不特法の施行規則が改正|不動産クラファンのルールが変わります(既存事業者の対応期限は2026年12月1日)

2026年8月21日、不動産特定共同事業法(不特法)の施行規則が改正・公布・施行されました。あわせて「不動産特定共同事業の監督に当たっての留意事項」と「不動産特定共同事業の電子取引業務ガイドライン」も改正されています。

ただし、施行=すべてが8月21日から一斉に適用されるという意味ではありません。原則施行は2026年8月21日ですが、適用時期は規定ごとに異なります。

  • 許可申請書等の提出部数の簡素化:2026年10月1日から適用
  • 利害関係人取引の公正性確保(規則第40条):2026年12月1日以後に締結される契約に係る売却等から適用
  • 契約成立前の説明事項、財産管理報告書、Web掲載事項(規則第43条・第50条・第55条):既存事業者は2026年11月30日まで従前の例による経過措置。新規に許可等を取得する事業者は8月21日から適用

(詳しくは後述のスケジュールをご覧ください)。

今回の改正では、想定利回りの根拠や出資金の使途、対象不動産の価格を妥当と判断した根拠など、投資判断に関わる情報開示が充実します。また、グループ会社等の利害関係人との取引における公正性についても、より明確なルールが設けられました。

不動産クラウドファンディングを利用する投資家にとっては、ファンドを比較・検討する際に確認できる情報が増えることになります。一方、事業者にとっては、契約成立前書面や財産管理報告書、Webサイトの見直しなど、実務面での対応が必要です。

そもそも不動産クラウドファンディングの仕組みから確認したい方は、不動産クラウドファンディングとはもあわせてご覧ください。

本記事では、今回の改正が行われた背景から5つの改正内容、投資家が確認したいポイント、事業者に求められる対応まで詳しく解説します。

この記事でわかること

  • 不特法施行規則が改正された背景と、一般投資家参加者数の推移
  • 今回の改正5項目の具体的な内容(許可申請、利害関係人取引、契約前説明、財産管理報告書、Web掲載事項)
  • 投資家がファンドを確認するときの7つのチェックポイント
  • 既存事業者が2026年12月1日までに準備すべきこと
  • 改正の適用スケジュール

なぜ今、不特法の施行規則が改正されたのか

今回の改正を理解するうえで重要なのが、不動産特定共同事業に参加する一般投資家の急速な増加です。

不動産特定共同事業は1995年の制度創設以降、商品数・募集総額ともに拡大してきました。特に近年は、不動産クラウドファンディングの普及によって、インターネット上でファンドを探し、契約まで行う一般投資家が増えています。

項目 2019年 2023年
一般投資家参加者数(運用中商品) 3.4万人 29.7万人
うちインターネット上の契約を通じた参加者 0.7万人(21.4%) 20万人(67.2%)

※出典:国土交通省「不動産証券化の実態調査」

一般投資家の参加者数は9倍近くに拡大 2019年3.4万人から2023年29.7万人へ、うちインターネット上の契約を通じた参加者の割合は21.4%から67.2%へ

一般投資家の参加者数は2019年の3.4万人から、2023年には29.7万人まで増加しました。さらに、インターネット上の契約を通じた参加者は0.7万人から20万人へ増え、全体に占める割合も21.4%から67.2%まで上昇しています。

こうした市場の変化を受けて開催されたのが、「一般投資家の参加拡大を踏まえた不動産特定共同事業のあり方についての検討会」です。

2025年8月にまとめられた「中間整理」では、今後の方向性として次の4点が示されました。

  • 一般投資家向けの情報開示の充実
  • 対象不動産の売却価格等における公正性の確保
  • 行政による監督の充実
  • 業界団体との連携による自主ルール等の検討

今回の施行規則改正は、この中間整理を踏まえて具体化されたものです。

今回の改正は5項目。具体的に何が変わる?

不特法施行規則改正のポイントは5つ 許可申請書類の部数簡素化 利害関係人との取引の価格公正性 契約前説明事項の追加 財産管理報告書の充実 Web掲載事項の充実

① 許可申請書等の提出部数を4部から1部へ削減

まず、規則第9条・第17条の改正により、許可申請書等の副本の提出部数が4部から1部へ削減されます。

こちらは主に事業者側の手続きに関する改正で、2026年10月1日から適用されます。投資家への直接的な影響は大きくありませんが、事業者にとっては許可申請等に伴う事務負担の軽減につながります。

