クラウドファンディング

2026.09.26

不動産クラウドファンディングと現物不動産投資の違い|7項目を図解で比較

不動産クラウドファンディングと現物不動産投資の違い|7項目を図解で比較

「不動産投資を始めてみたいけれど、マンションを買うべきか、1万円から始められる不動産クラウドファンディングにすべきか分からない」。はじめての方が最初に迷うのが、この2つの違いです。

どちらも家賃や売却益から利益を得る点は同じです。ただし、現物不動産投資は自分が物件の持ち主(大家)になるのに対し、不動産クラウドファンディングは事業者の不動産事業にお金を出すという、根本的な違いがあります。この違いが、必要な資金、手間、リスク、税金のすべてに表れます。

この記事では、不動産投資が初めての方に向けて、両者の違いを7つの項目で比較し、自己資金300万円で比べた1年間の収支と、タイプ別の選び方までを図解でまとめました。

この記事の目次

【一覧表】不動産クラウドファンディングと現物不動産投資の違い

まずは全体像です。7つの項目で比べると、次のようになります。

比較項目 不動産クラウドファンディング 現物不動産投資
①資金 1口1万円程度から 数百万円〜(物件価格は数千万円〜数億円)
②ローン 使えない 使える(自己資金の何倍もの物件を買える)
③手間 なし(事業者が行う) あり(管理会社に任せても、判断は自分)
④利回り ファンドごとに想定利回り(年率)が示される。上振れは小さいことが多い 表面利回りの全国平均は区分マンション6.61%。経営次第で増えも減りもする
⑤リスク 元本割れ、事業者の破綻・償還の遅れ 空室、家賃下落、金利上昇、修繕、災害、価格下落
⑥換金性 運用期間は数か月〜数年。原則、途中解約できない 期間の定めなし。売るのは自由だが、買い手探しに数か月かかる
⑦税金・相続 分配金は雑所得(20.42%を源泉徴収)。赤字と相殺できない 家賃は不動産所得。赤字を給与と相殺できる場合がある。相続税の評価が下がりやすい

※現物の利回りは健美家「収益物件 市場動向マンスリーレポート」2026年6月期の全国平均(売出し時点・経費控除前)。不動産クラウドファンディングは主流の匿名組合型の場合。

ひとことで言えば、現物は「手間とリスクを自分で引き受けて、資産を大きく育てる投資」、不動産クラウドファンディングは「少額で、運用をプロに任せる投資」です。どちらが優れているかではなく、目的と使えるお金、かけられる手間によって向き不向きが分かれます。

根本的な違いは「物件を買う」か「事業に出資する」か

7つの違いはすべて、ひとつの違いから生まれています。あなたと物件のあいだに、事業者が入るかどうかです。

現物不動産投資と不動産クラウドファンディングの仕組みを比べた図。現物は、あなたが銀行から融資を受けて物件を買い、管理会社に委託しながら入居者から家賃を受け取る。クラファンは、あなたが事業者に出資し、事業者が物件の取得・管理・売却を行い、家賃や売却益から分配金と元本を受け取る
図1:現物は自分が大家として物件を持つ。不動産クラウドファンディング(匿名組合型)は、大家の仕事をする事業者に出資する

現物不動産投資:自分が大家になって物件を経営する

現物不動産投資は、マンションの1室(区分マンション)やアパート1棟などを自分の名義で買い、入居者に貸して家賃を得る投資です。多くの人は銀行などからローンを借りて購入し、家賃から経費とローンの返済を払った残りが手元に残ります。

物件選び、入居者募集の条件、修繕のタイミング、売るかどうかまで、最終的な判断はすべて自分です。日々の管理は管理会社に委託できますが、その場合も委託料を払い、報告を受けて判断するのはオーナーの役割です。

