不動産投資
2022.10.25
近年、注目されている不動産小口化商品とは、不動産を小口化して販売する金融商品です。一口100万円ほどで購入でき、不動産運用による収益は投資家に分配されるのが特徴です。不動産特定共同事業法が整備され、投資商品として、より安心して投資ができるようになった不動産小口化商品とはどのようなものか、その仕組みやメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。
この記事の目次
近年、注目されている「不動産小口化商品」とは、「不動産特定共同事業法(不特法)」に基づき運営されている小口化商品のことで、一口数万~1000万円程度に小口化された特定の不動産に投資し、不動産の賃料収入や売却益を投資額に応じて出資者に分配する商品です。投資家にとっては少額から不動産投資が始められるメリットがあり、人気が高まっています。
不動産の小口投資ではREIT(不動産投資信託)や不動産クラウドファンディングなどがありますが、不動産小口化商品は現物不動産の保有者になる商品もあるため、相続対策としても注目されています。
また、不特法に基づき、国土交通大臣もしくは都道府県知事の認可を受けた事業者だけが行うため、投資家にとっては安心感もあります。
不動産小口化商品は、事業主体により「匿名組合型」と「任意組合型」の2種類があります。「匿名組合型」の不動産小口化商品は、投資家と事業者との相互関係を定めた匿名組合契約に基づき、事業者が事業主体となります。投資家は金銭で出資し、事業者は事業によって得た利益を投資家に分配します。投資家と事業者の関係は基本的に金銭のやり取りだけです。
「任意組合型」の不動産小口化商品は、出資した投資家が共同で事業主体となり、事業を行うというものです。共同事業によって得た利益は、出資した投資家に分配されます。また任意組合型は相続対策として活用できるという特徴があります。
一般的な不動産投資では、アパート・マンションの1棟丸ごとや、マンションの1室を購入して賃貸事業を行う現物不動産投資が代表的です。購入した収益不動産からの賃料収入や将来値上がりしたときの売却益を目的としています。自分が所有する不動産ですから、管理方法や売却のタイミングなどは自由に決められます。ただ、マンション1棟などの大型不動産を購入するには多額の資金が必要になります。
入居率の低下や賃料下落による収益の変動、借入金利の上昇によるローン返済負担額の増加などでローン返済が滞ったり、保有不動産の価格低下により売却損が生じるリスクがあります。
また、相続での節税対策として不動産投資を行うケースが多くみられますが、現物不動産は分割しにくいため、遺産分割手続きでトラブルの原因になる可能性があります。
一般的な不動産投資はこれらのリスクマネジメントが必要になるため、投資初心者や少額で投資を始めたい人にとってはハードルが高い不動産投資と言えるでしょう。
REITは投資信託の一種で、不動産投資法人が投資家から集めた資金でオフィスビルや商業施設、マンションなどの不動産を購入し、賃貸収入や売却益を投資家に分配する金融商品です。投資家は現物不動産を購入するのではなく、証券取引所を通して投資信託の証券を売買します。そのため流動性が高く、投資家の好きなタイミングで売買することができます。最低投資金額は数万円~数十万円です。運用はプロが行うため、初心者でも比較的始めやすいメリットがあります。
一方で、REITは不動産市況や金利の影響で、賃料下落による分配金の変動や証券価格の下落のリスクがあります。また、大きなデメリットとして、現物の不動産を自分で選んで投資することができないため、リスクコントロールが難しいことがあげられます。
不動産小口化商品にはさまざまなメリットがあります。1つ目は、プロが選んだ物件に投資ができることです。不動産小口化商品を運用する事業会社は、安定した賃貸収入が見込める物件や、将来的に不動産価値が上がり売却益が期待できる物件を選びます。一般の個人が購入できない規模のオフィスビルや商業ビル、マンションなどです。
2つ目は、相続対策として活用できることです。任意組合型の不動産小口化商品は、相続税の節税メリットがあります。現金や有価証券を相続した場合、その金額が相続税の対象となりますが、同じ金額で購入した不動産を相続した場合は、土地の路線価と、建物の固定資産税評価額をもとに「相続税評価額」を計算するため、相続税を節税することができます。
また、不動産は分割しにくいため相続時にトラブルになりやすいとされていますが、不動産小口化商品を複数所有することにより相続しやすくなるメリットもあります。
3つ目は、管理の手間がかからないこと。一般的な不動産投資(現物不動産投資)では、不動産オーナーは入居者の募集や家賃の入金管理、定期的な清掃など物件の管理・メンテナンスを自分で行わなければなりません。不動産小口化商品は、物件管理は事業者や管理会社が行います。
不動産小口化商品にはメリットとともに、デメリットもあります。1つ目は、元本保証や賃料収入の保証がないことです。不動産小口化商品は、運用益や売却時利益を分配する仕組みのため、空室が増えて賃料収入が減ったり、将来的に不動産価値が下がり、売却したときに元本割れを起こすリスクもあります。
2つ目としては、不動産小口化商品には中途解約ができない商品もあることです。中途解約が可能な場合でも、現物不動産の売却と同様に、買い手を見つける必要があるため、すぐには解約できない可能性があることにも留意しておく必要があります。
不動産小口化商品は、少額投資ではじめられ、商品によっては現物不動産を保有することもできるので相続対策にも役立ちます。しかし、その一方で、賃料収入の保証がない、事業者の倒産などのリスクもあります。リスクを回避するには、事業者や物件を慎重に選ぶことが大切です。
一般的な現物不動産投資に比べてはじめやすく、リスクも比較的低い不動産小口化商品は、不動産投資初心者にもおすすめです。