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不動産投資

2022.11.22

不動産投資が相続税対策になる理由とは?税理士が解説

不動産投資が相続税対策になる理由とは?税理士が解説

不動産投資がなぜ相続税対策としても活用できるのか。その理由は、相続税の評価方法の違いにあります。相続税対策としての不動産投資の活用について、宮路幸人税理士が解説します。

不動産投資が相続税対策になるのはなぜ?

現金にかかる相続税より、不動産にかかる相続税のほうが安いから

相続税評価における土地の評価方法には、路線価方式と倍率方式があります。都心部など路線価がついている地域は路線価で求められ、路線価がついていない土地(=倍率地域といいます)は、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて求められます。都内近郊であれば路線価で計算されるのが一般的です。

路線価はおおむね時価の8割程度といわれています。たとえば現金1億円を持っていると相続税評価額はそのまま「1億円」となりますが、その現金1億円で土地を購入した場合、相続税評価額は約8,000万円になるということです。また、この土地を他人に貸し付けている場合などは、貸宅地等としてさらに評価を減額させることが可能です。

建物についても同様で、建物の構造が鉄筋コンクリートか木造かなどにもよりますが、建物の相続税評価額(固定資産税評価額)は購入価額の6割~7割程度になるといわれています。また、他人に貸し付けている場合は「貸家建付地」となり、さらに評価減が可能になります。

他にも、小規模宅地等の特例という制度を活用することができます。本制度では、貸付用事業用宅地を一定の要件を満たして相続した場合、200平米までであれば評価を5割減させることが可能です。

 

実際、相続税対策のために不動産投資を始める人も多い

このように、不動産投資が相続税対策になるという理由は、相続税評価額の計算の違いによるものであることがわかります。資産を現金のまま持つのではなく、不動産に換えて賃貸物件として保有することで、相続税評価額を大きく引き下げることが可能になるのです。

このため近年、サブリース会社等が、土地等の所有者に対して相続対策としてのアパート経営について大々的に営業をかけ、それに乗り不動産投資をする人も多く見受けられました。その手法とは主に、金融機関から借入を行い、アパートを建築するというものです。

(写真=PIXTA)

また、土地の所有者が不動産投資に魅力を感じるその他の要因として、平成27年から相続税の基礎控除が縮小されたことも挙げられるでしょう。法改正されるまで相続税の基礎控除は「5000万円+1000万円×相続人の数」でしたが、改正後は「3000万+600万円×相続人の数」というように、基礎控除額が以前の6割にまで圧縮されることとなりました。東京近郊に戸建て(土地)を所有しているような場合など、相続税の申告対象になる人が大幅に増えたこともあり、相続税対策として不動産投資がさかんに行われるようになったのです。

不動産投資を始めるなら知っておきたいリスク

(写真=PIXTA)

ここまで、なぜ不動産投資が相続税対策として有効なのかを見てきました。ただし不動産投資に取り組むからには、利点ばかりではなくリスクに目を向けることも重要です。不動産投資は基本的に、他者に物件を貸し出すことで賃料収入を得る「不動産賃貸業」です。単に「賃貸物件を購入して終わり」ではありません。資産形成や資産防衛のために始めたはずが、失敗して大損失を生んでしまった…という結果にならないように、最低限知っておくべきリスクを見ていきましょう。

①空室リスク

賃貸物件に空室が生じた場合、その分だけ家賃収入が減ることになります。建物の建築費用を銀行からのローンで賄っている場合は借入の返済が滞ることとなり、最悪、賃貸物件を手放すことにもなりかねません。そのため収益用不動産の購入にあたっては、立地や賃貸住需要等をよく検討し、空室リスクの少ない物件を選ぶことが肝要です。

 

②金利上昇・金利変動リスク

賃貸物件の不動産投資を行う場合、建物の購入代金を借入で賄うことが多く、その返済期間は長期間になることが想定されます。

現在、不動産投資ローンでは変動金利を選ぶ人が多いようです。近年はかつてない超低金利となっているため、支払利息も少額に抑えられてはいるものの、世界的に金利上昇傾向にある中、いつまでも日本だけがこの低金利が続くものとは限りません。将来的には金利上昇のリスクが高いという見方もあります。金利が上がると返済額も多くなるため、注意が必要です。

 

③老朽化リスク

長期間賃貸していると建物が老朽化していき、年々修繕費が高額になっていくことが想定されます。また、一般的には長期間賃貸を行うほど賃料が下がっていく傾向があることにも考慮する必要があります。

 

④家賃滞納リスク

借主の中には、家賃を滞納する人も存在します。賃貸物件が多いと、自分自身で滞納管理をするのは難しくなりがちです。この場合、管理会社に依頼するという選択肢も有効ですが、家賃滞納のリスクが減る分、管理費用の支払いが生じます。ご自身の運用状況に合わせて選択することが大切です。

 

⑤災害リスク

近年、自然災害が毎年のように発生しています。大雨のために浸水したタワーマンションなどが大々的に報じられた年もありました。物件を購入する際には事前にハザードマップなどを入手しておき、災害リスクも含めて検討するとよいでしょう。

 

⑥売却リスク

不動産は、株式のように短期間で資産価値が変動することがない一方で、流動性の低い資産といわれます。株の売買とは異なり、売却したいと思ったとしてもすぐには実現しない場合も多いため、資金化するのに時間がかかるということです。たとえば土地を売却しようとした際は、不動産業者に依頼し、その後買主を探すことになります。また、希望する価格で売却できるとも限らず、値下げ交渉をされるケースもあります。売却まで想定以上に時間を要することもあると心得ておいたほうがよいでしょう。

 

⑦資産減少リスク

建物とは、一般的に年数が経つほど老朽化していくものです。周辺には新しい賃貸物件が建築されれば、資産価値は大きく減少していくことが予想されます。

まとめ

不動産投資の本来の目的は、長期的に賃貸経営を安定的に行い、収益を得ていくことです。上記で説明したように、相続税対策としても確かに有効だからといって、やみくもに手を出すのは要注意です。収益用不動産を購入する際は、まず投資物件として収益性は適当か、長期的に賃貸経営は可能かどうかを十分に検討しなくてはいけません。

一時話題になった「かぼちゃの馬車事件」ではありませんが、不動産投資家の中には投資に不適格な物件を長期ロ-ンで購入してしまい、失敗した人もいます。不動産投資は投資金額も大きいため、相続税対策を第一目的に投資する場合であっても、慎重な検討が欠かせません。専門家等のアドバイスを受けてみるのも一つの手でしょう。

 

執筆:宮路 幸人

多賀谷会計事務所 税理士、CFP
会計事務所における長い勤務経験・豊富な実務経験により、会計処理・税務処理及び経営や税務の相談など、様々な問題に対応。強みのある領域は不動産と相続関連。特に相続問題では、税金面だけでなく、家族が幸せになれるトータルな提案を重視している。宅地建物取引士、マンション管理士等の資格も保有。常にフットワークを軽く、お客様のニーズに応えるのがモットー。離島支援活動も積極的に行っている。

この記事を書いたスタッフ

OWNERS.COM編集部