不動産クラウドファンディング:大家の仕事をする事業者に出資する

不動産クラウドファンディングは、インターネットを通じて多くの投資家から少額ずつお金を集め、事業者がその資金で不動産を取得・運用し、得られた利益を投資家に分配する仕組みです。主流の匿名組合型では、物件の持ち主は事業者で、投資家が持つのは「利益の分配を受ける権利」です。

この事業は不動産特定共同事業法(不特法)にもとづき、国土交通大臣または都道府県知事の許可(小規模な事業者は登録)を受けた事業者が行います。仕組みの全体像は不動産クラウドファンディングの仕組みと始め方で、契約の種類による違いは匿名組合型と任意組合型の違いで詳しく解説しています。

投資家がやることは、現物12・クラファン4

仕組みの違いは、投資家が実際にやることの量にそのまま表れます。買う前から手放すまでの主な作業を並べると、次のとおりです。

投資家がやることを買う前・買うとき・持っている間・手放すときの4段階で比べた図。現物は物件探し、ローン審査、売買契約、管理会社選び、入居者募集や修繕の判断、毎年の確定申告、売却の価格交渉など主な作業が12ある。不動産クラウドファンディングは会員登録、ファンドの確認、申込みと入金、分配金と元本の受け取りの4つで、運用中の管理や売却は事業者が行う
図2:現物は保有しているあいだ「大家の仕事」が続く。不動産クラウドファンディングは、申し込んだあとは運用終了を待つのが基本

現物では、保有中の「入居者募集・更新の判断」「修繕の判断と支払い」「ローン返済」、そして多くの場合は「確定申告」が、売却するまで毎年続きます。不動産クラウドファンディングでは、ファンドを選んで入金したあとは、運用報告を確認しながら運用終了を待つのが基本です。

7つの項目で違いを詳しく比較

ここからは、一覧表の7項目を1つずつ、数字を交えて見ていきます。

①必要な資金:現物は数百万円〜、クラファンは1万円から

現物不動産投資では、物件価格そのものが数千万円単位になります。売り出し中の収益物件の全国平均価格は次のとおりです。

物件タイプ 全国平均価格 平均表面利回り
区分マンション 2,790万円 6.61%
一棟アパート 9,116万円 7.94%
一棟マンション 2億632万円 7.36%

出典:健美家「収益物件 市場動向マンスリーレポート」2026年6月期(全国平均・売出し時点の数値)

ローンを使う場合でも、自己資金はゼロでは済みません。購入時には仲介手数料・登記費用・不動産取得税などの諸費用が、中古物件で物件価格の6〜8%程度(仲介手数料がかからない新築は3〜5%程度)かかるうえ、金融機関や借りる人の属性によっては物件価格の1〜3割程度の頭金を求められるためです。2,000万円の中古物件なら、諸費用だけで120万〜160万円が目安になります。

一方、不動産クラウドファンディングは1口1万円程度から出資できるファンドが多く、諸費用もかかりません(振込手数料などを除く)。10万円を5つのファンドに分ける、といった分散も少額でできます。

現物に必要な資金の考え方は不動産投資はいくらあればできるのか、年収との関係は不動産投資は年収いくらから始められる?で詳しく解説しています。

②ローン:現物は借入で大きな資産を持てるが、金利上昇の影響を受ける

現物不動産投資の最大の特徴は、ローンを使って自己資金の何倍もの物件を持てることです。自己資金300万円でも、借入を組み合わせれば1,000万〜2,000万円台の物件を購入できる場合があります。家賃から返済していけば、ローンの残高が減った分だけ自分の資産が積み上がっていきます。区分マンション向けの投資用ローンでは団体信用生命保険(団信)への加入が条件になっていることが多く、借りた人が亡くなったときに残りの返済が保険で完済される点も、現物ならではのメリットです(一棟アパートのローンでは加入が任意の場合もあります)。

その反面、借入は利益も損失も大きくする働きをします。特に注意したいのが金利です。日本銀行は2026年9月18日の金融政策決定会合で政策金利を1.25%程度へ引き上げました(報道によれば1995年以来、約31年ぶりの水準)。変動金利でローンを組んでいる場合、金利が上がると返済の負担が増え、手元に残るお金が減ります。どれくらい影響するかは、後半のシミュレーションで具体的に計算しています。

