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不動産投資

2022.11.21

【不動産投資の確定申告】申告が必要な人とは?税理士が解説

【不動産投資の確定申告】申告が必要な人とは?税理士が解説

本格的に賃貸経営をしている人、サラリ-マンの副業として行っている人など、不動産投資家には様々なケ-スがあるでしょう。特に副業で賃貸経営をされている場合、税務についてわからない人が多いのではないでしょうか。不動産投資の確定申告について、宮路幸人税理士が解説します。

不動産投資で確定申告が必要な人とは?

サラリ-マンで給与所得がある人において、申告が必要となるのは、家賃収入から必要経費(固定資産税・修繕費等)を差し引いた金額(不動産所得)が20万円超である場合です。

専業で賃貸経営をしている人は、不動産所得から所得控除を差し引いて所得がある場合に、確定申告が必要となります。

 

申告を必要とする人が申告しなかった場合、無申告加算税、延滞税、悪質な場合は重加算税など様々なペナルティが課せられる場合がありますので、申告はきちんとしておきましょう。

税務署への届け出等はどうする?

不動産賃貸業を開始しようとする場合は、事業開始の日から1ヵ月以内に、税務署へ事業開始届を提出する必要があります(=白色申告)。また青色申告を選択する場合には、事業開始の日から2ヵ月以内に提出する必要があります。

「青色申告」は節税対策になる

青色申告では、複式簿記で帳簿を記帳した場合、事業的規模(5棟10室)であるような場合、e-taxで申告を行えば最大65万円の控除が受けられます。

 

また青色申告の他のメリットとしては、赤字の場合3年間損失が繰り越せる、専従者(家族)への給与を経費にできる、30万円以内の固定資産であれば経費で落とせるなど、税務上の様々な特典があります。

 

一方、白色申告は青色申告より記帳方法が簡単であるため、このような特典はありません。税理士としては青色申告の届出書の提出をおすすめしております。

(写真=PIXTA)

「不動産所得」はいくら?

では、次に不動産所得の求め方についてです。

 

不動産所得は、【①賃貸収入-②必要経費】で求められます。

 

①賃貸収入に該当するもの

賃料、礼金、権利金、更新料、名義書換料や返還を要しなくなった敷金など

 

②必要経費に該当するもの

ⅰ.減価償却費…賃貸している建物・建物付属設備・構築物などの償却費

ⅱ.地代家賃…賃貸している建物の地代家賃などがある場合に該当

ⅲ.借入金利子…賃貸している建物等を取得するための借入金の利子など(借入金返済元本は経費になりませんので、ご注意ください)

ⅳ.租税公課…賃貸している土地、建物等についての、固定資産税、事業税、消費税、不動産取得税、登録免許税、印紙税など

ⅴ.損害保険料…賃貸している建物等についての火災保険料など

ⅵ.修繕費…賃貸している建物等についての修繕のための費用など

Ⅶ.専従者給与…従事している専従者(配偶者・子など)に対して支払う給与。届出書を提出し、その金額が適正額である場合、経費となる

Ⅷ.管理費…賃貸している建物等の清掃や設備の保守費用など、管理会社に支払う管理費など

Ⅸ.支払手数料…不動産会社に対する仲介手数料などは経費となる

Ⅹ.雑費…業務用の費用で他の経費にあてはまらないもの

不動産所得から差し引く「所得控除」とは?

所得税は、合計所得(不動産所得を含む)から所得控除を差し引いて求めます。

 

所得控除は以下のようなものがあります。

 

●社会保険料控除…公的な健康保険料、介護保険料、国民年金保険料など

●小規模企業共済等掛金…小規模企業共済掛金、iDeCo掛金など

●生命保険料控除…私的な生命保険料、介護保険料、個人年金保険料など

●地震保険料控除…地震保険料、旧長期損害保険料

●寡婦・ひとり親控除…寡婦または一人親である場合

●勤労学生控除…本人が勤労学生に該当する場合

●障害者控除…本人か配偶者又は扶養親族が該当する場合

●配偶者控除…本人または配偶者の所得が一定以下である場合

●扶養親族…控除対象扶養親族がいる場合

●基礎控除…本人の合計所得が2,500万円以下である場合

●雑損控除…災害・盗難・横領など災害等にあった場合

●医療費控除…医療費が多額にかかった場合

●寄付金控除…国や日本赤十字、ふるさと納税をした場合

「所得税」の求め方

不動産所得から所得控除を差し引いた金額に対し、以下の速算表にて所得税を求めます。

 

【不動産投資の確定申告】申告が必要な人とは?税理士が解説/速算表:所得税の求め方
速算表:所得税の求め方

 

計算例)不動産所得8,750,000円-所得控除1,230,000円=課税所得7,520,000円の場合

速算表により、所得税は【7,520,000円×23%-636,000円=1,093,600円】となります。

確定申告のポイント

不動産投資にかかる確定申告の流れは上記のとおりです。ポイントとしては、

 

●未収家賃・前受家賃をきちんと確認し、家賃収入を正しく計上すること

●必要経費に漏れがないように、領収書を保管し、帳簿記帳を適時に行うこと

●正しく記帳し、青色申告で申告をすること、専従者給与を払う場合には届出書を期間内に提出すること

●所得が高額になる場合、小規模企業共済(個人事業主の退職金制度)、iDeCo掛金などへの加入も検討し、節税策がないか確認すること

 

などです。また、正しく記帳することは、申告のためというだけではなく、自らの経営状況を正しく把握し、経営に役立てるという意味でも非常に重要となります。

まとめ

いかがでしたか? 不動産投資にかかる税金としては、購入時にかかる不動産取得税、登録免許税、印紙税など、不動産を賃貸しているときは固定資産税など、また賃貸物件を売却したときは譲渡所得税がかかります。今回は賃貸しているときにかかる所得税の確定申告について説明しました。簡単な概要ではありましたが、参考になれば幸いです。

 

執筆:宮路 幸人

多賀谷会計事務所 税理士、CFP
会計事務所における長い勤務経験・豊富な実務経験により、会計処理・税務処理及び経営や税務の相談など、様々な問題に対応。強みのある領域は不動産と相続関連。特に相続問題では、税金面だけでなく、家族が幸せになれるトータルな提案を重視している。宅地建物取引士、マンション管理士等の資格も保有。常にフットワークを軽く、お客様のニーズに応えるのがモットー。離島支援活動も積極的に行っている。

この記事を書いたスタッフ

OWNERS.COM編集部