資産運用
2025.12.04

「最近、ニュースでインフレってよく聞くけど、私たちの生活にどう関係あるの?」「デフレとインフレ、どっちが良いの?」「投資をする上で、何を知っておけばいいんだろう?」
このような疑問をお持ちの投資初心者の方は多いのではないでしょうか。
今回2本立てのシリーズで、物価変動の基本について解説していきたいと思います。
Vol.1では、経済の基本である「デフレ」と「インフレ」の違いから、私たちの生活や大切な資産を守るための投資に与える影響まで解説していきます。
この記事の目次
まず、経済の水準となる「物価」を基準に、デフレとインフレの基本的な意味を理解しましょう。
インフレとは、「インフレーション」の略で、モノやサービスの値段(物価)が、全体的に継続して上がり続ける状態を指します。「物価が上がる」ということは、裏を返せば「お金の価値が下がる」ということです。
例えば、昨日まで100円で買えていたリンゴが、今日には110円に値上がりしたとします。この場合、同じリンゴを買うのに、昨日より10円多くのお金が必要になります。これは、100円というお金で買えるモノの量が減った、つまり「お金の価値が下がった」ことを意味します。

デフレとは、「デフレーション」の略で、インフレとは正反対に、モノやサービスの値段(物価)が、全体的に継続して下がり続ける状態を指します。物価が下がるということは、インフレとは逆に「お金の価値が上がる」ということです。
例えば、昨日まで100円だったリンゴが、今日は90円で買えるようになったとします。同じ100円でリンゴ1個と、さらに10円のお釣りがくるわけですから、買えるモノの量が増え、「お金の価値が上がった」ことになります。
「モノが安く買えるなら、デフレのほうが良いのでは?」と感じるかもしれません。しかし、経済全体で見ると、デフレは深刻な問題を引き起こす可能性があります。その理由は後ほど詳しく解説します。
| 項目 | インフレ (お金の価値が下がる) | デフレ (お金の価値が上がる) |
|---|---|---|
| 物価 | 継続的に上昇する | 継続的に下落する |
| お金の価値 | 下がる | 上がる |
| 景気 | 良い傾向(良いインフレの場合) | 悪い傾向 |
| 企業の業績 | 上がりやすい | 下がりやすい |
| 給料 | 上がりやすい | 下がりやすい |
デフレやインフレは、なぜ発生するのでしょうか。その原因は、経済における「需要」と「供給」のバランスによって説明できます。
インフレは主に2つのタイプに分けられます。

デフレの主な原因は、インフレとは逆の現象です。
経済の体温であるデフレとインフレは、私たちの日常生活にどのような影響を与えるのでしょうか。メリットとデメリットに分けて見ていきましょう。
| タイプ | 影響 | 説明 |
|---|---|---|
| メリット | 給料が上がりやすい | 企業の売上や利益が増加傾向にあるため、賃金も上昇しやすくなります。 |
| 借金の実質的な負担が軽くなる | 例えば3,000万円の住宅ローンでも、インフレでお金の価値が下がると返済額の負担は相対的に軽くなります。毎月の返済額は同じでも、インフレが進むほど家計への負担感は減っていきます。 | |
| デメリット | 預貯金の価値が目減りする | 物価が年2%上がる(日本銀行の物価安定の目標も年2%)と、100万円の購買力はおおむね約98.0万円になります。現在の低金利では、預けているだけで資産の実質価値は減っていきます。 |
| 生活が苦しくなる | 物価の上昇ペースに、給料の上がり方が追いつかない場合、買えるモノが減り、生活は苦しくなります。 |
| タイプ | 影響 | 説明 |
|---|---|---|
| メリット | モノが安く買える | 同じ金額でより多くのモノやサービスを買えるため、消費者にとっては短期的に嬉しい状況といえます。 |
| 預貯金の価値が上がる | インフレとは逆に、お金の価値が上がるため、何もしなくても持っている現金の価値は実質的に増えていきます。 | |
| デメリット | 給料が下がりやすい | 企業の業績が悪化しやすく、昇給が見込めなかったり、ボーナスカットや減給、最悪の場合は失業のリスクも高まります。 |
| 景気の悪化 | 消費が冷え込み、企業も設備投資を控えるため、社会全体の活気が失われていきます。 |
ここまで、デフレとインフレの基本的な知識と生活への影響を解説してきました。ここからは、投資家として最も知りたい「投資への影響」について、具体的に見ていきましょう。経済状況によって、有利になる資産・不利になる資産は大きく異なります。
インフレは「モノの価値が上がり、お金の価値が下がる」時代です。したがって、「お金」そのものや、お金に近い性質を持つ資産は不利になり、実体のある「モノ」に関連する資産が有利になります。
デフレは「モノの価値が下がり、お金の価値が上がる」時代です。したがって、インフレ時とは逆に「お金」そのものや、それに近い資産が有利になります。

| 物価動向 | 種類 | 内容 |
|---|---|---|
| インフレに強い | 株式 | インフレ時には企業が価格を引き上げやすく、利益や株価が上がる傾向がありますが、予想外の高インフレは株式全体の実質リターンを押し下げる傾向があります。なかでも、食品やエネルギーなど生活必需品を扱う企業はインフレに強いとされています。 |
| 不動産(REITを含む) | 不動産は長期的にはインフレヘッジ特性が確認されやすい一方、短期の乱高下局面ではヘッジ効果が弱まることがあります。REITは分配金と金利動向の影響も受けます。 | |
| 金など貴金属 | 金はインフレや金融不確実性に対する分散先として機能しやすい一方、常に完全なインフレヘッジではないため、ポートフォリオの一部としての活用が一般的です。 | |
| デフレに強い | 円預金 | 物価が下がり、現金の価値(購買力)が上がるため、リスクを取って投資するより現金を保有する方が有利なこともあります。 |
| 国内債券 | 企業業績の悪化でリスク資産が避けられ、信用度の高い日本国債などに資金が流れやすくなります。 |
今回は、デフレとインフレの違いから、私たちの生活と投資に与える影響までを解説しました。
経済が今後どちらの方向に進むかを正確に予測することは専門家でも困難です。だからこそ、「どちらの時代が来ても対応できるように備えること」が重要になります。
今後どんな時代が来ても慌てないように、分散投資でリスクを分け、安定した資産形成を目指しましょう。