不動産クラウドファンディングでは、投資家がローンを使うことはできません。その代わり、損失は最大でも出資した金額までで、借金が残ることはありません。ローンを活用した不動産投資の考え方はローンを活用して不動産投資をするメリットをご覧ください。

③管理の手間:現物は「大家の仕事」が続く、クラファンは事業者任せ

現物の大家には、入居者の募集、家賃の回収、クレーム対応、退去時の原状回復、設備の故障対応、定期的な修繕といった仕事があります。多くのオーナーは管理会社に委託しますが、管理委託料は家賃の5%前後が一般的で、その分収益は減ります。さらに「家賃を下げてでも早く入居者を決めるか」「給湯器をいつ交換するか」といった判断は、委託してもオーナーに回ってきます。

築年数が進むと家賃が下がりやすく、修繕費も増えていきます。家賃がどれくらい下がるのかは、家賃の下落率と抑える対策で試算しています。

不動産クラウドファンディングでは、これらの業務はすべて事業者が行います。投資家に求められるのは、申し込む前にファンドと事業者をよく確認することと、運用中の報告に目を通すことくらいです。本業が忙しい会社員や、不動産の実務に詳しくない方でも続けやすいのはこのためです。

④利回りと収益:表示されている数字の意味が違う

利回りを比べるときは、同じ「〇%」でも中身が違う点に注意が必要です。

現物の物件広告に出ている利回りは、ほぼすべて表面利回り(年間家賃÷物件価格)で、経費が差し引かれていません。管理委託料・管理費・修繕積立金・固定資産税などの経費は、区分マンションで家賃の20〜30%程度かかるのが目安で、実質的な利回りは表示より1〜2ポイントほど下がります。プロの投資家が求める利回りの水準(期待利回り)を見ると、東京・城南地区のワンルームは3.6%です(日本不動産研究所「第54回 不動産投資家調査」2026年4月現在)。利回りの計算方法は不動産投資の利回りとは?計算方法と目安で解説しています。

不動産クラウドファンディングの想定利回りは年率で表示されます。運用期間が6か月なら、実際に受け取る分配金は年率の半分です。たとえば「想定利回り年8%・運用6か月」のファンドに10万円を出資すると、分配金は税引前4,000円、源泉徴収後の手取りは約3,184円になります。

収益の伸びしろにも違いがあります。現物は家賃の値上げや、買ったときより高く売れたときの売却益など、経営次第で収益を大きく伸ばせる可能性があります(もちろん、逆に減る可能性もあります)。不動産クラウドファンディングは、想定利回りを目安に分配される設計のファンドが多く、運用がうまくいっても大きく上振れすることは少ないのが一般的です(売却益の一部を上乗せして配当するファンドもあります)。

家賃収入と売却益の違いはインカムゲインとキャピタルゲインの違い、不動産クラウドファンディングの利回りの水準は不動産クラウドファンディングの利回りとREIT・不動産小口化商品との比較でまとめています。

⑤リスク:現物は「物件のリスク」、クラファンは「事業者のリスク」が中心

どちらも元本は保証されていません。ただし、損をするきっかけが違います。

現物で注意したいのは、物件そのものにかかわるリスクです。

  • 空室・家賃下落:入居者がいない期間は家賃が入らないのに、ローン返済や管理費は払い続ける必要がある
  • 金利上昇:変動金利なら返済の負担が増える
  • 修繕・災害:設備の故障、大規模修繕、地震や水害による損害
  • 価格下落:売るときに買ったときより安くなる。ローン残高より安くしか売れなければ、物件を手放しても借金が残る

最後の点は特に大切です。借入を使う現物では、損失が自己資金を超える可能性があります。現物で起こりやすい失敗は不動産投資で失敗する理由と初心者が陥りがちな事例で紹介しています。