② グループ会社等との取引(売却等)では価格の公正性を確保

投資家にとって特に重要なのが、規則第40条の改正です。

グループ会社等の利害関係人へ対象不動産を売却等する場合、非利害関係人である不動産鑑定士による鑑定評価額に相当する価格で取引するための措置が必要になります。

なお、規則第40条の「売却等」には、通常の売却のほか、対象不動産を自己の固有財産とする行為や、他の不動産特定共同事業契約に係る財産とする行為も含まれます。

この措置を怠った場合には、「事業参加者の保護に支障を生じるおそれがある状況」に該当し得るとされています。

利害関係人との取引は価格の公正性がカギ ファンドからグループ会社への売却等は第三者の不動産鑑定士による鑑定評価額から概ね1割以上乖離しない取引が必要

なぜ利害関係人との取引が重要なのでしょうか。

例えば、ファンドが保有する不動産について1億円の鑑定評価額が出ていたとします。その不動産を運営会社のグループ会社へ合理的な理由なく大幅に安い価格で売却すれば、本来ファンドが得られた可能性のある売却代金が減り、投資家への分配や償還にも影響する可能性があります。

そのため、今回の改正では「誰と取引するのか」だけではなく、「その価格は第三者から見ても妥当なのか」という点が重視されています。

監督留意事項では具体的な数値基準の例として、鑑定評価額を概ね1割以上上回る、または下回る価格での売却等は「必要な措置」に該当しないことが示されています。

なお、乖離が1割未満であれば当然に適法となるわけではありません。個別の事情に応じて、価格の妥当性を説明できる状態にしておく必要があります。

この規定は、2026年12月1日以後に締結される契約に係る売却等から適用されます。

③ 契約成立前に確認できる情報が大幅に増える

規則第43条の改正では、投資家が出資する前に説明を受ける事項が追加されます。

  • 想定利回り等を表示する場合、それが予想である旨とその根拠
  • 対象不動産の価格を妥当と判断する根拠
  • 利害関係人との取引の場合、取引額を妥当と判断した理由(対象不動産の売却のほか、利害関係人からの取得や賃貸借も対象)
  • 出資金の具体的な使途
  • 開発を伴う場合の許可等の状況、資金計画、工事完了時期
  • 対象不動産が水害ハザードマップ上にある場合の内容
  • 建物状況調査の有効期間

建物状況調査については、RC造・SRC造の共同住宅等の場合、有効期間は2年とされています。

「想定利回り○%」だけではなく、その根拠も重要に

不動産クラウドファンディングでは、ファンドを選ぶ際に想定利回りを重視する投資家も多いでしょう。

しかし、同じ「想定利回り8%」でも、その8%がどのような前提から算出されているのかによって意味は変わります。

例えば、賃料収入を中心に収益を見込んでいるのか、不動産の売却益を見込んでいるのか。売却益を見込む場合には、どのような取引額や取引態様、取引実績などを根拠としているのか。

今回の改正では、想定利回り等を表示する場合、それがあくまで予想であることに加えて、その根拠についても説明することが求められます。

出口戦略も「どこまで進んでいるか」を区別

さらに監督留意事項では、不動産取引の実現可能性について、次の4段階を区別して記載することが明示されています。

契約締結済み
意向表明書のみ
相手方探索中
探索前

「売却を予定している」という説明だけでは、実際にどの程度売却の見通しが立っているのか判断しにくい場合があります。すでに売買契約を締結しているケースと、まだ売却先の探索を始めていないケースでは、取引の実現可能性は同じではありません。

投資家にとっては、想定されている出口戦略について「売却予定かどうか」だけでなく、「現在どの段階なのか」まで確認することが重要になります。

出資金が何に使われるのかも具体化

出資金の使途についても、より具体的な説明が必要になります。今後は次のような項目ごとに、使途の内訳が示されるようになります。

  • 不動産取得代金
  • 工事費用
  • 租税公課
  • アップフロントフィー
  • 積立金

投資家から見れば、「集めた資金が具体的に何に使われるのか」を確認しやすくなるということです。

また、対象不動産の価格について宅建業者による価格意見を根拠とする場合には、不動産流通推進センターの価格査定マニュアル等、合理的な説明がつくものを用いることが求められると監督留意事項で明示されています(マニュアルの使用自体が義務ではなく、同等の合理的根拠があれば代替も可能です)。

④ 財産管理報告書の内容も充実

情報開示の充実は、ファンド募集時だけではありません。規則第50条の改正によって、運用開始後に交付される財産管理報告書にも次の情報が追加されます。

  • 報告対象期間に支出した金銭の額と具体的な使途ごとの内訳
  • すでに着手した工事の概要と完了時期
  • 今後の資金計画
  • 今後実施予定の工事の概要と完了時期
  • 許可等の変更処分の有無と概要

