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2024.09.10

iDeCo(個人型確定拠出年金)とは?仕組みや特徴をCFPが解説

iDeCo(個人型確定拠出年金)とは?仕組みや特徴をCFPが解説

iDeCo(イデコ)とは、国民年金や厚生年金といった公的年金に加えて、自主的に加入することができる私的年金制度のひとつである「iDeCo(イデコ)」。よく耳にするけれど、詳しいことはよく分からない、という人も多いようです。そこで、CFPの伊藤貴徳氏が、iDeCoの基本を解説します。

iDeCoとは、どのような制度なのか?

iDeCoは、自分の将来のために自分で準備する年金制度です。イメージとしては、毎月、決まった額のお金(掛け金)を貯金箱に入れていくのと似ていますが、この制度を使うと、国からの優遇制度がプラスされるので、さらに効率的に資産形成をすることができます。

 

始め方は、まず金融機関でiDeCo口座を開設。毎月掛け金を投資先へ預ける事でiDeCoでの運用がスタートします。その運用成績に応じた年金を受け取ることができるという仕組みです。

 

日本には現在、国民年金・厚生年金といった公的年金制度がありますが、iDeCoは公的年金に加えて将来のための年金を準備したいという人へ向けた年金制度です。2022年5月の改正により、65歳未満であれば加入できるようになりました。また加入する人の区分に応じて掛け金の上限が異なるので、検討の際は注意が必要です。

 

【iDeCo加入者の区分による掛け金の上限】

●自営業(第一号被保険者):月額68,000円

●サラリーマンや公務員(第二号被保険者):月額12,000〜23,000円

〔※勤務先の制度により変わります〕

●専業主婦(夫):月額23,000円

iDeCoの仕組み

金融機関でiDeCo口座を開設し「掛け金の配分」を行います。掛け金の配分とは、投資信託を自分で選び掛け金をかけていくこと。投資信託にはいろいろな種類がありますが、大きく分けると下記の通りです。

 

●株式・債券・不動産などを取り入れた「元本変動型」

●元本と金利が確保されている「元本確保型」

 

このように、自分の好みに合わせた投資信託を選んで掛け金を配分し、運用していくことで運用成果に応じて将来受けとれる金額が変動します。どの金融機関も、30本〜ほどの投資信託を扱っており、「元本変動型」と「元本確保型」をラインナップに入れなければいけないというルールがあるので、金融機関によって選べる商品に大きく偏りがあるということはありません。とはいえ、選ぶ投資信託によって将来の運用成果は変わるので、じっくり検討することが重要です。

iDeCoのメリットとデメリット

iDeCoには「貯める」「増やす」「受け取る」といったそれぞれのタイミングでメリットがあります。

 

「貯める」:掛け金は所得控除になる

iDeCoは「小規模企業共済等掛金控除」という所得控除の対象となります。簡単にいうと、iDeCoに払った掛け金の分、収入を下げてくれる働きをしてくれます。そして下がった収入分の税金が戻ってきます。

 

iDeCo公式サイトの「かんたん税制優遇シミュレーション」の試算によると、年収500万円の人が30歳でiDeCoに加入し、毎月23,000円を掛けた場合、所得税と住民税の軽減額は55,200円となります。つまり、毎月23,000円(年間276,000円)の掛け金で55,200円の節税効果が期待できるのです。

 

その還付率は驚きの20%! これだけでも銀行に預けるより効果的かもしれません。還付の方法は、年末になると「小規模企業共済等掛金控除証明書」という書類が届くので、その書類を年末に提出する「給与所得者の保険料控除申告書」とともに勤務先に提出すればOKです。自営業であれば、確定申告の際に控除の欄へ入力をしましょう。

 

「増やす」:運用益は非課税

iDeCoで仮に運用がうまくいき利益が出た際、利益に対して税金はかかりません。証券会社で証券口座を開設して投資をしたパターンと比べてみましょう。

 

【証券口座の場合】

100万円の利益が出た→利益に対して20.315%の税金=およそ20万円の税金がかかる

 

【iDeCoの場合】

100万円の利益が出た→利益に対して税金はかからない

 

税金の金額は、利益が大きくなればなるほど多くなります。iDeCoで運用をすると、その分有利に資産運用をすることができます。

 

「受け取る」:まとめて受け取りは退職所得控除、分割は公的年金等控除の対象

前述の通り、iDeCoは利益に対して税金がかかりません。ただ、将来受け取る際のお金そのものについては税金がかかる場合があります。そんな時も税金が優遇される制度があります。

 

メリットの多いiDeCoですが、デメリットも存在します。まず掛け金は60歳まで引き出すことができません。中途引き出しに強い制約をかけることで、将来の資産準備を確かなものにしているのです。また選ぶ投資信託によっては大きな利益を見込める一方で、掛け金を割り込む可能性もあります。元本変動型の投資信託は価格変動リスクについてしっかりと理解しておく必要があります。

iDeCoが向いている人、向いていない人

iDeCoの特徴、メリット・デメリットを踏まえ、iDeCoが向いている人、向いていない人についてみていきましょう

 

iDeCoに向いている人

・長期的な資産形成を行いたいと考えている方

・節税効果を最大限に活用していきたい人

・ある程度余裕を持った資産形成ができる人

 

長期で資産形成の計画を立てている人にとって、iDeCoは適しています。資産運用は運用期間が長くなるほど有利に働きます。同時に毎年の節税効果も期待できます。一方、中途引き出しには強い制約があるので、iDeCoで運用しているお金には運用のゴールまで一切手をつけなくても大丈夫という、ある程度の資産的な余裕も重要です。

  

iDeCoに向いていない人

・60歳までに運用した資金を使いたいと考えている人(教育資金準備などでiDeCoを活用はNG)

・何かあった時に、iDeCoから貯蓄を切り崩そうと考えている人

 

老後より手前のための資産形成でiDeCoを活用するのはお勧めしません。前述の通り、60歳前までの中途引き出しはできないからです。同様の理由で、教育資金や住宅購入費用のためにiDeCoの活用は難しいでしょう。

 

iDeCoは、うまく活用することができれば、資産形成をバックアップしてくれる心強い制度です。ただし、一定のリスクがあり、またiDeCoの活用が不向きの場合もあります。しっかりと内容を把握し、自分の目的に応じた資産運用手段となるか検討することが大切です。

 

執筆者:伊藤 貴徳

CFP®︎ CERTIFIED FINANCIAL PLANNER、

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅地建物取引士、証券外務員1種

業界14年目のファイナンシャルプランナー。証券・不動産・保険業界を経験し、人生の3大資金と呼ばれる「教育・住宅・老後」のお金についての相談を得意とする。これまで2,000世帯以上のご相談を担当し、特にライフプラン作成、資産形成、保険の見直し等に強みを持つ。

この記事を書いたスタッフ

OWNERS.COM編集部