不動産クラウドファンディングで注意したいのは、事業者の運営と財務です。

  • 元本割れ:物件が想定より安くしか売れない、賃料が入らないなどの理由で、出資したお金が減って戻ってくる
  • 償還の遅れ:物件が売れず、運用期間が延長される
  • 事業者の破綻:匿名組合型では物件の持ち主は事業者のため、事業者が破綻すると、投資家は他の債権者と同じ立場で返金を求めることになり、全額は戻らない可能性がある

多くのファンドでは、事業者も一緒に出資し、損失が出たときは事業者の出資分から先に減らす優先劣後方式で投資家の元本を守る工夫をしています。ただし、守られるのは劣後出資の割合までです。仕組みは優先劣後構造の仕組みと注意点、元本割れが起きるケースは不動産クラウドファンディングで元本割れになるケースで解説しています。

事業者のリスクが現実になった例もあります。2026年9月1日、大阪府と東京都は、1口100万円の匿名組合型商品「みんなで大家さん」を運営・販売する都市綜研インベストファンド株式会社と、みんなで大家さん販売株式会社に対し、不動産特定共同事業の許可を取り消す処分を行いました。大阪府は営業者の都市綜研インベストファンドについて、財務基準への不適合(大幅な債務超過)、9商品・計約188億円の償還の遅延、契約前に交付する書面に賃料の支払状況を事実と異なって記載したことなどを、東京都は販売会社のみんなで大家さん販売について、同じ書面に誤認を与える記載をして販売を続けたことなどを理由に挙げています。国や自治体の許可は、事業が安全であることまで保証するものではないことを示す事例です。事業者の見極め方は、後半のチェックポイントでまとめています。

⑥換金性と運用期間:どちらも「すぐ現金にする」のは苦手

不動産クラウドファンディングの運用期間は数か月〜数年で、国土交通省の資料では1年以内のファンドが約7割を占めます(2023年度に運用中の商品)。現物より短期間で結果が出る反面、運用が始まると原則として途中解約できません。事業者によっては出資者の地位を他の投資家に譲る制度がありますが、手数料がかかり、買い手が見つかるとは限りません。

なお、契約成立時の書面を受け取った日から8日間は、書面で契約を解除できるクーリング・オフが法律で定められています(不特法26条)。解約のルールは不動産クラウドファンディングは解約できる?で詳しく解説しています。

現物は運用期間の決まりがなく、売るタイミングは自分で決められます。ただし、買い手を探して価格交渉をし、引き渡すまでに数か月かかるのが普通です。売却時には仲介手数料(400万円を超える物件は売買価格の3%+6万円+消費税が上限)がかかり、所有期間が5年以下の短期譲渡では売却益にかかる税率が高くなります。売り時の考え方は不動産投資の出口戦略とは?をご覧ください。

⑦税金と相続:現物は節税の余地、クラファンは手続きがシンプル

税金の扱いは大きく違います。主な違いを表にまとめました。

項目 不動産クラウドファンディング(匿名組合型) 現物不動産投資
利益の所得区分 雑所得(総合課税) 家賃は不動産所得(総合課税)、売却益は譲渡所得(分離課税)
税金の払い方 分配時に20.42%が源泉徴収される 自分で確定申告して納める
赤字の相殺 できない 家賃収入の赤字は、給与などの所得と相殺(損益通算)できる。ただし土地を買うための借入金の利子にあたる部分は除く
確定申告 会社員で、給与以外の所得が年20万円以下なら所得税は原則不要(住民税の申告は別途必要) 家賃収入から経費を引いた不動産所得が年20万円を超えれば必要。赤字を給与と相殺するにも申告が必要
売却益の税率 分配金として課税(上記) 所有5年超は20.315%、5年以下は39.63%
相続税の評価 契約が終了したときに受け取れる清算金の額で評価。評価額は下がりにくい 土地は路線価、建物は固定資産税評価額がもとになり、貸している分も差し引ける。時価より低くなりやすい

