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資産運用

2024.06.21

2024年1月からスタートした「新NISA」だが…そもそもどんな制度なのか?メリット&デメリット【CFPの解説】

2024年1月からスタートした「新NISA」だが…そもそもどんな制度なのか?メリット&デメリット【CFPの解説】

資産形成におすすめの税制優遇制度「NISA」が改定となり、2024年1月から「新NISA」としてスタートしました。これを機に「NISA、始めたんだ」という声もたくさん聞かれたものの「完全に出遅れた…」という人も。そこで、いま一度「NISA」の基本を振り返ってみましょう。

NISAの制度概要と、新NISAでの変更点

NISAは少額からの投資を行う人のために2014年1月にスタートした「少額投資非課税制度」。通常、投資で得られた売却益や配当金などの利益には20.315%の税金が課されますが、NISA口座を活用することで、一定枠内は非課税になります。

 

2023年までは「一般NISA」と「つみたてNISA」の2種類に分かれていましたが、2024年に制度を改定。「成長投資枠」と「つみたて投資枠」が設けられ、「一般NISA」と「つみたてNISA」が一本化されるなど変更がありました。これまでのNISA制度に対して、改定された制度によるNISAを「新NISA」と呼びます。

 

では改めて、NISA制度の変更点をみていきましょう。

 

非課税期間が恒久化となった

旧NISAでは、売却にかかる非課税期間は最大20年間とされていました。つまり、20年以上保有した後に売却をした場合、利益に税金がかかることとなっていたのです。新NISAでは、この非課税期間が無期限となりました。

 

つみたて投資と一括投資が併用できる

これまでは、つみたてNISA(積立)と一般NISA(一括)のどちらかを選ばなければなりませんでした。新NISAにより、つみたてNISAは「つみたて投資枠」へ、一般NISAは「成長投資枠」へ引き継がれる事になりました。これにより、たとえば投資信託でつみたて投資を行いながら、株式などの一括投資を同時に行うことも可能になりました。

 

投資枠の拡大と再利用

これまでは、つみたてNISAの年間投資上限額は40万円、一般NISAの年間投資上限額は120万円でした。新NISAにより、年間投資上限額は「つみたて投資枠」では年間120万円、「成長投資枠」は240万円へと増えました。

 

さらに、非課税で保有できる投資額の上限が1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円)となりました。これまで旧NISAで運用していた資産は別枠で管理される事になるので、旧NISAを利用していた人も新たに上限1,800万円の投資枠を得られる事になります。

 

また、この非課税枠は再度利用することもできます。たとえば非課税投資枠の1,800万円分をすでに投資に充てているとします。このうち投資した1,000万円分を売却したとします。

 

すると、翌年から新たに1,000万円分の投資枠が復活し、再度投資が可能という事になります。

「新NISA」2つのメリット

具体的に新NISAを活用するとどんなメリットがあるのか? という疑問にお答えします。

 

1.売却にかかる利益が非課税になる

新NISA最大のメリットと言っても過言ではありません。たとえば新NISA口座を使わず、証券会社で証券口座を開設したパターンと比較してみます。

 

■証券口座(特定口座)で株式・投資信託を売買して100万円の利益が出た場合

100万円×20.315%=およそ20万円の税金がかかる

 

■新NISA口座で同様に100万円の利益が出た場合

100万円に対して税金はかからない

 

上記の場合、通常の口座では20万円の税金がかかりますが、新NISA口座で投資をしていれば利益をそのまま受け取ることができます。

 

2.厳選された投資信託の中から選べる

新NISAのうち、つみたて投資枠を使って投資をする際は「投資信託」という商品を自ら選んで投資をする事になります。そんな投資信託。現在日本にどれくらいあると思いますか? その数は、およそ6,000本! これだけ多いと、どんな投資信託が良いか判断するのはとても難しいことです。

 

新NISAのつみたて投資枠では、金融庁が厳選した投資信託の中から選ぶことができます。

 

2024年2月29日時点で282本の投資信託がつみたて投資枠に採用されています。金融庁が認めた投資信託の中から選ぶことができるというのは安心感があります(もちろん値上がりが約束されているという意味ではないので注意しましょう)。

「新NISA」2つのデメリット

新NISAにはメリットがある一方で、デメリットとされるものもあります。

 

1.元本保証ではない

新NISAで選ぶ商品は、基本的に元本が保証されているものではありません。そのため、経済の悪化や相場の下落時には支払った投資額を割り込む可能性もあります。相場の下落時などに投資額を割り込んだ状態で売却をすると、預けた金額よりも減ってしまうということもある事を覚えておきましょう。

 

2.自分で投資信託を選ばなければいけない

先述の通り、新NISAで選ぶことができる投資信託は282本あります(2024年2月29日現在)。新NISA口座を開設しても、自分で商品を選んで購入しなければ投資は始まりません。「自分に合った投資信託はどれかを探すのは難しい」「実際調べてもよくわからない」という声も聞きます。厳選された投資信託から選べることが、かえってデメリットと感じる人もいるようです。

新NISAのおすすめの運用方法

どんな投資をしたらいいかわからない…そんな時は、まずインデックスファンドを検討してみるのがおすすめです。インデックスファンドとは、日経平均株価、S&P500といった指数に価格が連動するように運用される投資信託です。この指数を参考にして運用するための目安の事をベンチマークといいます。

 

つまり、日経平均株価をベンチマークとするインデックスファンドであれば日経平均株価の値動きによって値段が変わり、NYダウをベンチマークとするインデックスファンドであればNYダウの値動きによって値段が変わります。言い換えれば、インデックスファンドの種類を選ぶ事によって、間接的にその国の成長とともに資産を成長させるということができるのです。

 

・日経平均株価、TOPIXをベンチマーク→日本の成長を反映

・NYダウ、S&P500をベンチマーク→アメリカの成長を反映

・MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス→全世界の成長を反映

 

また、つみたて投資枠も成長投資枠も、長期で投資を行うのが大前提です。なぜなら長く続ければ続けるほど、運用効果が大きくなるからです。投資信託を例にとると、毎年5%の運用益を出している投資信託があるとします。

 

運用期間10年と30年で比較してみます。

 

毎月3万円の積立投資を10年行い、毎年5%の運用益を出し続けた場合

4,649,762円

預けた金額は3,600,000円

差額(利益)1,649,762円

 

毎月3万円の積立投資を30年行い、毎年5%の運用益を出し続けた場合

24,560,935円

預けた金額は10,800,000円

差額(利益)13,760,935円

 

※運用にかかる費用等は考慮していません

 

ご覧の通り、投資は長く続ければ続けるほど投資効果は大きくなります。この利息に利息がつく状態を「複利」といいます。複利効果は時間をかければかけるほど高くなります。投資はじっくり時間をかけて、コツコツ増やしていくという気持ちで望むことが大切です。

 

これまでのポイントを参考にしながら、将来のためのお金の目標を達成できるような資産形成ができるようにしていきましょう。

 

執筆者:伊藤 貴徳

CFP®︎ CERTIFIED FINANCIAL PLANNER、

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅地建物取引士、証券外務員1種

業界14年目のファイナンシャルプランナー。証券・不動産・保険業界を経験し、人生の3大資金と呼ばれる「教育・住宅・老後」のお金についての相談を得意とする。これまで2,000世帯以上のご相談を担当し、特にライフプラン作成、資産形成、保険の見直し等に強みを持つ。

この記事を書いたスタッフ

OWNERS.COM編集部