不動産投資
2022.11.21
「不動産投資」や「不動産投資信託(REIT)」は、サラリーマンにおすすめといわれる投資手法です。どちらも不動産を投資対象とした資産運用方法ですが、後者の不動産投資信託(REIT)は比較的新しい金融商品ということもあり、不動産投資との違いがよくわからないという方も少なくないのではないでしょうか。投資初心者に向けて「不動産投資」と「不動産投資信託(REIT)」の違い、メリット・デメリットについて見ていきます。
この記事の目次
不動産投資とは一般に、マンションやアパート、ビルといった収益用物件を投資家が購入し、他人に貸し出すことで収益を得る投資手法です。
実在する不動産そのものに投資をすることから、後述する「不動産投資信託(REIT)」などと対比して、「実物不動産投資」と呼ぶこともあります。
不動産投資の主な収益源は、入居者から支払われる「家賃」です。入居者を維持し、軌道に乗せることができれば、安定的に収益を生み出していくことが可能です。また、保有中に不動産の資産価値が上がり、購入時よりも高値で売却できた場合には、キャピタルゲイン(購入価格と売却価格の差額)という収益も得られます。
不動産投資には、さまざまなメリットがあります。
●不況に比較的強い
●株式投資やFXなどに比べて「ミドルリスク・ミドルリターン」
●不動産投資信託(REIT)より高利回り
●不動産投資ローンが利用できる
●生命保険の代わりになる etc.
住宅は、人々が生きていく上で欠かせない生活の三大要素の一つです。そのためマンションやアパートの賃貸物件であれば、人々の経済状況が悪化したとしても空室には直結しにくく、需要が大きく減ったり、家賃相場が急落したりする心配もありません(⇒不況に比較的強い)。
サラリーマンにおける投資の代表例といえば、「株式投資」や「FX」でしょう。株式投資やFXの利益は、売買による「売却益」です。基本的に安く買って高く売ることで利益を得ていきます。ただし、売買価格は景気や金利などさまざまな要因を受けて変動します。株式投資やFXで儲けるには、投資家は相場を適宜チェックし、売買のタイミングをうかがわなくてはいけません。
一方、先述したように、不動産投資の主な利益は「家賃収入」です。不動産投資にも空室リスクや物件の老朽化、住民トラブルなどの複数のリスクはあるものの、ほとんどのリスクは投資家個人で対処可能で、トラブル化する前に手を打てるものもあります。株式投資やFXに比べて、不動産投資のリスクはある程度コントロールできるといえるでしょう。
不動産投資は、株式投資やFXのように短期間で大きく儲けられる手法ではありませんが、短期間にして物件の価値が損なわれたり、損失が生じたりする心配もありません。大きな失敗さえしなければ、長期的に安定収入を得られる手堅い投資対象といえます(⇒ミドルリスク・ミドルリターン)。
不動産投資を始めるには、数百万円~数千万円、場合によっては数億円もの資金が必要です。しかし不動産投資ローンで融資を受けるという手もあります(⇒不動産投資ローンがある)。不動産投資ローンを組めれば、自己資金は少額で済みます。少ない資金で大きなリターンを得る「レバレッジ効果」が期待できるでしょう。
ちなみに、不動産投資ローンを借りる場合は、団体信用生命保険に加入するのが一般的です。そのため万が一、ローン返済中に亡くなってしまったとしても、残りのローンはその保険会社が返済するため、遺された家族に負担をかけることはありません。家族にはむしろ不動産と不動産収入を遺せることから、不動産投資は生命保険の代わりにもなるのです。
ただし、不動産投資にはデメリットもあります。
●利回りは物件次第
●不動産投資は「物件選び」が命
●不動産投資信託(REIT)に比べて多額の投資資金が必要(数百万円~)
●換金性/流動性が低い(売却まで時間がかかる) etc.