工事については、報告対象期間より前に着工しているものも含まれます。特に開発や工事を伴うファンドでは、募集時に示された計画だけでなく、運用開始後に「工事は予定どおり進んでいるのか」「資金はどのように使われたのか」「今後どのような支出が予定されているのか」といった点も重要です。

今回の改正によって、投資前だけでなく投資後も事業の進捗を確認するための情報が増えることになります。

⑤ 電子取引業務事業者のWebサイト等の掲載情報も充実

規則第55条と電子取引業務ガイドラインの改正では、電子取引業務を行う事業者のWebサイト等に掲載する事項も拡充されます。

  • 利害関係人取引に関する事項
  • 宅地造成・建物建築工事に関する事項
  • 収益・利益の分配に関する事項

不動産クラウドファンディングでは、投資家がWebサイト上でファンドを探し、そのまま契約手続きを行うケースが一般的です。そのため、投資判断に関係する情報をWebサイト等から確認しやすくすることも、今回の改正の重要なポイントとなっています。

投資家は何を確認すればよい?7つのチェックポイント

開示される情報が増えても、それを確認しなければ投資判断には生かせません。今後ファンドを比較する際には、特に次の7項目を確認するとよいでしょう。

  1. 想定利回りの根拠
    どのような収益や取引を前提として算出されているか。
  2. 対象不動産の価格
    取得価格や売却価格を妥当と判断した根拠が示されているか。
  3. 出口戦略の実現可能性
    契約締結済みなのか、意向表明書のみなのか、相手方探索中なのか、探索前なのか。
  4. 利害関係人との取引
    グループ会社等との取引(売却・取得・賃貸借)がある場合、取引額を妥当と判断した理由が示されているか。
  5. 出資金の使途
    不動産取得代金や工事費用など、何にいくら使う計画なのか。
  6. 開発・工事の状況
    必要な許可等の状況、資金計画、工事完了時期はどうなっているか。
  7. 運用開始後の状況
    財産管理報告書を確認し、資金の支出や工事の進捗が当初計画とどうなっているか。

ポイントは、想定利回りなどの「結果となる数字」だけを見るのではなく、その数字がどのような前提や根拠で成り立っているのかを見ることです。改正後の開示内容を踏まえて実際にファンドを比較したい方は、ファンド一覧もあわせてご確認ください。

既存事業者は12月1日に向けて何を準備すればよい?

事業者側では、今回の改正を単なる書面の項目追加として捉えるのではなく、募集から運用、報告までの情報管理全体を確認する必要があります。

例えば、想定利回りを掲載する場合には、その根拠となる情報を整理する必要があります。対象不動産の価格についても、なぜその価格が妥当なのかを説明できる状態にしておくことが求められます。

さらに、募集時に示した資金使途と、運用開始後の実際の支出を財産管理報告書で報告することになるため、募集時点から運用終了まで情報を継続して管理することが重要になります。実務上は、次のような対応を確認しておく必要があります。

  • 契約成立前書面の記載事項・様式の見直し
  • 想定利回り等の根拠資料の整理
  • 対象不動産の価格を妥当と判断する根拠の整理
  • 利害関係人取引を確認する社内体制の整備
  • 出資金の使途を項目別に管理する体制の確認
  • 開発・工事案件の進捗を管理する体制の確認
  • 財産管理報告書の記載事項・作成フローの見直し
  • Webサイト等の掲載事項の確認
  • システム上で必要な情報を登録・表示・出力できるかの確認

特に不動産クラウドファンディングシステムを利用して、ファンド情報の掲載、契約書面の交付、財産管理報告書の作成・交付などを行っている場合には、社内の運用変更だけではなく、システム側での対応が必要かどうかも確認しておく必要があります。

改正スケジュール|適用時期は規定ごとに異なります

日付 主な内容
2026年8月21日 改正規則を公布・施行。「監督に当たっての留意事項」「電子取引業務ガイドライン」も同日改正。この日以降に新規で許可等を取得する事業者は、③④⑤も含めて改正内容がただちに適用される
2026年10月1日 ①許可申請書等の提出部数簡素化を適用
2026年11月30日 施行時点ですでに許可等を受けている既存事業者に対する③④⑤の経過措置が終了
2026年12月1日 ②利害関係人取引の公正性確保を適用(同日以後に締結される契約に係る売却等から)。既存事業者について③④⑤も適用

③契約成立前の説明事項、④財産管理報告書、⑤Webサイト等への掲載事項については、施行時点ですでに許可等を受けている既存事業者に限り、2026年11月30日まで従前の例による経過措置があります。8月21日以降に新規で許可等を取得する事業者には、この経過措置は適用されず、改正内容が最初から適用されます。そのため、既存事業者にとって大きな節目となるのは2026年12月1日です。

施行スケジュール 8月21日公布施行、10月1日①適用、11月30日既存事業者の経過措置終了、12月1日②③④⑤適用

よくある質問(FAQ)

Q1. 不動産特定共同事業法の施行規則はいつ改正されましたか?

