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資産運用

2024.06.20

マイナス金利解除で「金利のある時代」到来!資産形成や投資への影響は?

マイナス金利解除で「金利のある時代」到来!資産形成や投資への影響は?

日銀は金融政策決定会合で、「マイナス金利政策」を解除し金利を引き上げることを決めました。日銀による利上げはおよそ17年ぶり。世界的にも異例の日本の金融政策は、正常化に向けて大きく舵を切ったことになります。それにより、わたしたちの資産形成、投資手法にどのような影響を与えるか、考えていきましょう。

昨今の「金利動向」と「マイナス金利解除」

日本の預金金利は、長くゼロに近い水準で推移していましたが、今年に入り上昇の兆しが見え始めています。2023年末時点での主要都市銀行の普通預金金利は0.001%という水準でしたが、2024年3月には各社金利を引き上げ、0.02%となりました。この引き上げによる金利の上昇率は20倍になります。

 

日本銀行「時系列統計データ検索サイト」のデータによると、銀行の預金金利が1%を割り込み、0%台となったのが1994年頃ですので、私たちはおよそ30年間、0%台の金利の時代を過ごしてきていることになります。

 

言い換えれば、「お金を預けても増えない時代」だったのです。

 

しかし、先述の通り今年の3月に各銀行は17年ぶりに金利を引き上げました。理由としては、日銀によるマイナス金利を解除したことがあげられます。

 

そもそも「マイナス金利」とは、どのようなことをいうのでしょうか?

 

金融機関は、もしものことがあった時のために、一定額を日本銀行に預けることが義務付けられています。マイナス金利とは、金融機関が一定額を超えて日本銀行にお金を預けた際に発生する金利をマイナスにすることを言い、2016年2月に開始となりました。ここでいう金利とは、政策金利のことを指し、私たちが銀行に預ける際の金利のことではありません。つまり、マイナス金利だからといって、私たちが銀行に金利を払うというものではありません。

 

では、「マイナス金利」はどのような効果があったのでしょうか。マイナス金利により、金融機関は日本銀行にお金を預ければ預けるほど、金利を支払う必要があります。金融機関としてはなるべく金利は支払いたくないものです。そのため日本銀行に預けるお金の量を減らし、その分、経済に回そうとする働きを促すことにより、経済活性化や物価上昇に期待ができるとされていました。

 

日本銀行は、経済の成長のためには毎年2%の物価上昇が必要だとしていました。この物価目標は2013年から掲げているので、10年以上にわたって日銀は物価上昇を推進してきたのです。ここ数年の経済を見てみると、皆さんもご承知の通り物価は上昇を続けています。2%の物価上昇率や賃金の上昇を続けている状況を鑑み、日銀の植田総裁はある種イレギュラーな政策であったマイナス金利政策を終了することにしました。

 

まとめると、マイナス金利解除とは、マイナス0.1%としていた政策金利を0%〜0.1%程度に引き上げることによって、日本銀行が金融機関からの金利の徴収を取りやめることであり、実行に踏み切った背景には日本の安定的な物価の上昇や賃金の上昇が挙げられます。

金利のある世界の「資産形成・投資戦略」とは

「預金金利が0.001%から0.02%に変わったくらいで、何が変わるの?」

 

そう考える人も多いでしょう。確かに金利の上昇額から見ると、さほど大きな変化は見られないかもしれませんが、金利上昇を取り巻く状況を考えると資産形成の重要度は高まっていくでしょう。

 

今回の金利の上昇は、物価上昇・賃金上昇によるマイナス金利解除が大きく寄与しています。つまり、日本銀行は安定して物価が上昇する局面に入ったと判断したという事になります。これからも物の値段が上がり続ける状態のなかで、預金金利が物価上昇に追いつくことははまだ先の話でしょう。

 

物価の上昇に預金金利の伸びが追いついていない状態で、預金で資産準備を行った場合、相対的に資産が目減りする事にもつながります。これまで以上に、将来のための資産運用を積極的に増やしていくことが求められるでしょう。

 

主要な資産形成手段における、一般的な金利上昇による影響は以下のとおりです。

 

株式

・金利上昇局面には、企業業績の向上から株価上昇が期待できる

・金利が上がり過ぎた場合、企業の借入のコストが上がり業績の低迷の一因となる

 

債券

・金利上昇時に売り出された債券は、利率が高い傾向があるため受け取る利子が大きくなる

・金利上昇時には価格が下落していることがある(中途売却には不利)

 

投資信託

・投資信託の内容にも左右されるが、株式型の投資信託であれば上記の株式の動き、債券型であれば上記債券の動きをベースに運用会社が分散投資を行う。それぞれの投資内容を把握することが大切

 

不動産

・ローン支払金利が増える可能性がある一方で、物価上昇により受け取れる賃料増加の可能性もある

 

ここ数年は、インデックス型投資信託などに代表される「市場の成長」を取りにいくという投資スタイルが広く認知されました。確かに市場の成長を見込んだ投資スタイルは、特に長期投資においては有効な手法のひとつです。しかし金利のある時代では、投資利回りが物価上昇率を下回り、結果、資産を目減りさせてしまうリスクもあることを忘れてはなりません。

 

資産の目減りに備えて、多少のリスクを許容することも必要になってくるかもしれません。たとえば、ミドルリスク・ミドルリターンとされる不動産投資にチャレンジする、というのも、ひとつの選択肢に挙げられるでしょう。

 

今後も物価や賃金の上昇は続くと見込まれています。これまでは投資利回りに注目し、それがプラスかマイナスかを考えるだけで、損を免れることはできました。しかし今後は、投資利回りが物価上昇率を上回っているか、資産の目減りは起きていないか、という点にも気を配らないと、資産は築くことができない時代だと意識することが重要です。

執筆者:伊藤 貴徳

CFP®︎ CERTIFIED FINANCIAL PLANNER、

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅地建物取引士、証券外務員1種

業界14年目のファイナンシャルプランナー。証券・不動産・保険業界を経験し、人生の3大資金と呼ばれる「教育・住宅・老後」のお金についての相談を得意とする。これまで2,000世帯以上のご相談を担当し、特にライフプラン作成、資産形成、保険の見直し等に強みを持つ。

この記事を書いたスタッフ

OWNERS.COM編集部