不動産投資
2023.05.09
不動産投資で安定的に収益を上げていくには、退去率を下げることも重要です。本稿では、退去率を下げるべき理由や、よくある退去理由とその回避策について解説します。
この記事の目次
不動産投資の主な収益源は、入居者から支払われる「家賃」です。そのため不動産投資で安定的に収益を上げていくには、高い入居率を維持することが重要です。
ただし、単に入居率が高ければよいわけではありません。
退去が起こると、オーナーには「退去費用」の負担が生じます。退去費用の内訳は、部屋の原状回復費やハウスクリーニング費、次の入居者を募集するため仲介業者に払う報酬などです。
たとえ所有する物件の平均入居率を高く保てていても、入居者の居住期間が短く頻繁に退去が繰り返されていると、退去費用の負担がかさみ、家賃収益の手残りが少なくなってしまいます。
よって、高い入居率を維持するうえで重要なのは「退去率を下げること」、すなわち「同じ入居者に長く住んでもらうこと」です。
では、退去率を下げるにはどうすればよいのでしょうか? 本稿では「よくある退去理由」を5つ紹介するとともに、それらを踏まえた回避策を解説します。
まずは、実際によくある退去理由を5つ紹介します。なお、退去理由①~⑤の詳細をみるとそれぞれ重複する内容もありますが、本稿では「退去を決めた入居者たちが、各自の退去理由として選んだ名目」として取り上げ、それぞれ独立した退去理由としてみなしています。
特に多い退去理由は、「より条件のよい賃貸物件を見つけたから」です。「よい条件」にはさまざまありますが、特に挙げられやすいのが「家賃」です。
一方、家賃という点では引けを取らなくても、「家賃が同程度なのに最寄り駅へのアクセスがよく、部屋の広さも変わらない」というケースや、「最寄り駅からはやや遠くなるが、同程度の家賃でより広い部屋に住める」というケース、さらに「おおよその条件は同程度だが、設備が良い」という理由で退去に至るケースもあります。
入居者どうしのトラブルとして多いのは、騒音問題や共用部分の使い方など、生活マナーをめぐる対立です。当事者間で解決を図ろうとした結果、さらなる対立を招いたり、場合によっては大きなトラブルに発展する事例もあります。
居住中、オーナーや管理会社との間で起こるトラブルとして多いのは、物件の欠陥や設備故障をめぐる対立や、クレーム対応から生じる問題です。たとえば設備故障について連絡してもろくに対応してもらえなかったり、騒音などの他の入居者の迷惑行為について相談しても「集合住宅なので、ある程度はご了承いただかないと…」などと消極的な返答をされたりなどして、オーナーや管理会社への不満・不信感が募っていくのです。
設備の古さや、使い勝手の悪さもよくある退去理由の一つです。たとえば都市ガスなのかLPガスなのか、キッチンならガスコンロかIHコンロかなど。また、バスやトイレといった水回りも問題に挙げられやすい部分です。設備が古いと頻繁にトラブルが起こり、そのたびに管理会社や業者に連絡しなくてはいけません。いくら家賃や立地といった条件が良くても、毎日使う機能に問題が多いと、暮らし続けることが難しくなってしまいます。場合によっては、契約更新を待たずに退去してしまうケースも起こります。
集合住宅に住む以上、たいていの入居者はある程度の騒音は仕方がないと覚悟しています。しかし実際の騒音状況は住んでみないとわかりません。毎日のように大声で長電話をする声が聞こえてきたり、目覚まし用の大きなアラーム音が毎朝1時間以上響いてきたりする状況は精神的に辛いものです。
そのほかにも、線路が近い、幼稚園や小学校が近いなど、周辺環境による騒音問題も起こりえます。
入居当初は問題なかったものの、住み続けていくうちに物が増えていくなどして、部屋の広さに不満を抱くようになるケースも少なくありません。
前項では、賃貸物件の「よくある退去理由」を5つ紹介しました。ここからは、それぞれの退去理由の回避策を解説します。
退去を防ぐ回避策として、比較的実践しやすいのは下記の3つです。
一つずつ、詳細を見ていきましょう。
トラブルにはすぐ対応すること。これは、退去理由②③④に対する回避策になりえます。特に水回りのトラブルはスピード感が命です。トラブルの中には即時解決が難しいケースもありますが、入居者から連絡のあったときに「その問題に対してきちんと向き合う姿勢」を見せることが入居者の安心感・信頼に繋がります。これは入居者どうしで直接解決を図るのを防止することにもつながります。
トイレにウォシュレットを取り付ける、宅配ボックスを設置する、インターネットを無料にする、TVインターホンに変更するなど、人気設備の導入は退去理由①③⑤の回避策になりえます。
人気設備を導入することは、不満の生じにくい設備に変えるということであり、その部屋の条件を良くすることにもつながります。部屋の広さは、それ単体でも退去理由になりうるものの、あくまで「暮らしやすさ」の一部です。入居者に「快適だ」と感じさせる点が多ければ、お金をかけて広い部屋に引っ越すより、そこに住み続けることを選ぶ理由になりえるでしょう。
上記で挙げたそれぞれの設備は、製品や個数等の条件によってコストは変わりますが、いずれも高額すぎることはなく、施工もそれほど時間はかかりません。比較的すぐにできる回避策として検討してみてはいかがでしょうか。
賃貸借契約に「特約」を設けることは、退去理由②④の回避策になりえます。
賃貸借契約における「特約条項」とは、賃貸契約書を締結する際に、一般的な記載事項に加えて、貸主と借主の間で取り交わされる特別な約束事項のことです。
有名なのは、退去時の「原状回復費用」や「クリーニング」にまつわる特約ですが、最近では、騒音などの迷惑行為を禁止する特約を定めるケースも増えてきているようです。
条件次第では、特約に基づき、迷惑行為を繰り返す入居者との賃貸借契約を解除できる場合があります。
上記のほか、すぐにできる空室対策として「家賃を下げる」という方法が挙げられることもありますが、必ずしも最適な手段であるとは言えません。キャッシュフローの悪化につながり、場合によっては不動産投資そのものを続けられなくなるリスクも生じるからです。よって、賃料の減額はあくまで最終手段として考えた方が良いでしょう。
以上、本稿では「よくある退去理由」と、それらを踏まえた「退去の回避策」について解説しました。高い入居率を維持するには、「同じ入居者に長く住んでもらうこと」が重要です。実際にある退去理由をヒントに、有効な空室対策を講じていきましょう。