出典:国税庁「No.2250 損益通算」、国税庁 質疑応答事例「匿名組合契約に係る権利の評価」、所得税法、租税特別措置法

現物の家賃収入は、建物の購入代金を耐用年数に応じて毎年経費にできる減価償却などにより、帳簿上の赤字になることがあります。この赤字を給与所得と相殺すると所得税・住民税が下がるため、「不動産投資は節税になる」と言われます。ただし、節税効果は物件や所得によって大きく異なり、節税だけを目的に物件を買うのは危険です。仕組みと注意点は不動産投資にかかる税金とは?と不動産投資が節税になる理由で解説しています。

不動産クラウドファンディングの分配金は雑所得で、赤字と相殺することはできません。その代わり、源泉徴収で納税が済んでいる形になり、多くの会社員は確定申告が不要か、申告しても手続きがシンプルです。申告が必要になる条件は不動産クラウドファンディングで確定申告が必要な人をご覧ください。

相続では、現物の賃貸不動産は時価より低く評価されやすく、相続税対策に使われてきました。ただし、2027年1月1日以後の相続・贈与からは、相続や贈与の前5年以内に取得した貸付用不動産は、時価に近い「通常の取引価額」で評価される方針です。国税庁が2026年9月18日に公表した通達案では、取得価額をもとにした額の80%で評価できる方法が示されています。相続を見据えて現物を買う場合は、この見直しを前提に考える必要があります。詳しくは不動産投資が相続税対策になる理由、不動産小口化商品と2027年税制改正の影響、不動産クラウドファンディングは相続財産としてどう扱われる?で解説しています。

自己資金300万円ならどう違う?1年間の収支シミュレーション

ここまでの違いを、同じ300万円を使った場合の数字で確かめてみます。前提は次のとおりです。

前提 不動産クラウドファンディング 現物不動産投資(中古区分マンション)
投資先 想定利回り年5%のファンド 物件価格1,800万円、表面利回り6.6%
自己資金 300万円 300万円(諸費用126万円+頭金174万円)
借入 なし 1,626万円(金利2.5%・30年・元利均等返済)
年間の収入 分配金15.0万円 家賃118.8万円
年間の支出 なし 運営経費23.8万円(家賃の20%)+ローン返済77.1万円

この条件で、1年間に手元に残るお金(税引前)を計算すると、次のようになります。

自己資金300万円で比べた1年間の手残り(税引前)の横棒グラフ。不動産クラウドファンディング(想定利回り年5%)は15.0万円。現物の区分マンション1,800万円は、金利2.5%で満室なら17.9万円、金利が3.5%に上がると7.4万円、空室が2か月あるとマイナス1.9万円の赤字
図3:基本ケースでは現物のほうが少し多いが、金利や空室の影響で大きく上下する(OWNERS.COM試算)
ケース 1年間の手残り(税引前)
不動産クラファン(想定どおりに運用) 15.0万円
現物:金利2.5%・満室が続く 17.9万円
現物:金利が3.5%に上がる 7.4万円
現物:空室が2か月(金利2.5%) −1.9万円

※所得税・住民税は考慮していません。不動産クラウドファンディングの分配金は20.42%が源泉徴収され、手取りは約11.9万円になります。現物の運営経費は目安(家賃の20〜30%)の下限にあたる20%で計算しているため、実際の手残りはこれより少なくなることがあります。空室ケースは、経費が変わらないと仮定しています。

結果から読み取れるのは、次の3点です。

  1. うまくいけば、現物の手残りはクラファンと同じくらいかやや多い:さらに現物では、手残りとは別にローンの元本が1年で約36.9万円減ります。物件の価格が下がらなければ、その分が自分の資産として積み上がっていきます。
  2. 現物は小さな変化で手残りが大きく動く:金利が1%上がるだけで手残りは半分以下に、2か月の空室で赤字になります。借入で大きな物件を持っている分、影響が増幅されるためです。
  3. 損失の大きさも違う:現物で物件価格が1割下がると、180万円の値下がりです。自己資金300万円の6割にあたります。不動産クラウドファンディングで劣後出資の割合が20%のファンドなら、損失が出資総額の2割に達するまでは事業者の出資分が先に減り、投資家(優先出資者)の元本は守られる設計です(事業者が破綻した場合などは別です)。

