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不動産投資

2023.01.06

なぜマンション価格が高騰?コロナ禍に不動産バブルが起きているワケ

なぜマンション価格が高騰?コロナ禍に不動産バブルが起きているワケ

今、首都圏の新築マンション価格が高騰しています。昨年はコロナ禍にも関わらずバブル期の1990年度に記録した金額を超え過去最高の6360万円となりました。30年余りの低迷を経て、なぜ再びマンション価格が高騰しているのでしょうか。急激な円安、物価高などマイナス材料ばかりですが、今後、マンション価格はどう動くのでしょうか。

バブル後最高のマンション価格はさらに上昇中

首都圏のマンション価格が高騰しています。2021年の首都圏で発売された新築マンションの平均価格は、1戸当たり6260万円とバブル期の1990年を抜いて過去最高となりました。こうした状況は2022年に入ってからも続いているといいます。

民間の調査会社「不動産経済研究所」によると、東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県で21年に発売された新築マンションの1戸当たりの平均価格が3年連続で前年を上回っています。さらに2022年に入ってもこの勢いは衰えることなく1~11月の平均で6465万円となっています。

バブル景気だった1990年の平均価格は初めて6000万円を突破、6123万円をつけましたが、その後バブルの崩壊とともに首都圏のマンション価格は急落し、4000万円台で推移しました。

バブル景気以前の新築マンションの供給戸数は首都圏で年間4万戸程度でしたが、バブル崩壊後には急増して1994年以降は毎年8万戸前後の供給が続いたことが大きな要因として考えられます。

大量供給の背景には地価との関連があるといわれています。東京圏の地価はバブルの絶頂期の1988年には前年比60%を超える驚異的な上昇率でした。ところがバブル崩壊とともに大幅に下落し、その後は若干の上昇を続けながらもほぼ横ばいの状態が続いていました。

こうしたなかで1994年ごろからマンションの建設ラッシュが始まりますが、2007年ごろから状況は一変します。

リーマンショックで中堅ディベロッパーの破たんが相次ぎ、供給戸数が大きく減少しました。リーマンショック以前の2006年には7万4463戸供給されていましたが、2007年には6万1021戸、2008年には4万3733戸、2009年には3万6376戸まで減少、それ以降も2013年を除けば5万戸未満で推移しています。

(※写真はイメージです/PIXTA)

ゼロ金利政策で収入の9倍のローンも可能に

マンション価格高騰の背景には、いくつかの要因があります。第1は歴史的な低金利です。住宅ローンの固定金利は2022年に入って一部で引き上げも行われましたが、ネット銀行を中心に、変動金利で0.3%台~、固定金利(10年)で0.7%台~など、依然、住宅ローンの低金利時代が続いています。

バブル期などに比べると住宅ローンの支払い金利が圧倒的に低くなり、需要を喚起しました。1990年代なら所得の5倍以内だといわれた住宅ローンが、ゼロ金利政策下の金利では9倍程度でも同じ返済の負担となるという試算もあります。

低金利に加えて、第2の要因として、住宅ローン控除が挙げられます。2022年度の税制改正により住宅ローン控除の控除率は「1%」から「0.7%」に引き下げられたため、マンション市場にマイナスの影響が出るのではという声もありましたが、一定の条件を満たした物件は、対象期間が10年から13年に延長されました。住宅ローン金利が低いだけに、今後もメリットのある制度といえるでしょう。

新築マンションの供給減も要因の一つとされます。新築マンションは2000年代前半までは、首都圏で8万戸前後が販売されていましたが、その後は減少傾向を続け、2016年からは3万戸台となり、2020年には3万戸を割りました。現在は3万戸台に回復しています。

新築マンションの販売減少の背景には、都心から離れた郊外など価格が比較的安い物件の販売数が減ったことが一因といわれます。

その一方で、都心部を中心に高価格物件が増えています。特に首都圏の都心部では、大手デベロッパーが、高価格な新築マンションを富裕層やアッパーミドル層、高年収の共働き世帯であるパワーカップルなどをターゲットにして、少ない供給量で価格維持を図る販売戦略へシフトしていると指摘されています。

富裕層が相続対策で高級マンションを購入する需要も増えています。相続税の節税目的で、資産を現金ではなく、不動産で所有するケースが増加しています。

そのほか、建築費の高騰もマンション価格を押し上げる要因の一つとなっています。資材や人件費の高騰はマンション価格に直接影響を及ぼします。

(※写真はイメージです/PIXTA)

日銀の政策変更で住宅ローンはどうなる?

そんななかで日銀の突然の金融緩和の修正が波紋を広げています。2022年12月20日、日銀が年内最後の金融政策決定会合の結果を公表し、大規模な金融緩和政策を修正する方針を決定しました。10年物国債金利の許容変動幅をプラスマイナス0.25%から同0.5%に拡大するとした今回の決定は「突然」でした。さらに、黒田東彦総裁は利上げではないと強調しています。

日銀は2016年より、「短期金利を -0.1%で固定し、長期金利を±0.25%の変動幅でコントロールする」という政策を取ってきました。今回の政策決定で、この長期金利の変動幅を「±0.50%」へと拡大することとなりました。「±(プラスマイナス)」と上下に幅がとられていますが、現在は世界的な金利上昇局面であり、プラスの0.50%付近への急上昇が見込まれます。これは事実上の「利上げ」(金融の引き締め)となります。

今回の政策決定で気になるのは住宅ローンの動きです。既に住宅ローンを組んでいるほとんどの人にとって、今回の政策修正による直接的な影響は少ないと考えられます。つまり「変動金利は変わらず、固定金利は若干上がるが限定的」と考えられるのは、変動金利のベースとなる短期金利はマイナス金利が維持され、固定金利のベースとなる長期金利のみの変更だからです。

とはいえ、市場は思惑で動きます。「今回の修正は利上げの最初の一歩」とみるべきで、今後、短期金利が上昇するリスクにも備えることが重要です。

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OWNERS.COM編集部