不動産投資
2023.01.06
不動産投資を行っているオーナーは毎年、確定申告をしなくてはいけません。不動産所得は収入金額から必要経費を差し引くことで求められます。この必要経費の中には「雑費」という勘定科目がありますが、具体的にはどんな費用が該当するのでしょうか? また、税務署に疑われないためのポイントも見ていきましょう。宮路幸人税理士が解説します。
不動産所得は「不動産収入-必要経費」で求められます。必要経費には、主に、建物・建物付属設備等にかかわる減価償却費、固定資産税や事業税などの租税公課、賃貸物件にかかわる火災保険料や地震保険料などの保険料、入居者の退去にかかわるリフォーム代や外壁塗替塗装などの修繕費、不動産会社に支払う管理手数料や仲介手数料などの支払手数料などがあります。
雑費とは、上記のような主要勘定科目には入らないものの、不動産収入を得るために支払ったその他の必要経費のとりまとめとなる勘定項目です。では、雑費には具体的にどのようなものが該当するのでしょうか?
不動産投資における雑費には範囲が広いという特徴がありますが、共通するのは、不動産収入を得るための費用であるということです。たとえば次のような経費で、少額である場合には、不動産所得の雑費とされることが多いです。
一つずつ見ていきましょう。
投資不動産の視察や物件の管理、不動産会社と打ち合わせする際に支払った交通費は必要経費となります。たとえば公共交通機関に対する支払いやタクシー代、高速代、駐車料、ホテルなどの宿泊代などが該当します。
固定電話の料金や携帯の通話料金、郵便代、インターネット代などの通信費なども必要経費として計上することができます。ただし、計上できるのは事業にかかわる部分ですので、事業で使う携帯などを私用でも使っている場合には、按分計算をし、私的部分については除外する必要があります。
不動産投資を効率的に行うには情報収集が必要となります。この事業に必要な情報を収集するための書籍代や、新聞代、業界新聞や不動産関係の専門書などの購入費用は必要経費とすることができます。個人的な趣味で買うようなものは必要経費にできません。
不動産会社や管理会社の担当者などとの打ち合わせで使った飲食代や、接待のためのゴルフ費用などは、必要経費として計上することができます。ただし、個人的な飲食代などの支出は必要経費とすることはできません。
また、オーナは入居者等とは一般的に交流がないことが多いのですが、入居に伴うインセンティブとして使ったプレゼント代などは交際費とすることができます。ただし、交際費が高額だと税務署からの目が厳しくなり、問い合わせや税務調査の対象となりやすいです。節度をもって、事業に関係のあるものだけを必要経費に計上するようにしましょう。
不動産投資のために購入した10万円未満のパソコンやスマートフォンなどは消耗品費として必要経費とすることができます(10万円以上だと固定資産として計上され、減価償却されることとなります)。プリンターインクなどの事業にかかわる消耗品も必要経費とすることができます。
賃貸物件の玄関、廊下、階段といった共用部分の電気代や、エントランスで使用する水道料などの水道光熱費は必要経費とすることができます。
従業員やアルバイトに対する食事代や健康診断料などは必要経費とすることができます。社会保険に加入している場合の事業主負担分についても必要経費とすることができます。
このように、他の勘定科目に当てはまらない支出で少額なものを雑費として計上するわけですが、雑費が収支計算書などで多額に計上されている場合は要注意です。税務署からすると、この多額な雑費はいったい何だろうと疑問を持つことになります。いいかげんな会計処理をしているのではないか?と目をつけられやすいのが雑費です。
他の勘定科目に比べて雑費が多い場合、税務署からの問い合わせや調査を受ける可能性が高くなります。不動産所得は、一般事業に比べて使われる勘定科目が少ないという特徴がありますので、雑費が多いと特に目立ってしまいます。
雑費の中で、たとえば福利厚生費や交際費などが多額である場合などは、新しい勘定科目を設定して計上するのがよいでしょう。
いかがだったでしょうか? 今回は、不動産投資にかかわる必要経費の中の雑費について簡単に説明しました。雑費が多額に計上されている場合は税務署にチェックされやすいため、合理的に説明できるような会計処理と、必要な領収書の保存等を心がけましょう。
多賀谷会計事務所 税理士、CFP
会計事務所における長い勤務経験・豊富な実務経験により、会計処理・税務処理及び経営や税務の相談など、様々な問題に対応。強みのある領域は不動産と相続関連。特に相続問題では、税金面だけでなく、家族が幸せになれるトータルな提案を重視している。宅地建物取引士、マンション管理士等の資格も保有。常にフットワークを軽く、お客様のニーズに応えるのがモットー。離島支援活動も積極的に行っている。