築古の物件では下落率が異なります。
株式会社三井住友トラスト基礎研究所の調査*によると、以下の3つのフェーズで下落率に差がありました。
*参考:株式会社三井住友トラスト基礎研究所『経年劣化が住宅賃料に与える影響とその理由』(https://www.smtri.jp/report_column/report/pdf/report_20130116.pdf)
築年数ごとの家賃下落率を、以下で見ていきましょう。
三井住友トラスト基礎研究所は、東京23区の賃貸マンションを対象に、572の事例から築年数による家賃下落率を分析しました。調査対象の年数は築0年から25年、物件タイプは単身者向けとコンパクトマンションです。
調査結果によると、築0~25年の下落率の平均は年率1%となっています。
築3~10年は、下落率が一番大きい時期です。単身者向け・コンパクトマンションともに、25年間の平均である下落率1%を上回っています。
新築物件は家賃が高めに設定され、一度でも人が入居した後は賃料を下げざるを得ません。また築浅をアピールポイントにしている場合は、周りの新築物件と競合し、家賃は下落する傾向があります。
築11~20年は第1フェーズより下落率が低くなり、平均の1%を下回っています。築10年以上になると「1年程度の経過では印象が変わらない」という入居者が多くなり、1年ごとの下落幅が小さくなると考えられています。
築21~25年は、第2フェーズよりもさらに下落幅が少なくなります。特に単身者向けでは築21年以降の家賃がほぼ下がらず、下落率は約0.1%に留まる結果となりました。
前項では、築年数ごとの家賃の下落率を紹介しました。ここでは、購入物件の家賃下落率を想定する方法を解説します。
家賃の下落率は、築年数をもとにすると想定しやすいでしょう。新築から25年間の下落率の平均は約1%です。長期でシミュレーションを作成する場合は、下落率1%で考えておくと、大きく外れる心配は少なくなるでしょう。
また、築3年から10年の間は下落率が大きくなります。三井住友トラスト基礎研究所の調査結果を参考に、約2%前後で想定しておくのが無難といえるかもしれません。
地価が高いエリアは、一般的に需要があるといえます。たとえば駅周辺や商業施設が多いエリアの他、高級住宅街などです。このようなエリアでは、賃貸物件の家賃も下がりづらい傾向があります。
投資物件のエリアの地価を調べ、下落率が平均よりも低いか否かを予想することもできるでしょう。国税庁や自治体が管理している路線価などで、地価を確認できます。
地域人口の推移から、家賃の下落率を想定することも方法の一つです。賃貸物件の家賃は需要によって変動するため、人口が減少している地域では家賃は下がる傾向にあるといえます。
たとえば総務省統計局の人口推計結果*では、都道府県別の人口増減率などが公表されています。このようなデータをもとに下落率を考えるのもよいでしょう。
*総務省統計局『人口推計(2021年(令和3年)10月1日現在)』(https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2021np/index.html)
築年数による家賃の下落率を抑えるには、既存入居者の満足度を上げたり、人気の設備を導入したりといった対策が考えられます。
家賃の下落を抑える対策として、既存の入居者に長く住んでもらうことが挙げられます。
家賃は常に下がり続けているわけではなく、入居者が入れ替わるタイミングで下がるケースが多いためです。たとえば空室が埋まらない場合などに、家賃を下げざるを得ない状況が考えられます。
言い換えると、入居者に長く住んでもらうことにより、現状の家賃を維持しやすくなるのです。そのために既存入居者の満足度を上げることが大切です。
具体的には共用部を清潔に保つなど、適切な物件管理を行いましょう。また、トラブルを起こしやすい入居者には早めに対処することで、他の入居者の退去を防ぎやすくなります。
入居者が物件を選ぶ際には、設備の仕様が決め手となるケースもあります。全国賃貸住宅新聞の調査*によると「特定の設備があれば、相場より家賃が高くても入居する」といった声もありました。
*参考:全国賃貸住宅新聞『ネット無料、安定の2冠【人気設備ランキング2022】』
(https://www.zenchin.com/news/content-639.php)
そのため、人気のある設備を導入することは、家賃の下落率を下げる有効な手段といえます。例として、人気の高い設備には以下のものが挙げられます。
設備によっては大掛かりな工事が必要ですが、比較的簡単に設置できるものもあります。
築古物件の場合はリフォームで導入するのも、選択肢の一つです。また、これから物件を購入するなら、人気の設備のある物件を選ぶとよいでしょう。
家賃の下落率は築年数で異なり、築3~10年は約2%前後と、下落幅が大きくなっています。しかし築11年以降は落ち着く傾向にあり、築25年までの平均では下落率1%となっています。
また、入居者に長く住んでもらうことや、人気の設備を導入するといった対策を施すことで、家賃の下落を抑えることは可能です。本記事で紹介したポイントを踏まえて家賃相場を想定し、安定的な運用を行いましょう。