つまり、現物はリスクを取って資産を大きく育てる手段、不動産クラウドファンディングは値動きを抑えて安定した分配を狙う手段と整理できます。

どっちが向いている?タイプ別の選び方

不動産クラウドファンディングが向いている人

  • 不動産投資が初めてで、まずは少額で仕組みを体験したい
  • 借金をせずに不動産に投資したい
  • 本業が忙しく、物件の管理や判断に時間をかけられない
  • 1年前後の短い期間で、数万〜数百万円を運用したい
  • 株式や投資信託とは値動きの違う資産を持ちたい

現物不動産投資が向いている人

  • 自己資金が数百万円以上あり、安定した収入があってローンの審査に通りやすい
  • ローンを使って、長期的に大きな資産を作りたい
  • 物件選びや賃貸経営に自分で関わり、工夫して収益を伸ばしたい
  • 空室や修繕、金利上昇などに備えた予備資金を用意できる
  • 家賃収入の赤字との相殺や、相続も含めた長期の資産計画を立てたい

迷ったら「クラファンで学んでから現物」の順番が失敗しにくい

どちらか迷う場合は、まず不動産クラウドファンディングで少額から始めるのがおすすめです。ファンドの募集ページや運用報告には、物件の立地、賃料、想定利回りの根拠、売却の見込みなどが書かれています。複数のファンドを比べるうちに、「どんな物件なら利回りが出るのか」「どんな条件だと売れにくいのか」という、現物を選ぶときにも役立つ目が養われます。

そのうえで、目的と資金がはっきりしたら現物を検討すればよく、両方を併用するのも1つの方法です。たとえば、現物で長期の資産を作りながら、手元の余裕資金を短期のファンドで運用する、といった役割分担ができます。いずれの場合も、生活費や近いうちに使う予定のあるお金は投資に回さないことが前提です。株式などほかの投資先とも比べたい方は、外貨建て保険・株式・不動産クラファンの比較も参考になります。

不動産クラウドファンディングで失敗しないためのチェックポイント5つ

不動産クラウドファンディングのリスクは「事業者」に集中します。申し込む前に、次の5点を確認しましょう。

  1. 許可を自分で確かめる:国土交通省が公表している「不動産特定共同事業法に基づく事業者一覧」で、事業者名と、インターネットで募集できる「電子取引業務」を行う事業者かどうかを確認する(知事許可・登録の事業者も掲載されています)。
  2. 行政処分の履歴を調べる:許可を出した国土交通省や都道府県の報道発表、国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」(宅地建物取引業者としての処分歴)で、過去の処分がないかを確認する。
  3. 劣後出資の割合を見る:事業者がどれだけ自己資金を出し、損失を先にかぶるのか。割合が高いほど、投資家の元本は守られやすくなります。
  4. 想定利回りと売却の根拠を読む:2026年8月21日施行の不特法施行規則の改正で、契約前に想定利回りの根拠や物件価格が妥当である理由を説明することが事業者に義務づけられました(既存の事業者は2026年11月30日まで従来の扱いも可能)。根拠が具体的に書かれているか、周辺相場と比べて高すぎないかを確認します(不特法の施行規則改正で変わったルール)。
  5. 1社・1ファンドに集中させない:複数の事業者・ファンドに分けて出資すれば、1つの事業者でトラブルが起きても影響を抑えられます。

事業者の選び方は不動産クラウドファンディングの仕組みと始め方、リスク全体は不動産クラウドファンディングのリスクと回避方法、詐欺的な勧誘の見分け方は投資詐欺に引っかからないためのポイントでも解説しています。

不動産クラウドファンディングと現物不動産投資に関するよくある質問

初心者は、不動産クラファンと現物のどちらから始めるべきですか?