不動産投資の利回りは、不動産投資信託(REIT)よりも高水準といわれます。ただし物件ごとに大きな差があり、利回りの目安は何パーセントなのか、一概に示すことは困難です。
利回りは、都市か地方か、新築か中古か、区分か一棟か、など、木造か軽量鉄骨造か、鉄筋コンクリート造(RC)か鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC)かなど、さまざまな条件によって変わります。ただし、利回りだけで投資に値する物件かどうかを決めるのは危険です。
たとえば、新築は購入価格が高いため、利回りは低く算出されます。ただし資産価値が高いため不動産投資ローンが組みやすかったり、入居者から好まれやすいため空室が生じにくかったりなどの利点も持っています。一方、古い物件であれば購入価格は低くなるため、表面利回りは高くなります。とはいえ、古ければ古いほど管理費や修繕費もかさみやすくなる点に注意が必要です。
利回りは高いに越したことはありませんが、あくまで購入を考える材料の一つとして見た方が良いでしょう。
また、投資用不動産を売却して現金化するには、時間がかかります(⇒流動性が低い)。いざ不動産投資を始めたあとに「想定より儲からない」「赤字だから手放したい」とならないよう、物件選びは慎重に行いましょう。
不動産投資は、物件を取得したら自然と儲かるわけではありません。購入後も運用・維持管理・入居者募集などの手間がかかることや、毎年の固定資産税や毎月のローン返済、定期的な修繕・予定外の修繕などで出費が発生することも念頭に置き、不動産投資についてしっかりと勉強した上で取り組むことが重要です。
不動産投資信託(REIT)は、投資信託の一種です。
不動産投資信託(REIT)では、不動産は証券化され、証券市場で売買されています。前述の実物不動産投資では投資家が不動産そのものを購入するのに対して、不動産投資信託(REIT)で投資家が購入するのは、不動産投資法人が発行した投資証券です。
また、実物不動産投資では投資家本人が物件を運用し、家賃収入という形で収益を得ていくのに対して、不動産投資信託(REIT)では、投資法人が投資家から集めた資金で不動産投資を行い、投資家は、それにより生じた収益を「配当」として受け取ることで利益を得ていきます。
不動産投資信託(REIT)にも、メリットとデメリットの両面が存在します。
●少額から投資可能
●リスク分散を図りやすい
●プロに運用をまかせられる
●空室リスクや賃料下落リスクの影響を受けない
●流動性が高い
●堅調な利回り
不動産投資信託(REIT)は、実物不動産投資に比べ、少額で投資することが可能です。最低購入金額はファンドごとに異なりますが、中には10万円台から購入できる銘柄もあります。また、少額なので複数の不動産に投資しやすく、リスク分散を図ることが可能です。
プロが運用するという点も、不動産投資信託(REIT)の魅力の一つです。投資家本人には、物件の選定、運用、管理といった手間がかかりません。
不動産投資信託(REIT)は、利回りも堅調といわれます。不動産よりは低いものの、株式投資よりも高い傾向にあります。J-REITポータルサイト「JAPAN-REIT.com」の『J-REIT市況月次レポート 2022年10月』によると、平均分配金利回り(時価総額による加重平均)は3.68%。一方、JPXの統計資料『株式平均利回り(2022年10月)』によると、株式の加重平均利回りは約2~2.4%でした。
また、証券取引所に上場しているため株式と同じように売買できる点(⇒流動性が高い)や、実物不動産投資につきものの空室リスクや賃料下落リスクの影響を受けないという点も、投資初心者にとって安心材料ではないでしょうか。
●実物不動産を所有できるわけではない
●実物不動産投資に比べて利回りが低い
●レバレッジ効果は期待できない
●実物不動産投資に比べて価格変動の幅が大きい
●投資法人の上場廃止リスクや倒産リスクがある
不動産投資信託(REIT)は不動産に投資する方法の一種ではありますが、実物不動産投資のように、不動産そのものを所有できるわけではありません。実物不動産投資では投資家本人が物件を取得・所有するのに対して、不動産投資信託(REIT)における物件の取得・所有者はあくまで不動産投資法人だからです。
また、不動産投資信託(REIT)は原則、自己資金で投資を行います。そのため実物不動産投資にあるようなレバレッジ効果は期待できません。投資額が小さい分リターンも控えめになることや、実物不動産投資のような高額投資ができるかどうかは投資家次第になることは、頭の片隅に入れておいた方が良いでしょう。
他にも、流動性が高い分、値動きの幅も大きいという点が挙げられます。実際、新型コロナ感染症の拡大の影響を受けた2019年末から2020年3月中旬にかけて東証REIT指数は大幅下落し、▲46.6%となりました(野村アセットマネジメント『Jリート・四半期レポート』〔2021年5月10日〕より)。
実物不動産投資に比べて運用コストが低くリスクも抑えやすい手法とはいえ、短期間で大きく下落する恐れもあることから、不動産投資信託(REIT)も「証券を購入したら終わり」「手放しで儲かる」とまでは言い切れません。投資法人が行政処分を受けて業務停止に陥ったり、倒産したり上場を廃止したりなどのリスクもあります。いくらプロに運用をまかせられる手法とはいえ、投資家として情報収集を忘れないことが大切です。
不動産投資も不動産投資信託(REIT)も、不動産を投資対象とした資産運用方法ですが、仕組みやメリット・デメリットは大きく異なります。それぞれの特徴を押さえた上で、どちらの手法が自分に合うのかを判断することをおすすめします。