A. 2026年8月21日に公布・施行されました。同日付で「不動産特定共同事業の監督に当たっての留意事項」と「不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドライン」も改正されています。ただし、既存の許可事業者にとって実務上の対応期限となるのは2026年12月1日です(新規に許可を取得する事業者には8月21日から適用されます)。

Q2. 今回の改正内容は何ですか?

A. 主に5つの改正があります。①許可申請書等の提出部数を4部から1部に簡素化、②利害関係人(グループ会社等)との不動産の売却等の際に鑑定評価額に相当する価格での取引を求める規定の追加、③契約成立前の説明事項(想定利回りの根拠、出資金の使途等)の追加、④財産管理報告書の記載事項の充実、⑤電子取引業務事業者のウェブサイト等掲載事項の充実、です。

Q3. 改正内容はいつから適用されますか?

A. 適用時期は規定ごとに異なります。①許可申請書等の提出部数簡素化は2026年10月1日から、②利害関係人取引の公正性確保(規則第40条)は2026年12月1日以後に締結される契約に係る売却等から適用されます。③契約成立前の説明事項、④財産管理報告書、⑤Webサイト等の掲載事項については、施行時点ですでに許可等を受けている既存事業者に限り2026年11月30日まで従前の例による経過措置があり、2026年12月1日から適用されます。2026年8月21日以降に新規で許可等を取得する事業者には、この経過措置は適用されません。

Q4. 利害関係人との不動産取引における価格の基準は?

A. 第三者(非利害関係人)の不動産鑑定士による鑑定評価額に相当する価格での売却等が求められます。国土交通省の監督留意事項では、鑑定評価額を概ね1割以上上回る、または下回る価格での売却等は「必要な措置」に該当しないと例示されています。ただし、乖離が1割未満であれば当然に適法となるわけではありません。

Q5. 投資家にとってのメリットは何ですか?

A. 想定利回りの根拠、対象不動産価格の妥当性、出資金の使途の内訳、開発・工事の進捗状況など、投資判断や運用中の確認に役立つ情報の開示が充実します。

Q6. 事業者は何を準備すればよいですか?

A. 契約成立前書面と財産管理報告書のフォーマット見直し、利害関係人取引における鑑定評価取得体制の整備、ウェブサイトの掲載事項の追加などの対応が必要です。公布から対応期限までは実質3ヶ月程度のため、早期の着手が望まれます。

まとめ|利回りだけでなく「その根拠」を確認することがより重要に

今回の不特法施行規則改正は、不動産クラウドファンディングをはじめとする不動産特定共同事業への一般投資家の参加が拡大するなかで、情報開示と取引の公正性を高める内容となっています。

特に大きいのは、想定利回り、不動産価格、資金使途、工事計画、出口戦略などについて、数字や予定だけではなく、その根拠や現在の状況まで投資家が確認しやすくなる点です。

投資家にとっては、ファンドを想定利回りだけで比較するのではなく、「なぜその利回りになるのか」「対象不動産の価格はなぜ妥当なのか」「売却の見通しはどこまで具体化しているのか」といった点まで確認することが、これまで以上に重要になります。一方、事業者には、募集時の説明だけでなく、運用中の資金管理や工事の進捗、財産管理報告まで含めた継続的な情報管理が求められます。

既存事業者の対応期限となる2026年12月1日に向けて、契約書面やWebサイトの変更だけでなく、社内の管理体制やシステムを含め、必要な対応を整理しておくことが重要です。改正後のルールを踏まえて、実際のファンドを比較検討したい方は、以下から一覧をご覧ください。

▶ 不動産クラウドファンディングのファンド一覧を見る


免責事項
本記事は2026年9月2日時点で公表されている国土交通省の資料に基づき作成しています。制度の詳細や個別の商品への適用については、必ず各事業者の公式サイトおよび国土交通省の発表資料をご確認ください。不動産クラウドファンディングは元本や利回りを保証する投資ではなく、価格変動や運用状況によって損失が生じる可能性があります。投資に関する最終判断はご自身の責任で行ってください。

出典:国土交通省「不動産特定共同事業法施行規則の一部を改正する命令について(概要)」「一般投資家の参加拡大を踏まえた不動産特定共同事業のあり方についての中間整理(概要)」「『不動産特定共同事業の監督に当たっての留意事項について』の一部改正について(概要)」「『不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドライン』の一部改正について(概要)」