不動産投資の経験がなく、まとまった自己資金もまだない場合は、不動産クラウドファンディングから始めるほうが失敗しにくいでしょう。1万円程度から始められ、借入もないため、損失は出資額までに限られます。仕組みや物件の見方に慣れてから、現物を検討しても遅くはありません。

不動産クラファンでもローンを使って投資できますか?

投資家がファンドへの出資にローンを使う仕組みはありません。カードローンなどで借りたお金を出資に回すことも、運用中は原則解約できず元本も保証されないため、おすすめできません。不動産クラウドファンディングは余裕資金で行うのが前提です。

不動産クラファンは節税になりますか?

なりません。匿名組合型の分配金は雑所得で、赤字が出ても給与などの所得と相殺できず、減価償却のような仕組みもありません。節税の効果があり得るのは、家賃収入の赤字を損益通算できる現物不動産投資のほうです。ただし、節税だけを目的に現物を買うのは危険です。

現物不動産投資はいくらあれば始められますか?

物件価格とローンの条件によりますが、諸費用(物件価格の6〜8%程度)と頭金を合わせて、中古の区分マンションでも数百万円の自己資金を用意するのが一般的です。これに加えて、空室や修繕に備えた予備資金も必要です。詳しくは不動産投資はいくらあればできるのかをご覧ください。

不動産クラファンと現物を両方やってもいいですか?

問題ありません。長期の資産づくりは現物、短期の余裕資金の運用は不動産クラウドファンディング、というように役割を分けて併用している投資家もいます。ただし、現物のローン返済や修繕に備えた資金まで出資に回さないよう注意してください。

不動産クラファンで元本割れや返金の遅れは起きていますか?

個別のファンドで、償還の遅れや元本割れが起きた例はあります。2026年9月には、不特法にもとづく大規模な出資商品の運営会社が、償還の遅延などを理由に許可を取り消されました。多くのファンドは予定どおり償還されていますが、元本が保証されているわけではありません。事業者の確認と分散を心がけましょう。

REIT(不動産投資信託)とは何が違いますか?

REITは証券取引所に上場していて、株式のように毎日売買でき、NISAの成長投資枠でも購入できます。その反面、市場の需給や金利の影響で価格が日々変動します。不動産クラウドファンディングは日々の値動きがない代わりに、運用中は原則として換金できません。詳しくは不動産クラウドファンディング・REIT・不動産小口化商品の違いと不動産投資とREITの違いで比較しています。

まとめ

現物不動産投資と不動産クラウドファンディングは、どちらも不動産から収益を得る投資ですが、「自分が大家になるか、大家の仕事をする事業者に出資するか」という点で根本的に異なります。

  • 現物不動産投資:数百万円以上の自己資金とローンが必要。借入で大きな資産を持て、経営次第で収益を伸ばせる一方、空室・金利・修繕・価格下落のリスクを自分で負い、損失が自己資金を超えることもある
  • 不動産クラウドファンディング:1万円程度から、管理の手間なしで始められる。損失は出資額まで。ただし運用中は原則解約できず、事業者の運営・財務のリスクがある
  • 選び方:初めてなら少額の不動産クラウドファンディングで仕組みに慣れ、目的と資金が整ってから現物を検討する。事業者の許可・処分歴・劣後出資の割合・利回りの根拠を必ず確認する

まずは募集中のファンドの内容を見て、どんな物件に、どんな条件で投資できるのかを確かめてみてください。

※本記事は2026年9月26日時点の情報にもとづく一般的な解説であり、特定の商品の購入を勧めるものではありません。シミュレーションは一定の前提を置いた試算で、将来の収益を保証するものではありません。税務の取り扱いは個別の事情によって異なります。実際の判断にあたっては、税理士などの専門家にご相談ください。